【WEC36】世界戦、前田の出場以外も必見のラインナップ
5日(水・現地時間)、フロリダ州セミノール・ハードロックカジノで行われる『WEC(ワールド・エクストリーム・ケージファイティング)36』。いよいよ開催が明日に迫ったが、二つの世界戦、そして日本人ファイター=前田吉朗の出場以外にも、躍進WECを象徴する見どころがタップリの大会となっている。
【写真】ロブ・マックローとのストライカー対決に挑むドナルド・セラーニ。そのガードワークから極めは、見事の一言。好対照な打撃系MMAファイター同士の一戦は必見だ (C) MMAPLANET
6月のVERSUS TVでのライブ中継で、予想以上の視聴者数を集めたWEC。今大会は当初開催予定だった9月に倣い、恒例のサンデーナイト・ファイトでなく、水曜夜のイベント開催となる。ただし、水曜の夜はSPIKE TVでTUFシーズン8が放送されており、TUF8スタート前の9月は米国国内の時差を考慮した時間差中継でなく完全ライブ中継の予定だったが、この2ヶ月の延期により、8時開始の時差中継となった。
つまり中継枠は、午後10時にTUFへバトンタッチされる、2時間というコンパクトなもの。ただし、その強力ラインナップに変更はない。
6月1日のユライア・フェイバーへの挑戦で敗れた米国軽量級のパイオニア、ジェンス・パルバーが復帰戦、その相手は日本が誇る殴り屋=高谷裕之をKOで下したレオナルド・ガルシア。
ライト級時代に、ロジャー・フエルタとバチバチの殴り合いで一歩を引かなかったガルシアは、GSPもトレーニングを積むジャクソンズMMAに所属し、寝技でも強さを見せるファイターだ。パルバーにとって、非常に厳しい相手になることは間違いない。若さと勢いはガルシアだが、パルバーが老練さを発揮し得意の左カウンターを当てることができるか。ガルシアのサウスポー対策も、勝敗を分けるカギとなるだろう。
パルバーやガルシアのようにライト級から階級を落としてきたファイターと比較すると、ジョナサン・ブーキンスと対戦するジョセ・アルドは線の細さが目立つファイターだ。しかし、シュアな打撃、流れるような柔術ムーブ+パウンドは、穴のない繊細なニュータイプ・ブラジリアン・ファイターの代表格といえる。
茶帯時代には、4年連続柔術世界大会(ムンヂアル&コパドムンド)黒帯の部で頂点に立っている、フーベン・シャーレス・コブリーニャを下し、国内の頂点に立ったこともあるアルド。先のWECデビュー戦でブラジルの大先輩アレッシャンドリ・ペケーニョをスタンドで完封、寝技でもマウントを奪い、エルボーとパウンドでパーフェクト・ウィンを挙げている。
王国ブラジルの新兵器は、ここで躓くことなく勝利し、ユライアへの挑戦権を手にしたいところだ。
フェザー級の2試合に負けず劣らず、注目されているのが前WEC世界ライト級王者ロブ・マックローと、新鋭ドナルド・セラーニのライト級戦だ。チーム・パニッシュメントの打撃師範代、西海岸最高のムエタイ・ファイターの称号を胸にMMAに進出したマックローに対し、セラーニもK-1ルールやキックの試合で25戦24勝のキャリアを誇る立ち技が強いファイター。
しかし、同じストライカーでもマックローとセラーニの試合スタイルは対照的といえる。タックル狙いを潰し、倒れずに殴って勝つマッカラー。対して、セラーニは組みつかれる前に引き込んで寝技に持ち込むのが信条だ。
キャリア16勝4敗、9つのTKO勝ちというマックローに対し、セラーニは8戦8勝すべての試合で、腕十字か三角絞めで一本勝ちという戦績を残している。長い手足と柔軟な股関節、そして細身ながらすぐれたフィジカルで、壺を得た軟体動物のような寝技を繰り出すセラーンは、新しい打撃系MMAファイターとして、前王者超えを果たし、王者ジェイミー・バーナー戦に名乗りを上げたいところだろう。
今後、ライトヘビー級とミドル級をUFCに移管し、中・軽量級に特化したイベントになることが予想されるWEC。リアリティTVショー、そしてPPV中継も2009年には始めるという噂も聞こえてくる。
来るべきビッグイヤーに備え、充実度が増すばかりのWECは、UFCの影に隠れていることは否めないものの、日本のファンにとって、もっとも身近な存在になる可能性もあるだけに、要チェックが必要だ。