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【Special】月刊、青木真也のこの一番:9月─その壱─ドゥリーニョ✖ネルソンからの「階級細分化」

Durinho【写真】ドゥリーニョがネルソンにも勝利、ウェルター級で2連勝を果たした(C) Jeff Bottari/Zuffa LLC/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2019年9月の一番、第一弾は28日に行われたUFN160からジルベウト・ドゥリーニョ・バーンズ✖グンナー・ネルソンの一戦を語らおう。


──9月の青木真也が選ぶ、この一番。最初の試合は?

「ジルベウト・ドゥリーニョ✖グンナー・ネルソンです」

──先月の実弟エウベウに続き、今回はお兄ちゃんのドゥリーニョですか。

「ハイ、2カ月連続でウェルター級で戦って2つとも勝ち、これからもウェルター級でやっていく。ネルソンという強い相手だし、今回は厳しいと思っていたら漬け切るという謎の強さを発揮していましたね。ドゥリーニョは日本で一度、グラップリングの試合をしているんですよね」

──ハイ、2010年10月にDEEP Xで長谷川秀彦選手と戦っています。しかも新木場1stリングでした。

「そうそうっ!!(笑)。長谷川秀彦が圧倒されて、亀になっても亀乗りとかされて」

──34-0という結果でした。

「なんか『長谷川、何やってんだ?』とか言う人間もいたけど、それは可哀そうだろうって(笑)。相手はドゥリーニョですからね。でもフーベン・シャーレス・コブリーニャ、ハファエル・メンデス……ライアン・ホール、凄い人間がDEEP Xでは戦っていましたよね」

──その多くがブルテリアの坂本健さんのおかげですね。

「そういう歴史があって、今、ドゥリーニョがMMAに適応しているというのが興味深いです。そこが凄いと思います」

──ネルソンもADCCで活躍し、ヘンゾ・グレイシーの黒帯です。

「まぁ、黒帯っていうのは……幅がありますからね。何かの記事で岩本健汰はまだ紫帯というのを読んだことがあったのですが、帯制って崩壊していると思うんです。幅が広くて、紫、茶、黒帯とコンペティションがあっても道着、ノーギ、MMAで帯がもらえてしまう。時代背景もあって紫、茶で強いヤツは黒でも強いだろうって。ボクシングでいえば、井上尚弥はキャリアの序盤から井上尚弥なんですよ。強いヤツは強いですから」

──✖ドゥリーニョでなく、MMAトップどころのなかでもネルソンはしっかりとした柔術ができると思います。

(C) Jeff Bottari/Zuffa LLC/UFC

(C) Jeff Bottari/Zuffa LLC/UFC

「それはそうです。ただし、柔術のコンペティションを勝ち抜いてきたドゥリーニョに対抗するのは難しいですよ。

それでいて、ドゥリーニョはノーギの試合に出てMMAの時ほどトップ戦線で結果を残せていない。そしてネルソンに対して、キックボクシングとテイクダウンで勝っている。MMAでネルソンに勝った。そういう意味でもドゥリーニョは面白いです」

──チャンピオンはカマル・ウスマン……同門ですね。ウェルター級で2つ勝ったことで、ライト級でのポジションも上がりライト級でトップを目指すきっかけにもなったかと思うのですが。

「ライト級に落とすのはキツいんじゃないでしょうか。ドーピング・コントロールが厳しいのもありますしね。それにウスマンに対しては小さいですよね。ウェルター級としては小さい。ただし相対的な部分でなく自分の絶対的なコンディションの方が大切になっているのかと。

消耗していく70キロよりも、コンディションの良い77キロを選ぶ。相手に対しては小さくなっても、その方が結果的に強いという判断したというのはあるかもしれないですね」

──そうなってくると、今のMMAの階級は幅が広い。階級制というのはなるべくイコール・コンディションで戦うために用いられるもので。ここまでレベルが上がった現代MMAで、65キロの次が70キロ、それから77キロ、その上が84キロ、そして93キロ、この体重差は大きい。ベストな自分で戦うためにスーパー○○、あるいはライト〇〇という階級も必要になってくるかと。

「そこまで人材のいるプロモーションも少ないかもしれないですけど、やっぱりボクシングのように刻んでいくようになっていくでしょうね。軽い階級は細かくしていく必要性はあるかと思います。やはり僕が77キロで、84キロの選手と戦うのはしんどいですし。階級の細分化は避けられないです」

──そこを動かすのもUFCになるかと。

「ですね。UFCにない階級は、女子レスリングで世界選手権にはあってもオリンピックにない階級と同じ。どうしても軽視されがちだし」

──横行する計量失敗の抑制にもなるかと思うのですが……。

「そこはUFCが階級を増やすかどうか、ですね。UFCが舵取りをしないと……EXC(エリート・エクストリーム・コンバット)が73キロとかにしたけど、普及しなかったですからね」

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