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【Special】J-MMA2023─2024、大原樹理─02─「この体のおかげで2カ月に1回試合ができます」

【写真】韓国での激闘が、大原を強くさせないわけがないっ!! (C)BLACK COMBAT

J-MMA 2023-2024、第二弾・大原樹理インタビューの後編。
Text by Shojiro Kameike

ここでは大激闘となったイ・ファンソン戦の試合内容について振り返る。大原は開始直後のアクシデントを如何に乗り越え、逆転KO勝ちを収めたのか。さらにブラックコンバット出場についても、今後の展望を語ってくれた。

<大原樹理インタビューPart.01はコチラから>


――試合映像では大原選手が入場してくると、会場も大いに盛り上がっているように見えました。現地の認知度などはいかがですか。

「それが――日本とは違って、意外と韓国では大原樹理が人気なんですよ(笑)」

――日本と違って(笑)。

「アハハハ。佐伯さんからも『せっかく韓国で人気が出ているのだから、しばらくブラックコンバットで試合をしてみても良いんじゃないか』と言われていて。試合当日も会場の外に出たら現地の方が『一緒に写真を撮ってほしい』とか、日本語で『頑張ってください!』と声をかけてきてくれました。大会自体は今年2月の試合の時も盛り上がっていましたけど、11月の大会のほうが盛り上がっていたようには感じましたね」

――試合が始まると、イ・ファンソンのパンチを受けて右目を負傷してしまいました。

「開始1分で相手の左フックを受けて、全く右目が見えない状態になってしまい……。見えなくなった瞬間は、とりあえず組んで時間を潰し、回復を待とうと思って。でも拭ったら出血しているし、視界も回復しないので『これは折れたな』と。そのせいで距離感は掴めず『どうしようかな……』と考えていました」

――要因は異なりますがイ・ソンハ戦と同様に距離感が掴めず、「どうしよおうかな」と考える試合展開に……。

「はい、同じようにシンドイ試合ではありました。でも今回は気持ちも違ったんですよ。『いいや。殴り合おう』って。殴り合いの打撃なら絶対に負けない。血まみれになろうと、どうなろうと――とにかく殴り合おうと思いましたね。

距離感が掴めないから、1Rはいくら手数を出しても当たらなくて。当たっても、いつもどおりの感覚がなかったです。2Rになるとイ・ファンソン選手も出て来たので、とにかく右目だけはガードで守りながら、相手のパンチはパーリングしながらジャブを突くことだけ考えました。そのジャブが当たることで、少しだけ距離感を修正することができたんです」

――片目が見えなくても、自分の打撃で相手の位置を探ってから左ヒジを当てたのですか。

「そうです。自分の打撃だけではなく相手のパンチを食らっていたら、それだけ近い距離なわけじゃないですか。『これは踏み込めば当たる』と左の横ヒジを出したんですよ。

当たった瞬間は感触があったし、相手の額が切れているのも分かりました。でもイ・ファンソン選手の動きは止まらず、それまで自分の打撃も当たっていないから『もう一回、他のどこかを切ることはできないかな』と考えていました」

――結果として右カーフから右ハイが当たり、フィニッシュは右ストレートに続く右前蹴りでした。なかでも前蹴りを繰り出したのは、あの瞬間が初めてです。

「だから相手は、あの前蹴りが見えていなかったと思います。その直前に相手のセコンドが顔面への攻撃を警戒して、イ・ファンスン選手にガードを上げさせたんですよ。すると僕のセコンドから『前蹴り!』という声が聞こえて、前蹴りを出したら当たりました。つまり僕たちはセコンド、チームとして試合に勝ったんです」

――なるほど。ボディへの前蹴りでダウンしたあと、サッカーボールキックのダメ押しもありました。

「ブラックコンバットのルールって結構過激で、サッカーボールキックも有りなんですよ。あの試合は散々やられてしまっていたので、『前蹴りだけで終わらせたくねぇ』と思って樹理キックでトドメを刺しました」

――あのサッカーボールキックを「樹理キック」と呼んでいるのですか。

「今、咄嗟に名付けました(笑)。どうですか?」

――今後は「樹理キック」でいきましょう! この勝利でイ・ソンハ戦の敗北は払拭できたと思いますか。

「自分の中では払拭できました。やっぱり『追う立場』と『追われる立場』というか――DEEPのベルトを獲ったあと、イ・ソンハ戦の時も自分はどこかで『追われる立場』の意識を持っていたと思うんです。でも、そのベルトを失って自分は『追う立場』に戻りました。追う立場の人間が、ちょっとやそっとの怪我でウダウダ言っていられない。そういう逆境も当然だと思って、韓国に乗り込みましたから。気持ちで勝った試合、ということですね」

――大逆転KO勝ちの興奮もあったのか、次の対戦相手候補としてキム・ジョンギュンがケージインしてきた時は本気でイラッとしていましたね。

「イラッとしましたよ! そもそも『ジムのオープンがあるから』って自分との試合を断っておいて、ここで出てくるなんて面倒くさいと思いました。しかも『準備期間が必要だと思って今回のオファーは断ったけど、こんな試合内容なら準備期間はいらなかった』とか言いやがって。だったらオファー受けろよ(苦笑)。ケージの中でも言ったとおり、僕は彼にチャンスを与える気はないです」

――大原選手としては次に誰と対戦したいですか。

「ランキング2位のパク・ジョンホンです。キム・ジョンギュンは今、ライト級3位で。チャンピオンのイ・ソンハと対戦するためには、1位の僕が2位のパク・ジョンホンを倒すほうが手っ取り早いじゃないですか。3位のキム・ジョンギュンを倒したとしても、またケージの中でパク・ジョンホンと長いやり取りがあって、さらにパク・ジョンホンに勝ったあとイ・ソンハと長いやり取りをして……というのは、どうなのかと」

――ブラックコンバット特有といえる、試合後のトークアワー問題ですか(笑)。

「そういうわけじゃないですけど――トーク時間は長いです(苦笑)。とにかくワンクッションを挟むのが面倒くさくて。だったら先にパク・ジョンホンを潰しておけば、僕がイ・ソンハと対戦することについて誰も文句を言えなくなりますよね」

――そういったブラックコンバット側の選手との試合は、日本で行いたいですか。それとも韓国で実現させたいですか。

「やっぱり僕が単身韓国に乗り込んで、ベルトを獲り返すほうがカッコ良いですよね。そこでDEEPのベルトを獲り返し、ブラックコンバットのベルトも巻きたいです」

――ちなみに試合後、右目の腫れはどうなったのでしょうか。

「1~2日は腫れが酷かったのですが、1週間もしないうちに元通りになりました。試合後に診てもらっても『これは折れていない』と言われ、すぐに帰国できましたし。格闘技の才能はないけど、怪我をしない才能はあるんじゃないかと」

――あれだけ腫れ上がって……怪我はしていますよね(笑)。

「いやいや、あんなの怪我のうちに入りませんから。帰国して病院で診察してもらっても、目の中は全く傷ついていませんでした。この体のおかげで2カ月に1回試合ができますから、2024年もどんどん試合をしていきたいです。宜しくお願いします!」


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