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【ONE WS】リッチ・フランクリンが話したこと─02─「尊重する。それがマーシャルアーツの真理」

Rich Franklin【写真】トライアウトに参加した選手の動きを真剣、よそ見をすることは一切なくチェックし続けたフランクリン(C)MMAPLANET

1月16日に行われたONE Warrior Seriesのトライアウトを監修したリッチ・フランクリンのインタビュー後編。

アジアと北米の違い。ONEと北米MMAの違い。フランクリンがONEの副社長として、アジアで目指すモノとは何なのか──を尋ねた。

<リッチ・フランクリン・インタビューPart.01はコチラから>


──ONEウォリアー・シリーズがアジアの底上げになると。

「国際的な試みだからね。これまでもバンコク、マニラでONEが開催されることで現地のMMA、マーシャルアーツの追い風になってきた。過去4、5年のONEの活動によって見いだされた才能は多い。それこそがONEがアジアのマーシャルアーツに役立ってきた表れだと思っている。

もし、僕がずっと北米に残っていたらこんな機会を手にすることはできなかった」

──バーファイト、デンジャラスさが売りになっている一面は拭えなかったMMAにあって、リッチは教育学と修士と学士号を取り、高校の数学教師からこのスポーツで世界チャンピオンとなり、このスポーツのイメージアップをしてくれました。

「ありがとう。そういって貰えると嬉しいよ。あの頃のこのスポーツを代表するアスリートたちのイメージはタトゥー、君の言った通りバーで暴れるような感じだった。そこに僕のようなバックグラウンドを持つ人間が活躍することで、人々のMMAに対する認識を変える手助けができたと思っている。

その点、アジアは別だ。どの国もマーシャルアーツが文化として育っている。空手、テコンドー、散打、シラット、ムエタイ、ラウェイ……今日のトライアウトでもラウェイを戦っている選手がこんなに日本にいるのかと驚かされた。

それぐらいアジアはマーシャルアーツが根付いている。米国とまるで違う状況が、地球の反対側には存在していた。そのなかで、このスポーツをより普及する役割を担うことができて、本当に遣り甲斐を感じているんだ」

──そのようななかで日本のトライアウトの印象は如何でしたか。

「今日は大変だった。これだけ良い選手たちが集まってくれて、合否を決めないといけないというのは。頭を抱えたよ(笑)。良し悪しが明白だったバンコクとマニラとは違ったからね。

一つ、マコト・タカハシ(高橋誠)は18歳になっていなかったら、シンガポールの法律で契約を結ぶことができない。18歳になったら、また日本にやってきて彼と契約できればと思っている。だから、年齢だけが問題だったと日本のクリスチャン・リーには思っていて欲しい。

また東京に戻って来てもっと多くの日本の選手達を見てみたいね。この試みはスタートを切ったばかりだけど、ずっと続けていくつもりだし。

もう、次回はジムではトライアウトができなくて体育館を借りないといけないんじゃないかと恐れているよ(笑)。ひょっとしたらウェブでやるとか、何らかの解決方法を見いださないといけないね」

──アジアでMMAの普及に努めていると、それぞれの国民性、宗教、経済力も違い、またリッチが生まれ育った米国とは明らかに違う文化が存在しているなかで、ギャップに苦しんだりすることはないですか。

「マーシャルアーツが文化の一部だし、この仕事をする限り、その文化の違いが遣り甲斐になっている。日本に初めて来た時、いつだったか……INOKI BOM-BA-YE(2003年12月31日)の前に一度日本に来ているんだけど、朝にジョギングをしていたら銀行のなかで、皆が揃ってストレッチをしていたんだ」

──ラジオ体操ですね(笑)。

「それが、日本の習慣だと知った」

──日本の企業の慣習だったことはあるかもしれないです。工事現場などは、自分の若い頃は絶対的にそうでした。

「あれが業務時間の始まりを告げているって聞かされて、本当に驚いたんだ。職場にいて、皆で健康を考えた運動を一緒にやる。僕らの国じゃありえない。

ライフスタイル──それはカルチャーだよ。そして、朝からストレッチをして血の流れを良くするなんて、絶対的にマーシャルアーツのメンタルじゃないかって」

──う~ん……。

「そういう僕からすれば驚きだったカルチャーが、それぞれの国に存在していて、ONEチャンピオンシップはそれぞれのカルチャーと向き合っている。ただ、選手たちに戦う場所を与えているだけじゃない。

それぞれの国の人々、その文化と向かい合っているんだ。皆を尊重している。それがマーシャルアーツの真理だろう。僕とマーシャルアーツの出会いは沖縄空手なんだ。トラディショナル・マーシャルアーツから規律、尊重、清廉、名誉を学んだ。

これらの経験が人を高めあう。実際にONEで見られたことなんだけど、とある試合の勝者は対戦相手の妹さんの家が1週間前に全焼したこと知り、ファイトマネーの全てを寄付したんだ」

──おお、誰にでもできることではないと思いますが、マーシャルアーツを学ぶことでそのような心が育つのであれば本当に素晴らしいことですね。

「これこそがマーシャルアーツ魂であり、マーシャルアーツから学ぶべきこと。僕らの目指すところなんだ」

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