【UFN34】UFC出陣、川尻達也(02)「チョー面倒くさい相手」
【写真】対戦相手がハクラン・ディアズと聞き、川尻が真っ先に思い浮かべたのはルイス・ブスカペ戦だったという(C)MMAPLANET
1月4日(土・現地時間)、シンガポールのマリナベイ・サンズで開催されるUFN34「Ellenberger vs Saffiedine」で、ハクラン・ディアズと戦うことが決定した川尻達也インタビュー第2弾。
UFC参戦に踏み切った川尻が希望した相手はカブ・スワンソン。しかし、対戦が決ったのはハクラン・ディアズ。なぜ、スワンソンだったのか、そしてハクラン・ディアズの印象を尋ねた。
<川尻達也インタビュー、Part.01はコチラから>
――一度は日本の格闘技界に骨を埋める覚悟だったのですね。
「はい。でも、日本で続けるとかっていう前に強くなれないんじゃないかって思うようになってしまって。それも、自分が試合で負けて、力が落ちたことを実感して強くなれないのならまだしても、違う理由で弱くなることが許せなかった。これまでは、こんな気持ちになったことはなかったです。2007年も1年間、試合がなかったけど、どこかで周囲の人に期待し、そんな感情になることはなかった。でも、今回はどうしようもない焦燥感に襲われてしまったんです」
――さきほど、サラリと『最後』という言葉を使いましたが、将来と自身の体などを考えると、このタイミングしかないUFC参戦だったのでしょうか。
「今しかない……。まぁピークとしては勝手に37歳ぐらいかと思っていたんですけど、フェザー級に落してから怪我が増えてしまって。1試合、1試合、いつ終わっても仕方ない状態のなかで、後悔をしたくない。だから今しかなかったです」
――そういう状況で、少しでも早くタイトル戦線に絡みたいという気持ちを持っているので、カブ・スワンソンの名前が出したのですか。
「まずシンガポールで戦うということが、前提にありました。どうしても勝ちたいので、なるべく自分が有利な状況を作りたかったんです。ランカーで試合が決っていない選手。骨格、リーチ、スタイルを鑑みて、カブ・スワンソンは身長もリーチも僕と変わりないですし、テイクダウンディフェンスもそこまでは強くない。
右のパンチが凄く強いという部分もひっくるめて、僕には時差がなく、向こうには時差が大きいシンガポール大会だったらいけると思いました。これが米国での試合だったら、カブ・スワンソンの名前は出さなかったかもしれないですね。米国でいきなりカブ・スワンソンと戦うのは厳しいと思うので。
UFCだから、誰とやっても強いので、どうせ戦うならランカーが良いし、勝てば最短でタイトルマッチまで行けるという想いもあり、シンガポールで戦ううえで一番良い相手はカブ・スワンソンだと思ったんです」
――本当に良く考えられた指名だったのですが、ズッファはハクラン・ディアズという決定を下しました。他にチョイスはなかったのですか。
「ハクラン・ディアズ一人でした、伝えられたのは」
――やはり最初の契約で条件の良い人には、あらゆる意味で厳しい相手が用意されてしまうのですね。タイトルラインに並ぶ選手を少しでも多く作りたいUFCにあって、既にタイトルラインにあるカブ・スワンソンというわけにはいかなくて、強さに定評のあるハクラン・ディアズになったのかと。
「チョー面倒くさい相手ですよね(苦笑)」
【写真】ハクラン・ディアズは24戦21勝2敗1分という戦績の持ち主。ただし、Shooto Brazilではイージーオポネントも多く、2敗のうち一人は韓国人のナム・ウィチョル(現RFCライト級王者)で、ドローはパンクラスの伊藤崇文。アジアににはそれほど強くない?(C) MARCELO ALONSO
――ハクラン・ディアズを潰してほしいということも含まれているかもしれないですね。ブラジルや米国ではなく、シンガポールで戦うことを考えると。私は今回の試合の決定で、真っ先にルイス・ブスカペ戦を思い起こしたんです。川尻選手の試合になるなら、ああいう展開になるのではないかと。
「僕も一番にイメージしたのはブスカペ戦だったんですよ。きっとああいう試合になるだろうなって。ここ数年、僕がテイクダウンを仕掛ける方で、ブスカペのようなタイプの選手と戦って来ていないんですよね。だから、ヤベェなって気持ちはあります(苦笑)。ああいうタイプの選手と戦う練習自体、このところしてこなかったので。あんまり、僕からテイクダウンを取ろうという選手はいないじゃないですか」
――ジョシュ・トムソン戦では、テイクダウンを仕掛けてくるという想定はなかったですか。
「トムソン戦はそうですね。ただ、トムソンは打撃もあるし、ハクラン・ディアズのように執拗にテイクダウンしてくるのはブスカペ戦以来かなって」
――そのブスカペが、先日WSOFでジェイコブ・ヴォルクマンに勝っています。UFCをリリースされたとはいえ、ヴォルクマンはオクタゴンで6勝4敗のファイター。ライト級でいえば、6勝2敗。グラインダーだったのでカットされたようなファイターなので、そんな彼にブスカペが勝ったことで、川尻選手のハクラン・ディアズ戦を考えても、ポジティブな材料を与えてもらいました。
「凄い三段論法ですね(笑)。いやぁ、でもハクラン・ディアズは大変な相手ですよ。自分を見ているみたいです。しっかりとテイクダウンして、パスをして。肩固めを狙ったり。下になってもすぐに立ち上がるところとかも」
――久しぶりに川尻選手の実は非常に強いガードワークを見ることになるかもしれないです。
「それも考えています。UFCを選んだ時点で、ずっと上にいられるとは思っていなかったので、下からの対処、ガードからの戦い方も意識して練習しています。とにかく勝たないといけないので全ての状況を想定して、そのなかで自分の武器を使ってどう勝つか、ですね」
――川尻選手は試合を戦う前に不安要素を潰していくタイプなのか、楽観論を増やしていくタイプ、どちらなのでしょうか。
「どっちなんですかね。どっちもだけど、基本はネガティブなんで……。でも、その日の気分によって、行けるって思う日もありますね」
――自信と謙虚さのなかで、揺れる思いをコントロールするわけですね。ところで以前から米国の風土には馴染めないところがありました。
「ありましたね」
――同じ海外でもシンガポールでは、そういうことはないのでしょうか。
「シンガポールは住めるなって思いました。周囲がアジア人だとプレッシャーもないし、逆に試合をするなら日本よりも楽だと思いました」
――シンガポールは東南アジア的ないい加減さはなし、暑い東京のようですよね。
「そんな感じですね。だから、日本で試合をするなら茨城から東京への移動があるのと比較しても、OFCの時なんかもメディカルも計量もホテルで全て済ませるから、凄く楽でした。UFCはマリーナベイ・サンズでやるんですよね。あそこに泊まれるのか、凄いッスね(笑)」
――そのシンガポールは居心地が良いという楽観的な部分を聞きだしたうえで、不安要素を。日本は真冬でも、シンガポールの平均気温は30度以上、ブラジル人には適した気候です。
「あぁ、僕は暑いのは苦手なんですよね。ブラジルは暑いっすよね。でも前に来たときは、それほど気にならなかったですよ。ホテルとかエアコンが効きすぎるのは嫌ですけど。でも、もう海外だからという不安要素はかなり減ったんです。ストライクフォースでギルバート・メレンデス戦を経験して、あれより辛いことはないだろうから……」