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【ADCC Asia & Oceania trial】66キロ級優勝、嶋田裕太「パン選手権は実力測定試合」

Yuta Shimada【写真】嶋田にとってノーギでは国内最大のライバルになりつつあるのが、まだ紫帯の佐野かもしれない(C)TAKAO MATSUI

5日、東京都墨田区の墨田区総合体育館で開催されたADCCアジア&オセアニア予選。同大会の66キロ以下級の大本命だった嶋田裕太が、危なげなく優勝を飾った。

そんな嶋田を大会の翌日にインタビュー、激戦を振り返ってもらい来週に控えたパン柔術選手権について話を訊いた。
Text by Takao Matsui


――66キロ以下級の優勝おめでとうございます。

「あ、ありがとうございます」

――眠そうですね。

「すみません、30分前に起きたばかりです(笑)」

――いまは昼の1時ですが、昨日は祝勝会で帰ったのが遅かったのですか。

「それもありますが、疲れました。試合間隔が長かったので、集中力を切らさないようにするのが大変でした」

――確かに長い大会でした。早速、試合を振り返ってもらいたいのですが、初戦はカザフスタンのナリマン・ミンバエフ選手との対戦でした。

「えっと……、はい、思い出しました。自分はシードだったので、彼の1回戦の試合を見ることができました。その時に感じたのは、そこまで強くないという印象でした。相手の選手の方が優勢に戦っていましたが、レスリング的な動きでテイクダウンとスイープでポイントを奪って逆転勝ちしていたんです」

――は6-2でビリー・サム選手を下していましたね。

「実際に彼と対峙してみて、罠を仕掛けてきたのが分かりました。わざと、僕がいいポジションを取れるように誘導してくるんです。露骨に足を横に向けて、パスをさせようとしてきました。おそらく1回戦も、それで勝ったんだと思います。自分が得意なポジションでもあったので、あえて罠にはまってもよかったんですけど、初戦ですしそこで勝負をせずに逆の方向から攻めていきました。そうしたら、スムーズにパスができて勝つことができたんです」

――次の試合は、豪州のロバート・サバルディン選手が相手でした。

「この試合も、最初の試合が見られたのが幸運でした。ロバート選手は中島(康輔)さんと対戦しましたが、引き込みとディープハーフを仕掛けてエレクトリックチェアーでヒザを極めました。中島さんとは、一緒に練習をしたことがあって強い選手なのは知っていました。その中島さんをロバート選手が一本で勝ったので、警戒をしていましたね」

――序盤は牽制し合っている印象でしたが、ダブルレッグに入られても冷静に対処していましたね。

「驚きました。あまり積極的に動いていかなかったので、ダブルレッグに入られて面食らいました。でもうまくギロチンのカウンターを取れたので、スイープとパスでポイントを奪うことができたんです」

――見事な試合でした。準決勝は、またカザフスタンの選手との対戦でしたね。

「手足が長くてリーチがあるので、やりにくいかと思いましたが、逆でしたね。なんでも対応できる印象でしたが、一芸に秀でているようなタイプではありませんでした。特化した技がなかったようで、自分としてはそういうタイプの選手の方が戦いやすいです」

――この試合は、6-0の快勝。決勝は、佐野貴文選手との再戦になりました。

「佐野君とは、RIZINの柔術トーナメントで初めて戦いました。2、3年前に一度だけ、ライトスパーをしたことはあったんですけど、その時から強い印象はありました。だから今回のエントリーリストを見た時に、どこかで対戦することになるなと思っていました」

――RIZINでは佐野選手に判定勝ちでした。

「あの時は引き込んできて、判定をつけるとすれば0-0と差はなかったと思います。自分の方がポジションをとっていたので、JBJJFのルールとして考えると、アドバンテージ差くらいの勝利だったはずです。でも彼は柔術的な動きというよりも、外掛けを仕掛けてきたり、送り襟絞めではなくギロチンを狙ってきます。直接、腕で首を絞めてくるような動きを見せるなど、独特なスタイルと強さがありますね」

――今回の再戦はいかがでしたか。

「決勝戦のみ、最初から引き込むとマイナスポイントがついてしまいます。それは勝敗にかかわることなので慎重になりました。なので、できるだけ引き込まないようにトップを取りたいと思っていました。でも相手が強気で攻めてきたので、いつも通りに戦うよう意識したことがいい方向に出ました。うまくトップを取れて自分のペースで試合を進めることができたんです」

――佐野選手の台頭も著しいですが、嶋田選手の安定した試合運びはその上を行っているように見えました。

「自信を持って仕掛けることができて、バックを取りかけたんですが、ここで悪い癖が出てしまいました。柔術だとバックを取ったら、片足ずつフックしてポイントを奪いに行くんですが、ADCCルールはどんな足の組み方でもポイントになるんです。そのことをバックを取った瞬間に思い出して……。いつも練習でやらない動きをしてしまい、バックを奪い返されてしまったんです」

――会場が一番、盛り上がった瞬間でした。その後の切り返しが見事でしたね。

「焦らずに対応ができたことで、どうにか逃げることができました。その後は、ガードで向かい合って、再び自分がバックに回り込むことができたんです。佐野選手は足が長いのに器用に動かすことができて、変則的な角度から入ってきます。勝つために、バックへ回る込むことを意識していました。それでバックでポイントが入り、相手の片腕を自分の片足でロックして、もう片方の腕を片手で取り、片手でリアネイキドチョークを極めました」

――技の名称は、リアネイキドチョークで良いですか。

「良いと思います。マルセリーニョから教わった時は、アームトラップと言っていましたが、最後の形はRNCです」

――最後は一本勝ちで快勝でしたが、今大会全体を振り返ってみていかがでしたか。

「勝てるだろうという自信を持って臨みましたが、負けられないというプレッシャーも同時にありました。これまでは挑戦する気持ちで試合をすることが多かったので、負けられない戦いのプレッシャーを経験した大会でしたね。あとは黒帯になってからは日本人としか戦ってこなかったので、今回、3人の外国人と対戦できたことは収穫でした。彼らがどのくらいのレベルの帯なのかは分かりませんが、実際に強かったですからね。今後に向けてのいい経験になりました」

――これでADCC世界選手権出場を決めたわけですが、次の試合は3月15日から開催されるIBJJF主催のパン選手権になりますね。

「はい。今月16日に渡米する予定です。パン選手権は、自分の実力を測定する大会になると思っていますので、いい緊張感を持って臨めそうです」

――ライトフェザー級にエントリーされていますが、マイキー・ムスメシ選手など実力者が揃っています。

「楽しみですね。ムンジアルで表彰台に上がることを目標にしていますので、世界ベスト4に入るか入らないかといった際にいる選手が揃っているパン選手権は勝たないといけません。もちろん、それ以外の黒帯の選手にも負けるわけにはいきません」

――自信のほどは?

「挑戦者の気持ちではいますが、やるしかないですね。今回のADCC予選の優勝を弾みにして、いい報告ができるようにがんばってきます!」

■ADCCアジア&オセアニア予選リザルト

【66キロ以下級】
優勝  嶋田裕太(ネクサセンス)
準優勝 佐野貴文(アクシス)
3位  カルダー・アブディカビル(カザフスタントップチーム)

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