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【Grachan60】ハシモト・ブランドンと無差別級T決勝、荒東英貴─02─「『負けたらもっと悔やめ』って」

【写真】まずはトーナメント決勝。その後も気になる怪獣キラーだ (C)GRACHAN

26日(日)、大阪府豊中市の176Boxで開催されるGRACHAN60で、ハシモト・ブランドンと無差別級トーナメント決勝を争う荒東‟怪獣キラー“英貴のインタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike

タイから帰国してからはパラエストラ大阪を拠点に、チーム吉鷹やカルペディエム芦屋などでも練習を行っているという荒東。その大きな体に秘められたMMAへの熱い想いと、無差別級トーナメントから将来の目標を語ってくれた。

<荒東‟怪獣キラー“英貴インタビューPart.01はコチラから>


――ヨーキーMMAということは、ONEに出場している藤沢彰博選手とも一緒に練習していたのですか。

「そうです。先日タイに行ったのも、彼の試合を見に行ったんですよ。セコンドにも就かせてもらうことになって。その時にプーケットで練習してきました」

――おぉ、そうだったのですね。タイでMMAを始めて、そのままタイでやっていこうとは思っていなかったのでしょうか。

「当時はタイでやっていきたかったです。実はタイにいる時、フルメタル・ドージョーでウィル・チョープと試合が決まったんですよ」

――えっ、それはMMAですか? ウィル・チョープとは体重差がありすぎでは……。

「大会の新鋭とベテランをぶつけるっていうノリだったと思います。するとニックが『ウィル・チョープに勝ったら次はRIZINに出られるよ』と言い始めて。いま考えると、ニックにそんなツテがあるわけもないのに(笑)。その言葉を信じて、僕はタイで仕事も辞めました。すると試合が発表された直後に、コロナ禍になったんですよね。試合もないし、仕事を辞めたためにビザの関係で一時帰国して。その時、MMAをやるなら日本のほうが環境は良いんじゃないかと思いました」

――そこで清水俊一選手に相談して、パラエストラ大阪で練習し始めたわけですね。

「はい。最初は一時帰国だったので『3週間ぐらいしか日本にいないと思うんですけど……』と言って行き始めたのに、もう2年いますね(笑)。そこから格闘技専業でやらせてもらっています」

――コロナ禍のなかで帰国し、格闘技専業でやっていくことに不安はなかったのですか。

「タイにいて専業でやるよりは――と思いました。もともと現地ではビザの規定がコロコロ変わるし、ビザも無くなったので日本でやっていくほうが良かったです」

――なるほど。もう1点、ヘビー級の体でMMAをやっていくうえで、日本以外は選択肢になかったのでしょうか。日本国内では練習相手を探すのも難しいかと思います。

「その点は、なくはないです。でも結果が出ているから良いかなと思っています。大阪にも強い選手はたくさんいるし、僕が力を使って勝負するタイプではないですからね。僕は自分自身について、体が強いほうではないことが分かっています。だから体や力でぶつからないように戦っていることも、結果につながっているんじゃないですか。それに力の強さでいえば、岩崎さんほど力の強い人はいないですよ」

――カルペディエム芦屋の岩崎正寛代表ですか。

「あの人、バケモンですよ! 僕がヘビー級で戦っていくために、もっと筋力が必要だと言う人もいます。でも僕自身としては、必要なのは岩崎さんのようにフレームや骨格を使う攻撃やと思っています。それは吉鷹先生が教えていただいている、体重移動で打撃の力を生むのも同じですよね。確かにヘビー級やから、ヘビー級の人と練習しないといけないっていう考えも分かります。でも結果が出ているし、『これからも自分が勝つから見といて』っていう気持ちです。アハハハ。

僕が一番気にしているのは、身長差があるために自分のパンチが相手の顔面に届くかで。吉鷹先生は現役の時、身長差のある外国人選手にアッパーを突き上げていましたよね。結局はそういうことで――結局は自分が踏み込むかどうかの話じゃないですか。今のところ困ってはいないし、これからも自分のパンチは当たると思います。

岩崎さんも、そうなんですよね。柔術で海外の強い選手と対戦してきた経験があるから、僕の質問に対してバシッと的確な答えをくれる。僕は今、最高の環境で練習できています」

――同じグラチャンに出ている大宮優選手にインタビューした時、「ライト級では体格が小さいのでフェザー級やバンタム級に転向するつもりはないか」と聞きました。すると「その階級に自分より体格の大きな相手しかいないことが分かっていれば、そのほうがやりやすい」という答えが返ってきました。

「あぁ、その考えはすごく分かります。今回の無差別級トーナメントもそうですけど、自分より背が高い相手がいて、自分より背が低い相手もいたりするほうが困るんですよ(苦笑)。僕はデブのわりには動けるし、バテないほうやと思うので大丈夫です!」

――いわゆる「動けるデブ」というわけですね(笑)。一方、次の試合で対戦するハシモト・ブランドン選手は、身長もリーチもあるヘビー級体型の選手です。

「体格差については、向き合ってみないと分からないところも多いです。でも僕は、ここで足踏みしているわけにはいかないので、持っているものを全部――丁寧に出していきます。丁寧に試合をしながら、行けるところで行きます。いっぱい蹴って、削ったところで相手が組んで来たら潰して、上を取ってから殴ります。それが理想です。ちゃんとMMAをやりますよ。あの……コレは言っていいですかね?」

――はい、もう何でも仰ってください。

「最近、薄い試合をする選手が多くないですか」

――薄い!? どういうことでしょうか。

「僕のプロとしての考え方で、『もっと一つの勝利や一つの敗北に一喜一憂してくれよ』って思います。特に『負けたらもっと悔やめ』って。負けても良い勝負なんて絶対にない。試合に負けてペラペラ言い訳するぐらいやったら、最初から薄い試合するなって思います。

強いか弱いかは結果として、まず試合に対して頑張れよって言いたい。僕はそんな薄い試合はしません。まだそこまで強くないかもしれないけど、ファイターとしての気持ちは誰にも負けていないので。このトーナメントで優勝して、ゆくゆくはONEで試合したいです」

――昨年8月のグラチャン大阪大会で勝利したあと、RIZIN出場をアピールしていましたが、現在の目標はONEなのですか。

「RIZINに出たくない、というわけじゃないんですよ。これは完全に願望ですけど、アジアで日本人の強さを見せたいなと思っています。藤沢の試合で帯同して雰囲気も分かりましたし、何より自分にとって身近なタイやアジアで開催されている大会に出たいです。

やっぱりグラチャンの大阪大会で試合をすると、ずっと応援してくれている人たちが多く見に来てくれるんですよ。その人たちに僕の試合を見せられることが嬉しいです。同じように、ONEタイ大会でバケモノのような選手と戦っている姿を――タイで僕にMMAを始める機会を与えてくれた人たちに見せたいです」

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