【Interview】エディ・ブラボー(03)「俺がオールドスクール・ガイ?」
【写真】オーバーフックからフックスイープを指導するエディ。首のコントロールなど、グレコローマン柔術の所以たるテクニックだった(C)MMAPLANET
ツイスターやラバーガードで、グラップリング&柔術界に革命を起こしたエディ・ブラボーのインタビュー最終回。
現代柔術の潮流について、エディの持論を尋ねた。そこにはMMAで有効な技術を追いかける姿勢にブレは一切感じられなかった。
<エディ・ブラボー インタビューPart.01はコチラから>
<エディ・ブラボー インタビューPart.02はコチラから>
――ベリンボロは確かにノーギで使えます。ではMMAではどうでしょうか? グローブとショーツを掴むことができれば、有効かとは思うのですか。
「ノーギ・バージョンのベリンボロだと、ショーツやグローブを掴まなくてもタイミングや、状況によっては使えるだろう。もちろん、そうそう使えるものじゃない。でも、ベリンボロを仕掛けることができる状況はMMAにもある。ノーギで使うようにオープンではなく、かなり限られたケースだけどね。ギがなくても、ベリンボロは有効なんだ。ベリンボロはバックを取る技だ。そういう意味で、ノーギでもベリンボロを指導するのは楽しいよ」
――では、ノーギでの50/50の有効性はどのように考えていますか。ノーギというか、50/50が盛んに見られるIBJJFのトーナメントではヒールフックが反則という点は見逃せないと思います。
「その通りだ。50/50が最も有効なケースは、相手が足関節を使いこなせない場合だ。ただし、足関節のディフェンスに弱点があろうが、今の柔術だとヒールを取られることがないから、あの五分五分のポジションを用いることができるんだ。50/50という名が表すように、あの状態はどっちも同じポジションにいる。なぜ、相手より不利でないとしても、優位でないポジションにずっと拘るのか、俺には理解できない。
それにポジショニングの観念からいえば、どれだけ50/50ガードが上手くても、下手くそな相手にポジションを返される。そういう技だ。まぁ、50/50ガードを失くせとは言えないから、ならヒールフックの使用を認めろとは感じるね。
俺は絶対に50/50を取ろうとは思わない。でも、指導者として今、実際にあるテクニックだから、フォローして教え子に技術を伝える必要性はあるんだ。そうじゃないと、俺の可愛い教え子たちが50/50の餌食になってしまうからな」
――知っていて使わないのと、知らないで使えないでは大きな違いがあります。素晴らしいです。しかし、こうやって今夜、エディと話していると柔術界のレジスタント的だったエディも、オールドスクール・ガイの方に考えが近いんだと分かりました。
「なぜ? なんで、俺がオールドスクール・ガイなんだ」
――今も柔術とMMAの関連性を探求し続け、不安定なポジションを嫌いからじゃないですか。
「オールドスクール・ガイは、ポイントゲームが嫌いなのか?」
――ブラジルで取材中にポイントゲームが嫌いというよりも、極めに行かない、そしてストールが多い柔術、さらにいえばダブルガードや50/50ガードが嫌いだという意見は、1980年代や90年代に活躍していた黒帯柔術家からは、よく耳にしました。
「そうか、俺も嫌いだ。MMAで効果的な動きが好きなんだ。50/50を駆使して、MMAで勝ち続けるファイターが出てきたら、俺は真剣に研究し使えるようになる。でも、そんな試合は見たことはない。きっと、50/50に拘るファイターがいれば、そのファイターはただ傷つくことになるだろう。
俺が技術を学ぶのはMMAの試合からなんだ。そして、何か見つかれば必死で研究する。UFCの試合をチェックしていて、レスリング的な動きに気になるものがあれば、ビデオをレスリングのコーチに送ってチェックしてもらう。もし、俺が指導したテクニックが試合で使われ効果があったなら、教え子のMMAファイターたちにビデオを送って練習させる。たった10秒のビデオだ。チェックさせて、練習させるんだ。見て体を動かす。それを繰り返させる。いつも、そうやってきた」
――エディがつねにMMAと柔術を結び付けているのは分かりました。ただし、生徒さんの多くはMMAでなく、ノーギ柔術に興味があるのではないですか。
「その通りだ。教え子の多くが、MMAで戦いたいとは思っていない。それでも一番大切なことは、MMAで有効なテクニックを俺の全ての教え子に伝えることだ。ただし、俺はグラップリングだって好きだし、教え子にはグラップリングのトーナメントで勝って欲しい。だから、スポーツ柔術スタイルに必要なテクニックも指導している。それでも、多くはMMAがベースになっている。全てじゃない。全てとは俺も決して言わない」
――ホイラーと戦う時は、メタモリス柔術ルールで勝つことだけを考えますか。それともMMAで有効な技で勝とうと思っていますか。
「俺の柔術は、既にMMAで有効だと証明されている。俺達のラバーガードはMMAのためにある。ラバーガードを取った人間を殴ることはできない。俺がグラップリングでラバーガードを使いゲームをしたとしても、そのラバーガードはMMAでは顔面や頭部を殴られないテクニックだ。何も違う点はない。グラップリングで戦うからといって、セットアップから極めまで一切、アレンジすることはない」
――押忍、さすがエディ・ブラボーです。
「ハハハハ、だろう?」
――今日はありがとうございました。
「こちらこそ」