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【Special】キックボクシング・ルネッサンス Glory&K-1総括対談(04)

kickboxing Renaissance

5月26日(土・現地時間)にスェーデンでGlory Sports International主催「Glory World Series 2012」が開かれ、翌27日(日・同)にはスペインでK-1 Global Holdings による「K-1 RISING 2012」が行われた。

キック再興への2日間、対談第4回は日本勢の戦いを振り返ります。

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中村 リスティやンギンビは、スタイル的なところで目を引いたと思います。

高島 3Rにあれだけ跳んで、動けるのも強みですね。

中村 そうですね、あれだけこかされていると、普通なら息も上がると思うんですけど。グローエンハートも含め、黒人系のファイターはそういう部分で強いですね。

高島 日本で行われていたMAXでは、余り黒人系のファイターは見られなかったので、余計に新鮮に感じます。

中村 3人とも1回戦を勝ち残っていますからね。

高島 3分×3Rでは特に強さを発揮しそうです。

中村 数字で表れる部分ではないのですが、頑丈で回復も早そうに見えました。ボディもなかなか効かないですし、インターバル中に相当回復しているようでした。

高島 ではGlory、K-1MAXに3名出場した日本人選手ですが、勝ち残ったのは城戸康裕選手だけでした。

中村 佐藤嘉洋選手とベキリの試合は、1度目の対戦と似ていました。ただ、前は日本だったのでスプリットで勝てて、今回は欧州での試合なので向こうについたような……。ベキリと佐藤選手は噛み合ってしまうんですね。

ここ最近の良い時の佐藤選手はよくジャブが出ていて、そこから試合を組み立てることができていたのですが、それが出なかった。ベキリの踏み込みが速いこと、距離の取り方が上手いというのもありますね。1Rに明確にポイントを取られたので、流暢な試合ができなかったです。

2Rからはヒザで削っていくしかなかった。色々な要因はあるでしょうが、1Rの最後にロープに詰められて攻撃を受けた印象でベキリにポイントが入ったことで、2Rからは確実に取らないといけない試合となり、3Rは取ったけど、2Rが微妙なラウンドで判定負けに。奇しくも本人が試合前に『海外で戦う限り、明確な差をつけないと勝ちはない』と言っていたのに、明確な差をつけることができない試合でした。

高島 ヒザでいくようになると、重心が上がるようになる。特にパンチをスウェイでよけて、ヒザを出す場合はそのパンチが届くと、ダメージはなくても、後にバランスが崩れて印象が悪くなるケースがままあります。押されたようなパンチでも。

Sato vs Beqiri【写真】佐藤嘉洋×シェムシ・ベキリに1‐2でリベンジを許した。昨年1月に日本で戦った試合と反対の結果となった (C) BUS UTERWIJK

中村 掴みがなくて、テンカオだとパンチと距離が似てくるので、パンチのカウンターに気をつけないといけないというのはありますよね。これも見方ですけど、ヨーロッパで欧州の選手と戦うと、ヒザをもらいながらパンチを返したという風に解釈されても仕方がないですしね。

パンチに対して、ヒザを合わせているというよりも、ヒザをもらいながらパンチを返しているという風に観客が判断し歓声が起こると、ジャッジも影響を受けてしまいます。

高島 3分×3Rを戦ううえで長距離走なのか、短距離走なのか、どちらにいけば本来の戦い方ができるのか、決めかねているのかと。その一方で、取っているラウンドが短距離走の時。K-1MAX以降のジャッジが、前に出てパンチを当てて数で評価し、ジワジワと効かせる攻撃を評価しなくなったという見方も成り立つかと思います。

中村 でも、キャリアをみると、もう3Rの方が多いんですよね。2005年からMAXに出ているので。だから、相手の前進を止められるかどうかだと思うんです。

相手に合わせてアグレッシブに打ち合う、『やってやる』という部分がある選手ですし。佐藤選手が勝つ場合は、ヒザで相手を止めることができる――正面衝突したときに、テンカオを当てて前に出る。負ける時は、そこで相手が前に出て来る。サワーやクラウスのようなトップ選手は、テンカオを受けても、返してきます。

そこをどう乗り越えていくかが、佐藤選手のテーマだったんだと思います。今回のベキリにしても、2R途中まで頑張って、1Rのポイントが効きました。試合内容はどちらが勝ってもおかしくない内容だったのですが……。

高島 手数と勢いの差ということになってしまいますね。

中村 アウェイで勝つ難しさが、改めて浮き彫りになりました。でも、トーナメント戦ということを考えると、ここで勝つと負けるとでは本当に違う。悔いが残るというか、悔しい、痛い敗北です。

高島 K-1MAXの方は城戸が勝ち残り、名城裕司が敗れました。城戸選手もあのバックブローが決まっていないと、敗色濃厚だったことは否めません。

中村 城戸選手の最近の試合、その傾向通りのファイトでした。ほとんどサウスポーの構えの方が多いですし、両手を前に出して、相手に触って近づけさせない。そうやって距離をとって、入ってくるところに合わせる。お客さんからブーイングされていたようにコンタクトが少ない試合です。

それでも飛び道具と思われるスピニングバックフィストで、3試合連続KO勝ちしています。

高島 It’s Showtimeには合わないですね(笑)。

中村 ハイ(笑)。あの戦い方は、一発狙いと思われがちですが、3試合連続でバックフィストで勝っているので、アレが城戸選手のスタイル。勝ちパターンを確立したんじゃないでしょうか。結果を出すのが、格闘技なので。

高島 そこがK-1MAXベスト8になった時に通じるのかという部分ですね。

中村 ここ3戦は日本人が二人、中国人が一人ですから、欧州勢とやって前に出て来る相手に、間合いを取ることが出来るのか。キシェンコのようがガンガンくる相手に、アレができるのか。勝ち上がりを考えると、どのような顔合わせになるのか。

城戸選手自身は、無駄を省いて勝つためのスタイルとして今の戦い方を続け、そのスタイルで世界で勝てるか試したいと言っていたので、どれだけ通用するか、次が試金石となります。

名城選手は相手のリース・マカリスターが、完全にムエタイ系の選手かと思っていたら、意外にK-1ルールに対応できたので驚きました。サウスポーとオーソで、リーチ差もあったのでミドルと右ストレートをもらうというやり難さがありました。最初にパンチをもらって、クリンチをしたり、慌ててしまったのかなぁって。

高島 確かに名城選手は、ドタバタしてしまって修正ができなかったように見えました。

中村 そこが海外での試合、そして国際戦という部分で経験を積む必要があることが如実に表れたのではないでしょうか。面食らって、修正する時間が必要だったにも関わらず、初めて経験することだらけで、あっという間に9分が終わった。実力を出すことが出来なかった試合でした。

高島 バックステージが実際にどうだったか、運営サイドは相当にドタバタだったようで。選手サイドにどれだけ影響があったかは分からないですが、いずれにせよ日本で戦うのと、スペインで戦うのは色々と違いがあったでしょうね。

この項続く



5月27日の激戦も――、過去のGLORY WORLD SERIESアーカイブ映像はコチラ

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