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【The Shooto Okinawa10】牧ケ谷篤と対戦、初勝利まで7年=畠山隆称「M-1の3回戦から話すのは……」

【写真】平良が身近にいる。その影響という部分でも、興味深い畠山の無敗記録だ (C)GIGIO

14日(日)、沖縄市上地のミュージックタウン音市場で開催されるTHE SHOOTO OKINAWA 10で、畠山隆称が牧ケ谷篤と対戦する。
Text by Takumi Nakamura

プロ戦績は7戦5勝2分と無敗、修斗世界ストロー級ランキングでも6位に入っている畠山。松根良太に師事し、修斗沖縄大会を中心にキャリアを積むストロー級の注目の新鋭だが、中学時代は1度も勝てなかった柔道部員で、アマチュア時代も4年近く勝てなかったという。格闘エリートではなくても勝ち続ける――そんな畠山のキャリアとは?


――畠山選手は専門メディア初インタビューということで格闘技を始めたきっかけから聞かせてもらえますか。

「格闘技を始めたのは高校1年生の時ですね。高校にやりたい部活動がなくて、兄ちゃんが先にジム(旧Theパラエストラ沖縄)に入っていたんですよ。帰宅部で何もしないよりはましかなと思って、自分も入会しました」

――小・中では何部に所属していたのですか。

「小学校の時は何も運動はやっていなくて、なんならちょっと太っていました(笑)。中学では柔道部に入っていたんですけど、それも中学にやりたい部活動がなくて、兄ちゃんがやっているから自分もやってみたという動機で。実際に柔道はむちゃくちゃ弱くて3年間やっていて1勝もできなかったんですよね(笑)」

――練習には真面目に取り組んでいたのですか。

「まともに練習していないような部活で、そりゃ試合で勝てないよなという練習の強度でした。顧問の先生が来ない日もあるから、7~8割は楽しく練習して、たまに真面目に練習するみたいな。0勝の僕が主将やっているような柔道部…と言えば分かってもらえると思います(笑)」

――格闘技そのものは好きだったのですか。

「母さんと兄ちゃんがめっちゃ格闘技ファンで、いつも大晦日はテレビで格闘技を見ていたんですよ。でも僕は紅白が見たかったら、家族はみんな格闘技、僕は別の部屋で紅白、みたいな大晦日を過ごしていました」

――ここまで話を聞いていると、まったく格闘技の要素がないのですが(笑)、そんな畠山少年はなぜ格闘技にのめりこんだのですか。

「一度ジムで見学したときにみんな楽しそうにやっていたし、松根良太さんの指導に惹かれて、自分もこの人に教わってみたいと思ったんですよね。それでお試しでやってみたら、それが楽しくて今も続いている感じです。あとは今まで自分の意志で何か物事を真剣にやったり、努力したりすることがなかったので、初めて自分でやってみようと思ったのが格闘技だったのかもしれないです」

――アマチュア時代はどのように格闘技を向き合っていたのでしょうか。

「それが柔道部と同じで、ジムに入ってからずっとアマチュアの試合で勝てなくて、大学に進学してからも試合には出ていたのですが、負け続けたんです。ただ柔道部時代と違ったのは『1回も勝てないままやめるのは嫌だ』と思ったこと。とりあえず1回勝つまでやろうと思って試合に出続けたんです。そしたら大学2年生の時に初めて勝つことができました」

――中学の柔道部から数えると6年~7年掛って、初勝利を掴んだわけですね。

「はい。そしたら今度は勝った時の喜びや賞賛が忘れられなくて、また次も勝ちたいと思って継続して試合に出るようになりました」

――1勝するまでやめないというのは、周りの誰かに伝えていたのですか。

「いや、誰にも言ってないです。自分の中で決めていたことでした。ただ松根さんからは『いつか1勝できるよ』と言われたことがあって、それを信じて続けていた部分もありますね」

――プロを意識するようになったのはいつからですか。

「最初の目標が『1勝するまで辞めない』で、次の目標が『プロになるまで辞めない』だったんです。僕、2019年に全日本(アマチュア修斗選手権)で優勝してプロ昇格したんですけど、その前の年の全日本はKO負けしてるんですよ。その時に将来居酒屋で飲んでいて『俺もあと一歩でプロだったんだよ』って周りにこぼしている姿を想像したら、それがすごく悔しいなと思って。逆に『俺、元プロなんだよ』って言ったらかっこいいじゃないですか(笑)。それがプロを目標にした理由ですね」

――それもまた面白い目標設定の仕方ですね(笑)。2020年にプロデビューしてからは5勝2分と無敗の快進撃を続けていますが、何が変わったのですか。

「気持ちやメンタルの変化ですね。昔はとにかくネガティブだったんですけど、今は試合への気持ちの持って行き方が変わりました。そのきっかけが『マーフィ100の成功法則』という本で。(アマ修の)全日本に出るときに移動中の飛行機が暇だから『何かいい本ない?』って母さんに聞いたら『これがいいらしいよ』と薦められたんです。それで実際に読んでみたら、すごくいいことがたくさん書いてあって、それから試合前に好きな言葉やメッセージを読むようになりました。それで試合に向けた気持ちの作り方が変わって、勝てるようになった気がします」

――過去の試合映像を見ると打撃・組み技どちらも思い切りの良さが目立ちますが、そこは自分でも意識しているのですか。

「もともとは熱くなりがちな性格なんですけど、セコンドの指示通りに戦ったら、絶対に負けないって自信と信頼があるんですよ。だから思い切りいくときもセコンドの指示で思い切りいくみたいな。そういうイメージですね」

――無敗というプロキャリアをどう感じていますか。

「信じられないですね。僕はスモールステップで来て、プロになったら辞めようと思っていたのが、またこれも居酒屋の妄想なんですけど(笑)、『プロにはなれたけど世界ランキングには入れなかった』はカッコ悪いから、次は『プロで世界ランキングに入っていたんだよ』になるまで頑張ろうと思ったんです。それで今世界ランキングの6位に入っているので、次は『世界ランキング3位になった』がかっこいいなと思うので、そこを目指しています」

――では対戦相手の牧ケ谷選手の印象は?

「ベテランで僕の倍以上試合をしていて引き出しを持っている。直近の試合では足関節で勝っていて手強い相手だと思います。そこを警戒しつつ、相手にいいところを出させない試合をしたいので、それを遂行する力を持てるように練習のやり方や対人練習を進めています。それが完成しつつあって、最後の仕上げの段階に入っているので、それを試合で見せたいですね」

――畠山選手は沖縄のジムに所属して、沖縄を中心にキャリアを詰んでいますが、そのことはどのように感じていますか。

「地元開催は応援してくれる人も多いし、大会があることで選手層も厚くなってきて、合同練習をすることもあるので練習環境も恵まれていますね」

――練習・試合ともに上京しなくても十分にできる。それは本当に大きいですよね。また身近にUFCで活躍する平良達郎選手がいることも大きいのではないですか。

「大きいですね。達郎と練習するために色んな選手が沖縄まで出稽古に来てくれますし、達郎は海外で培ったテクニックも惜しみなく教えてくれるので、本当に大きな存在です。これだけ強い人と普段から練習していたら『試合じゃ負けないよ』と思えるし、メンタル的にいい影響もあると思います」

――また畠山選手にとって松根さんの存在とは?

「松根さんの技術はものすごいですし、作戦の軸を考えてくれて、僕が考えてきたものにアドバイスを入れてくれたり、穴埋め・後押ししてくれるし、こういうのもあるよと言ってくれるので、より作戦が分厚くなります。あとは練習以外で一緒にご飯を食べたり、飲んだりしてもすごく楽しいんですよ。実は僕も松根さんもお笑いがめちゃくちゃ好きで、例えばM-1は3回戦や準々決勝くらいからチェックするんです。そういう話が出来るのは松根さんくらいしかないし…僕は松根さんが大好きです(笑)」

――修斗沖縄大会では畠山選手の一発ギャグが名物となっていますが、あれも苦ではないですか。

「全く苦じゃないですし、なんなら楽しいですね。あんなにお客さんがいる前でマイクを持てるなんて、普通にしていたらないじゃないですか。だからもしマイクを渡してもらえるなら『ぜひお願いします!』って感じです(笑)」

――ちなみに畠山さんが好きなお笑い芸人は誰ですか。

「天竺鼠の川原さんですね。川原さんはセンス系のボケなので、刺さる人には刺さる感じではあるのですが、それがかっこいいんですよね。あとは個展をやったり、洋服も作ったり、そういう活動をしているところも好きです」

――また普段の畠山選手は学童支援員として働いているのですよね。

「放課後に子供たちに勉強を教えたり、親御さんが迎えに来たら、今日はこうでしたと報告する、みたいな仕事です」

――学生時代から子供と触れ合うのが好きだったのですか。

「いえ、むしろ大学時代は子供が大嫌いでした(笑)。でもたまたま友達が学童のバイトを探していて『やってみない?』と勧誘されたんです。子供は嫌いだったけど、子供が嫌いなまま大人になったらやばいなと思って、子供嫌いを直そうと思ってバイトをやってみたら、すごくしっくりきましたね」

――格闘技もそうですが、周りの縁で今までやってみなかったことに飛び込んで成功する。それが畠山選手のライフスタイルのようですね。

「ホントにそうかもしれないですね。試合も一発芸も自分を表現するのが楽しいですし、練習もネタも追い込みに入っているので楽しみにしていてください!」

■視聴方法(予定)
4月14日(日)
午後2時25分~ Twit Casting LIVE

■ THE SHOOTO OKINAWA10対戦カード

<ストロー級/5分3R>
当真佳直(日本)
根井博登(日本)

<フェザー級/5分3R>
内藤太尊(日本)
宇藤彰貴(日本)

<ストロー級/5分2R>
畠山隆称(日本)
牧ケ谷篤(日本)

<ウェルター級/5分2R>
西條英成(日本)
アイエティ・ケビン(日本)

<フェザー級/5分3R>
南風原吉良斗(日本)
メイヘム和成(日本)

<ストロー級/5分2R>
木村旬志(日本)
大城匡史(日本)

<ストロー級/5分2R>
ふじい☆ペリー(日本)
知名昴海(日本)

<ストロー級/5分2R>
大田ノヒロ(日本)
高橋佑太(日本)

<2024年度新人王Tフライ級準決勝/5分2R>
松本ごだい(日本)
小生隆弘(日本)

<修斗トライアウトマッチ バンタム級/3分2R>
山本敦章(日本)
武田昴大(日本)

<修斗トライアウトマッチ フェザー級/3分2R>
藤崎陽平(日本)
神田篤社(日本)

<アマチュア修斗 女子スーパーアトム級/3分2R>
高田双葉(日本)
徳本望愛(日本)

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