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【Special】月刊、青木真也のこの一番:4月─その弐─ディロン・ダニス×カイル・ウォーカー「自己否定」

Danis s Walker【写真】始めてのMMAを自らの柔術で戦い、勝利したディロン・ダニス (C)BELLATOR

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ4月の一番、2試合目は4月28日、Bellator198からディロン・ダニス×カイル・ウォーカーの一戦を語らおう。

昨年、日本のブラジリアン柔術界に激震をもたらした青木の柔術論。MMAを戦う柔術家へ、なぜ青木が感情移入できるのか。それは人として魅せられるという根本論が、存在することが今回のインタビューで知ることができた。


──4月の青木真也が選ぶ、この一番。続いて2試合目は?

「ディロン・ダニスのMMAデビュー戦ですね」

──2勝4敗のカイル・ウォーカーに足首固めを極めて勝利しました。

「彼がこれからどうなるのかとか、そういうコトよりもあの感じのMMAはアレでアレで良いなという話で」

──あの感じでというのは?

「ガードの中に入れて、サブミッションみたいな」

──ダニスも実はゲイリー・トノンのように打撃を試してみたかったのではなかったのかと思いました。それがパンチを貰って、引き込んじゃった……みたいな。

01「なんか野球みたいなMMAというか。先攻と後攻が分かれているような感じで、攻めと守りがハッキリしていて。ああいうMMA、好きだなって思いました。今のMMAになった時代にあの攻防は良かった。

10年、15年と時代を巻き戻された感じのオーセンティックというのか、それでいてあの足の作りだけは凄く洗練されていて。局面として、あそこだけはメチャクチャ強いわけで」

──ジルベウト・ドゥリーニョのMMAとは明らかに違いますよね。ドゥリーニョは普通にMMAができて、寝技が強いという感じで。

「ダニスはダニスで、個性だと思います。人に魅せるということを考えると、打撃でヒャっとなるのも」

──あの大会はダニスだけでなく、ラファエル・ロバトJr、ネイマン・グレイシーも一本勝ちをし、十分にMMAファイターなエマニュエル・サンチェスも肩固めで勝ち、カーウソン・グレイシー柔術と絶叫、柔術をアピールしていました。

「サンチェスも良かった。日本でいえばHERO’S的な大会でした。スコット・コーカーって、やっぱり石井館長の弟子なんだなって。北米で唯一見られる石井ゲノム、IGFなわけですね(笑)。

ダニスにしても柔術家だけど、戦える柔術家のような気がします。なんだかんだってMMAをやって、ああやって勝てる。戦おうとしている人ですよね。

デニス、ロバトJr、さっき名前が出たドゥリーニョにしてもタンキーニョにしても……セルソ・ヴィニシウスにブルーノ・フラザト、セルジオ・モラエス、昔でいえばフレジソン・パイシャオン、アンドレ・ガルバォン。皆、MMAを戦った」

──昨年のライトフェザー級ムンジアル3位のアリ・ファリアスは二足の草鞋を履いています。

「みんな、やるじゃないですか。どっちが良いとか悪いとか言うと、また炎上するから言わないけど、日本とは違った肌感覚が彼らにはある。そこはチョットね……違いは感じますよね。

MMAができない人が柔術をやるのか。MMAをやろうと柔術をやるのか。その位置づけの違いは感じます。やっぱり、ダニスもここでMMAをやったことで、彼の柔術に説得力が増しますよね」

──そこはもう、あまり触れても……。何も起こらなかったので。

「そうですね。でも、ゴメン。僕のなかでは柔術家は、MMAを戦うとその柔術に説得力は増します」

──ただ、青木選手にしてもデェダムロン・ソーアミュアイシルチョークやサゲッダー・オペットパヤータイがMMAを戦うから、ノンオー・ガイヤーンハーンダオのムエタイより説得力があるとはならないのではないですか。

「いや、なります。打撃を指導する人として見ても、MMAの戦う人間からすると戦っている方が説得力は増しますよ。それが僕の感覚なんですよね」

──もう、繰り返しになるので止めましょう。

「ディロン・ダニスに話を戻すと、彼の全てを行程したいのは『戦ってみたい』と彼が思ったこと。そして、ケージのなかで、彼がやってきた柔術を証明したことは素晴らしいですよ。

言ってみればシーザー・グレイシー、ヘンゾ・グレイシー、ホジャー・グレイシーがMMAを戦ったんですから。そういう意味では最たる例はホジャー・グレイシーで。MMAでは最強ではなかったかもしれないですけど、彼の柔術をMMAのなかで証明したことは凄いと思います」

──ネイマン・グレイシーはMMAで足関節にトライしていました。

「そう、そうなんですよ。ネイマンにしても、ダニスにしてもなぜ、彼らに感情移入するのか。それは彼らがMMAを戦うということに限らず、新しいことを取り入れて頑張っているからです。それって自己否定しているのか、していないのかだと思います」

──彼らが自己否定しているというのは?

「新しいモノを取り入れる、そのために努力をしているということです。今の自分ではダメなんだと否定しているんです。このままじゃダメだと思うから、アップデートしようと努力する。それをしなくなる時って、自己否定を止めた時です」

──それはその通りかもしれないですね。自己否定、現状に満足していないから次へ進む。

「でも、ホントは自分を肯定してやりたい。だから、今の自分を否定して前へ進む」

──いや、本当にその通りですね。

「そういう選手には乗ることができるだと思います。なぜ報われないんだという想いがあり、自己否定と自己肯定を繰り返す。でも自己否定は苦しいから、自己肯定だけになっていく。

そうなった瞬間に魅力がなくなる。そこは究極、強い弱いじゃないと思います。強い弱い、勝ち負けは横に置いて葛藤を繰り返しているのかどうか。そこが人としての魅力に通じているんだと思います。葛藤している人は、負けたくないという気持ちが、その根底にあるから」

──負けても良いだと、学芸会であってコンペティションではなくなるのですね。

「ハイ、自己肯定だけになってしまいます。それじゃ面白くない。だからMMAをやる柔術家もそうだし、柔術という競技のなかでも、自己否定して葛藤している人は魅力的なんです」

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