【on this day in】12月27日──2013年
【写真】感情的な性格が軋轢を呼んだことも自覚している春日井。この後、VTJフライ級トーナメントで敗れたが、先日のDEEPでインディー統一王者の手塚基伸を破っている (C)MMAPLANET
Hiroshi Kasugai interview
@名古屋市東区、フィットネスクラブS.T.G Higashisakura
「中学生の頃に愛と青春の旅立ちを見に行き、ラストシーンで思わず涙した。そして、一緒に映画を見た女の子から『泣いとん?』と冷ややかな視線を送られて以来、人前で落涙することがなくなった。卒業式も、最後のバスケの試合に負けても、泣くことはなかった。しかし、年を重ねると心のダムはいとも簡単に決壊してしまうようになる。99年にブラジルでアロウド・ビクトリアーノのインタビューを行った際、自らの半生を振り返り、長女が誕生するくだりになると、カベリーニョは嗚咽交じり、顔をグシャグシャにした。と、同席したブラジル人記者のマルセラォンがもらい泣きしている。仕事中なのに──そこまで感情的になれるのかと、本当に驚かされた。それから14年。『格闘技ができなくなるところを志村館長に拾われました』──取材が始まった直後だというのに、春日井健士の瞳は既に潤んでいた。そして取材が続く中で、『館長をUFCに連れていきたい』と口にするや、ついに涙で声にならなくなった。気がつけば、僕はもらい泣きしていた。SNSが行きわたり、異様に高い自己評価と押しつけがましいばかりの『業界のため』っぽい言葉とは裏腹の自分のための行動──が世に氾濫するなかで、春日井が見せた涙は、まさに一服の清涼剤。自分のためだけでなく、人のためにも頑張れる人間、利己的な目的到達のための人間関係でなく、献身的な人付き合いができる人間は、豊穣な人生を送ることができることを再確認させてくれ、心が洗われたような気がした」
on this day in──記者生活20年を終えようという当サイト主管・髙島学がいわゆる、今日、何が起こったのか的に過去を振り返るコラム。自ら足を運んだ取材、アンカーとして執筆したレポートから思い出のワンシーンを抜粋してお届けします。