【UFC198】NHB時代を知る古豪ヴィトー、脅威の対応能力もジャカレ相手には……
【写真】盤石のトップゲームは現代MMAでも鉄板の強さを誇るジャカレ (C)MMAPLANET
アンデウソン・シウバの欠場という残念なニュースが世界を駆け巡ったUFC198「Werdum vs Miocic」。今週末14日(土・現地時間)、ブラジル・パラナ州クリチバのアレナ・デ・バイシャーダで開催される同大会は、それでもメインのUFC世界ヘビー級選手権試合=ファブリシオ・ヴェウドゥム×スタイプ・ミオシッチを始め、豪華なカードで構成されている。
えてして米国以外のUFCではその地域色が強いカードが揃うが、そこはバーリトゥードの母国――ブラジルは底上げ感がなく、同時にブラジル×ブラジルのトップファイター対決が組まれているあたりは王国たる所以。ジャカレ・ソウザ×ヴィトー・ベウフォート、ミドル級の2位と3位と対戦こそ、ブラジルならではといえるカードだ。
UFC人気がブラジルで爆発&定着する前から、国内での知名度は抜群だったヴィトー。今大会に出場するブラジリアン・ファイターのなかで唯一SEG時代、ノールール時代のUFCを戦っているレジェンドだ。無差別級時代を知り、アンチドーピング時代の今も戦う、本当に息の長いファイターのヴィトーは、ただ戦い続けているだけでなく、3位というランクが示すようにトップ戦線にあることは脅威といえる。
もちろん20歳という年齢、キャリア2戦目からオクタゴンで戦っていることもあるが、時代の変化=技術の変遷に対応する能力はずば抜けたモノがある。もともと、一時期はカーウソンの養子のような立場となり、グレイシー姓を名乗ったこともあるように柔術ペース。それでいてMMAがスタイル×スタイルの戦いの頃から、いち早くボクシングをしっかりと身に着けたことが、その後スポーツ化を進んだスタイルの変遷にも遅れを取らなかった最大の要因といえるだろう。
2009年のUFC復帰以来、10試合の戦績は7勝3敗。敗れた相手はアンデウソン・シウバ、ジョン・ジョーンズ、クリス・ワイドマン、つまり世界王者のみ。その試合も選手権試合に限られている。テストステロン治療問題など、グレーな部分がなかったとはいえないキャリアだが、この数字は驚くべきモノといえる。
とはいっても、アンチドーピング時代のUFCでヴィトーが最後の世界挑戦権を手にできるかどうか――今回の試合はまさに正念場だ。なんせ、対戦相手のジャカレ・ソウザはヴィトーとは比較にならない競技柔術で結果を残し、その強さがMMAで活かされている。紫帯から黒帯まで、全て階級別と無差別級で世界一となり、ノーギでもアブダビを制している。元は柔道ベース、トップからパスして極めるというMMAに対応しやすい柔術の担い手という部分もあるが、やはりジャカレのトップゲームは圧巻だ。特別ではない、基本に忠実な動きで精度がずば抜けているから、誰が相手でも通じる。
立たせてバックという流れのMMAにあって、ジャカレは動かせてパス、ニーインベリーからマウント、そしてバックマウントという盤石の流れを持つ。そこに至るまでの展開、打撃でも長足の進歩を見せたことが、ジャカレのグラウンドの強さをさらに強固なモノとした。立ち技でも戦える、だから力まない。そんなジャカレにとって、鬼門はテイクダウンが強いストライカー・レスラー。そう薬物使用が明るみとなったヨエル・ロメロに敗れた前回の試合などが、ジャカレにとって最もタフな展開だった。
ただし、そんな試合ですらパンチを被弾しパウンドでTKO負け寸前まで追い込まれながら、ジャカレはガードワークを駆使して生き残り、2Rと3Rはテイクバックからのテイクダウン、さらにトランジッションで流れを引き寄せ、スプリット判定まで持ち込んでいる。
ヴィトーにはロメロのようなテイクダウン能力はなく、また天才故の厳しい局面での心の折れ具合も目立つ。同時に勢いに乗れば一気に試合を決めるのがヴィトーのスタイル。初回、ファーストコンタクトで自分の戦いに引き入れることができるのはどちらか。一発でヴィトー、ジェネラスシップから削って一本のジャカレ。適応能力抜群のヴィトーといえでも、引き出し&武器が多いのはズバリ、ジャカレだ。
■UFC198 対戦カード
<UFC世界ヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者] ファブリシオ・ヴェウドゥム(ブラジル)
[挑戦者] スタイプ・ミオシッチ(米国/2位)
<ミドル級/5分3R>
ジャカレ・ソウザ(ブラジル/2位)
ヴィトー・ベウフォート(ブラジル/3位)
<140ポンド契約/5分3R>
クリス・サイボーグ(ブラジル)
レスリー・スミス(米国)
<ライトヘビー級/5分3R>
マウリシオ・”ショーグン”・フア(ブラジル/8位)
コーリー・アンダーソン(米国/12位)
<ウェルター級/5分3R>
デミアン・マイア(ブラジル/6位)
マット・ブラウン(米国/8位)
<ウェルター級/5分3R>
ヴァルリー・アウベス(ブラジル)
ブライアン・バルベレナ(米国)
<ミドル級/5分3R>
ネイト・マーコート(米国)
チアゴ・マヘタ・サントス(ブラジル)
<バンタム級/5分3R>
ジョン・リネケル(ブラジル)
ロブ・フォント(米国)
<ライトヘビー級/5分3R>
アントニオ・ホジェリオ・ノゲイラ(ブラジル/10位)
ヤンシー・メデイロス(米国)
<ウェルター級/5分3R>
セルジオ・モラエス(ブラジル)
ルアン・シャゲス(ブラジル)
<フェザー級/5分3R>
ヘナト・モイカノ・カルネイロ(ブラジル)
ズベア・トホゴフ(ロシア))