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【Special】J-MMA2023─2024、新井丈「負けも含めて……絶対にまた強くなれるから」「必ず戻ってくる」

【写真】さらに強い意思を持って、新井丈は戻ってくる(C)TAKUMI NAKAMURA

2023年が終わり、新たな1年が始まるなかMMAPLANETでは2023年に気になった選手をピックアップ──過ぎ去った1年を振り返り、始まったばかりの1年について話してもらった。
Text by Takumi Nakamura

J-MMA2023-2024、第十四弾は修斗で史上初のストロー級&フライ級の二階級同時制覇を成し遂げるも、大晦日RIZINでKO負けを喫した――新井丈に話を訊いた。

8連勝中で迎えた2023年も連勝記録は続き、7月にストロー級王座をKO防衛、9月にフライ級王座をKO勝利で獲得。新井は常に激闘を連発し、修斗のみならずJ-MMAの年間MVP候補と言ってもいい活躍を見せていた。しかし大晦日RIZINではヒロヤにまさかのKO負けを喫し、約4年ぶりの黒星で年を越す形となった。まだ敗戦の傷も言えないなか、新井がインタビューに応じてくれた。

■2023年新井丈戦績

3月19日 Shooto2023#02
○3-0 関口祐冬(日本)

7月23日 Shooto2023#05
○1R4分41秒 by KO 安芸柊斗(日本)

11月19日 Shooto2023#07
○3R2分55秒 by KO 山内渉(日本)

12月31日 RIZIN.45
●2R2分53秒 by TKO ヒロヤ(日本)


――大晦日の試合が終わってからはどのように過ごしていたのですか。(※取材は10日に行われた)

「もちろん練習も運動もせず、人とも会ってないですね。人と会うとどうしてもごめんねって気持ちになっちゃうし、場の空気も悪くなっちゃうんで(苦笑)。立ち直りたい気持ちもあるんですけど、少なからず気持ちが落ちているところもあるから、相手に気を遣わせるんだったら、一人で考える時間を過ごそうと思っています」

――ヒロヤ戦は約3年半ぶりの敗戦で、しかも11連勝中が途切れる敗戦でした。前回の敗戦とは意味合いが違ってくると思います。

「意味が違いますね。連敗中は積んでいるものがなかったから、負けるべくして負けていたし、負けが増えたところで失うものがなかったから、自分が恥ずかしくなるだけでした。でも今は勝ってきた分、修斗のファンも背負っていたし、応援してくれる人も増えているから、自分が負けたことで落ち込ませてしまう人が多いという状況ですよね」

――衝撃的なKO負けでしたが、試合映像は後からチェックすることはできましたか。

(C)RIZIN FF

「ちゃんと見ています。

まずKOされたシーンは完全に記憶が飛んでいたので、どうやって自分がKOされたのかを把握したかったんです。そうはいっても悔しさがよみがえるから、すぐに映像を見ることはできなかったです。気持ちがちょっとずつ回復してきたタイミングで何回か見ました」

――11月の修斗でのタイトル戦から短期間での大晦日RIZIN出場となりました。結果論で語るのはナンセンスだと思いますが、試合をしなかった方がよかったのではないかという声も出ています。その上で大晦日に試合をしたことはどのような経験になりましたか。

「今までにないキャパと注目度だったので、それは自分の経験値になりましたよ。だからそこは絶対にプラスになったと思います。あとは負けも含めて………絶対にまた強くなれるから。こんなに悔しい気持ちは久々で、自分自身にも周りにもこんな悔しい気持ちはさせちゃいけないと強く思ったんで、もう負けたくないですね。一戦一戦自分のすべてをかけて戦わなきゃいけないと思いました」

――自分の負けで落ち込んでくれる人間がこんなにいたのかと驚いた部分もありますか。

「そうですね。自分のことのように悔しがってくれている人がいて、そこまで自分の試合に感情移入してくれてたんだなって。だからそれを知ったことはより辛かったんですけど、言い方を変えれば、そのくらい人の心を動かせられる・影響を与えられる選手になったんだなとは思いますね」

――では大晦日をのぞいて2023年は新井選手にとって、2023年とはどのような1年でしたか。

「大晦日をのぞけば100点です。自分が持っている以上の力を発揮できたし、より多くの人を巻き込むことが出来た1年だったと思います」

――年の始めにそのような1年になることはイメージしていましたか。

「いざ現実と照らし合わせたら、ここまでになるとは思っていなかったけど、もっと輝いている自分を想像して生きているんで、なるべくしてなっているなって気持ちはあります」

――修斗ではストロー級王座を防衛して、フライ級にもチャレンジして史上初の2階級同時王者となりました。ある意味、ストロー級ではやりきった部分もあると思います。これから階級はどこで戦っていこうと思っているのですか。

(C)SATOSHI NARITA

「基本的にはフライ級でいいのかなと思っています。

それこそストロー級でたくさんの人の心を動かすカードやモチベーションになる試合があるならいいんですけど、正直今はそれが見当たらない。だったら僕は挑戦していく姿を見せていきたいし、だからフライ級でやることになると思います」

――新井選手が試合を受けるうえで、どれだけ人に響くか。チャレンジできるかが基準になっているのですか。

「そこが大事ですね。『そりゃ新井丈が勝つだろ?』という試合はやりたくないし、勝った時にどれだけの人が沸くかを考えて試合を受けています。特にこれからはコンスタントに試合をするというよりも、一試合一試合どれだけ意味がある試合なのか、注目してもらえる試合なのか。そこを考えてやっていきたいですね」

――どの選手にも2024年の抱負や目標を聞いているのですが、今はまだ次の試合のことは考えられないですか。

「まず大晦日に勝ったとしても半年は休むつもりだったんですよ。それこそフライ級でやることになったら、そのための身体作りも必要だし、自分のウィークポイントでもある組み技も強化しないといけない。そこは時間がかかると思っていたので。そこは負けても変わらず、です。なんならKO負けしているので、しっかり時間をかけてダメージを抜いて、体作りから始めたいです」

――フライ級仕様に仕上げるには時間がかかる、と。

「いずれフライ級でやるだろうなと思っていたから、この2~3年は常に増量とバルクアップを念頭に置いて過ごしてきたんですけど、どうしても試合数が多いと通常体重が変わらないんですよね。身体作りには時間がかかるし、コンスタントに試合をやりながらでは難しいということを身をもって分かっているので、今は試合間隔を空けて、身体を作る時間にあてたいですね」

――また一から作り直すという感覚ですか。

「一からではないですね。自分は器用じゃないから、このスタイルを突き詰めるしかないと思っているし、時間がある分、変えなきゃいけないところや伸ばさなきゃいけないところを考えてから動き出したいです。そこはジムでも話し合いつつですが、自分のスタイルをガラッと変えることはないです」

――ではまた改めて新井選手が復活する時を待ちたいと思います。

「自分が試合で勝ってきた感覚や戦い方はすぐになくなるものではないし、試合でガチガチに緊張するタイプでもないので、自分は半年(試合が)空いても問題ないと思っています。本当は勝って、そうしたかったんですけど人生そこまで楽じゃないですね(苦笑)。でも必ず僕は戻ってきますよ」


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