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【UFC ESPN47】北の最新兵器、オクタゴン2戦目へ。デニス・ボルダル「MMAを戦うこと。それが全て」

【写真】 純粋にフライ級に東欧勢が絡んでくることが楽しみ(C)

17日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されるUFC on ESPN47「Vettori vs Cannonier」にデニス・ボンダルが出場し、カーロス・ヘルナンデスと対戦する。

ウクライナ人ファイターのボンダルは、2021年2月にUFCデビューが決まっていたがコロナ、ケガ等で1年間初陣が遅れ、ようやく巡ってきたマルコム・ゴードン戦ではテイクダウンを耐えようとして左手をつき負傷TKO負けに。さらにロシアのウクライナ侵攻で、試合機会を逸するなど苦悩の日々を送ってきた。

もちろんボンダルからすれば、試合がないことなど苦痛でもなんでもない。そして、母国の現状を憂い、母国のために必勝を誓う。そんな彼の背景に目を奪われがちだが、純粋にウクライナ人フライ級ファイターの存在が気になり、インタビューを試みた。

当然のようにロシアのウクライナ侵攻の影響を受けているなかで、北の最新兵器はMMAに懸ける想いを話してくれた。


——インタビューの機会を与えてくれて、ありがとうございます。私のサイトは純粋にMMAを伝えるサイトです。政治にも宗教にも経済にも関わることはないですが、この試合に向けてデニスの日常がどういうモノであるかを教えていただけないでしょうか。

「とにかくウクライナは大変な状況だ。それでも、皆がやれることを必死にやっている。僕はロシアと面したハルキウに住んでいたけど、家族と一緒に国を離れドイツに拠点を置くことにしたんだ。とにかく家族と無事でいることが、最重要だから」

──ハイ。ところで今回がUFCで2試合目となりますが、今はどのような気持ちでしょうか。

「良い感じで来ているよ。ベガスの滞在を楽しんでいるし、オクタゴンで自分の仕事を全うするだけだよ」

──デビュー戦は非常に残念な結果に終わりました。左腕のケガの回復は問題なかったですか。

「今は大丈夫だ。でも、ケガからのリカバリーは簡単ではなかった。実はドイツに移った理由の一つがケガの治療をするためだった。あの試合後、戦争状態にあるウクライナではケガを治して、リハビリをすることもできなかった。ドイツに移ってから手術をし、回復に努めてきた。手術をして、回復してからファイトの準備をするためにドイツに居続けることを決めたんだ」

──なるほど、そこにも戦争は関係していたのですね。それ以前もUFCと契約してから幾度となく試合の機会を失くしていました。

「そうだね。最初はコロナの影響で試合ができず、その次はケガでキャンセルせざるを得なかった。ケガから回復して再起戦は、戦争の影響で試合が流れた。でも、そんなことは戦争中のウクライナの人々のことを想えば苦労でもなんでもない。全てのウクライナ人が家族、友人を失っている。その現状の方がずっと辛い。でも僕は気持ちを強くもって、自分がやれることをやるしかない。それがウクライナの人々のためになる。今、僕はMMAを戦うこと。それが全てだ。とにかく、この試合に勝つ。それから先のことは考えていない」

──ところでデニスはプロでキャリアを積む途中で、GAMMAのアマ世界大会に出て優勝しています。

「GAMMAはプロの経験がある選手の出場を認めてくれた。子供の頃から、世界チャンピオンになることが夢だったから、まずはアマチュアで世界一を目指したんだ。IMMAFはプロで戦ったことがある僕は出場が認められない。だから認めてくれたGAMMAの世界大会で戦うためにシンガポールへ行った」

──すでにファイトマネーを得ているのに、メダルを目指す戦いができたのですね。

「僕はMMAをお金のためにやっているわけじゃない。もちろん、家族を養うためにお金は必要だ。でも若い頃はそんなことを考えずに、好きだからMMAを始めた。そしてアマとはいえ世界一になるチャンスがあった。そこで戦うことは、僕にとってプライスレスだったよ。プロでも世界一になる。その夢は今も変わっていない」

─もともとMMAファイターを目指していて、他の格闘技から転向したわけではない?

「最初はウクライナで行われている──徒手格闘技を始めた。MMAに似ているところもあるけど、武器術も習った。護身術、ストリートファイト、軍隊格闘術の流れを汲んだコンバットスポーツだった。大学に入るまで田舎で育ったから、格闘技を習う機会がなかったから、進学して19歳の時に初めて格闘技の練習を始めたんだ。最初は護身目的で始めたけど、すぐに夢中になった。それからアマチュアMMAを戦うようになったんだ」

──デニスの以前の試合映像をチェックしているとケージでもリングでもなく、空手の舞台のようなところで戦っている試合がありました。

「あれもMMAだよ(笑)。ファイトマネーもなく、戦いたいから試合に出た。コーチも経験のためだと言っていたよ。リングでもケージでもない、MMAの戦い方も変わる。あの頃は、ウクライナのMMAはああいう感じだったけど、とにかく戦う機会があれば戦った。その後はウクライナのMMAは急成長を遂げたんだ。ロシアが攻めてくるまではね……。

でも、そういう大国に攻め来られるという圧力を常に受けてきたから、ウクライナの人間は強い。そうそうPRIDEで戦っていたイゴール・ボフチャンチンは僕の街、そしてウクライナのヒーローだった。今も伝説的な存在で。彼がやっていたような素手で、何のプロテクターもないオールドスクールなMMAも経験しているよ。

ただ……、戦争で多くのMMAジムも破壊された。この侵略戦争が終われば、またウクライナのMMA界を再建しないといけない」

──……。では対戦相手、カーロス・ヘルナンデスの印象を教えてもらっても良いですか。

「UFCファイターなんだから、弱いわけがないよ。いくつか試合を見たけど、コンディションが良くて圧を掛けてくるファイターのように感じた。ただ、僕はあまり対戦相手のことは気にしないようにしているんだ。コーチが研究してくれるから、その指示に従って練習してきた」

──土曜日、どのような試合をしたいと考えていますか。

「とにかく勝つこと。オクタゴンで最高のパフォーマンスを見せたい。それだけしか考えていない」

──最後に日本のファンに一言お願いします。

「僕のもう一つの夢は、日本でいつか戦うこと。日本はMMAの歴史を創ってきた。ウクライナではMMAが何か知られていなかった頃に、日本はこのスポーツを発展させてきたんだ。イゴール・ボフチャンチンが活躍できたのも、PRIDEが日本に存在していたから。僕はいつだって、そんな日本のMMAに感謝している」

■視聴方法(予定)
6月17日(土・日本時間)
午前7時30分~DAZN

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