この星の格闘技を追いかける

【EBI】エディ・ブラボーに訊く、新レッグロック時代─01─「レッグロックで完結しているわけじゃない」

Eddie Bravo【写真】実に渋くなっているエディにクールなポージングをお願いしても、日本のメディアが喜ぶという米製カラテポーズを取り出してしまう──エディだ(C)MMAPLANET

ラバーガード、ツイスター、ロックダウン、エレクトリックチェアーにベーポライザー。革新的な柔術技術を世に生み出してきたエディ・ブラボー。

そのエディが2年前に『これからは足関節が重要になってくる』と語った言葉の通り、レッグロック・コンベネーションは海の向こうで飛躍的に進歩した。エディが指導する10th Planetでは、日本では目にしたこともないようなサドル・ポジションからの限定スパーリングが行われていた。

新しい時代のレッグロック、さらにゲイリー・トノン×青木真也、そしてイヴォルブMMAと結びついた10th Planet柔術について、エディに話を訊いた。


──エディ、忙しいなかインビューを受けていただきありがとうございます。

「俺の方こそ、礼を言うよ。10thプラネットに来て、俺の話を聞いてくれてありがとう」

──2年振りに練習を拝見させていただいたのですが、前回の訪問時にエディは『これから足関節は新しい時代を迎える。しっかりと取り入れないといけない』と言っていたのですが、まさにその言葉通りになりました。そして、今日の練習でもサドル・ポジションからの限定スパーにかなり時間が割かれていました。

出稽古に来ていたネクサセンス嶋田裕太とAACC澤田龍人にサドルポジションの流れを説明するエディ(C)MMAPLANET

出稽古に来ていたネクサセンス嶋田裕太とAACC澤田龍人にサドルポジションの流れを説明するエディ(C)MMAPLANET

「ライブ・ドリルだな。サドル・ポジション……俺たちはハニーホールと呼んでいるけど、スパーが始まるまでのセットアップ、そこを丁寧にすることが、あのトレーニングのミソなんだよ。

確かにこの2年で、レッグロックは大いに進化した。常に変化を伴っている。新しい仕掛けが次々と生まれているんだ。そして、その仕掛けを防ぐための新しいディフェンスが誕生し続けている。もう2年前とは別モノだよ。よりハイレベルになり、ずっと洗練されている」

──足関節理論が完成しつつあるというか、非常にシステマチックになったように見受けられました。

「その通りだ。以前はレッグロック・ゲームは雑だったけど、今は凄くテクニカルになっている。以前からレッグロックは危険な技だった。ただし、失敗すると自分が危なくなる。MMAにおいて、レッグロックを仕掛けたファイターがポジションを失って殴られるシーンを何度も見てきたはずだ」

──ハイ。

「今やレッグロックはそのリスクを廃し、危険さだけを残せるように進化している。俺たちのレッグロック・システムは、かなりジョン・ダナハーに近づいてきているよ。ギャップを埋めつつあるよ。まだダナハー達……エディ・カミングス、ゲイリー・トノンは先を行っているのは確かだ。でも、俺たちも追いつきつつある。

今夜の練習でも見たろ? レッグロックの仕掛けとパスガードのコンビネーション、何もレッグロックで完結しているわけじゃないんだ。レッグロックの仕掛け、その仕掛けを打ち破るトレーニングが必要になってくる。

クラシカルな柔術を織り交ぜ、最高のレッグロッカーと最高のビート・レッグロッカーを目指しているのさ」

──基本的にグラップリングのトレーニングに見えたのですが、エディはこのレッグロック・システムがMMAでも通用すると考えていますか。

「もちろんだ。事実、MMAでも新しいレッグロックが見られつつある。なぜか、バックアップが整っているからだ。失敗しても、次の手がある。

だからといって、俺は何も1Rからレッグロックを仕掛けろとはいわない。最終回、パスを許し殴られているなら、レッグロックに行け。失敗しても、バックアップ・プランがあるんだから。

1Rと2Rを落としたなら、一発で極めることができるレッグロックで勝負を賭ける。以前は一か八かだった。でも、今はレッグロックをミスしても、次のレッグロックやポジションを奪取する仕掛けが控えている。

それに元々、負けているんだ。このまま負けるぐらいなら、レッグロックに賭けるべきだ。しっかりとしたレッグロックの仕掛けを持っているなら、な。逆転技、リスクも当然ある。ただし、以前よりずっと完成度は上がっている」

──ホームランか三振ではなく、打率の高いホームランバッターにレッグロックはなりつつあるのですね。

「その通りだ。だからといって、1Rから振り回すなよってことだな。MMAはスタンドから始まる。パンチもある。なら、テイクダウンしてパスガードからマウント、バック奪取の方がより良い選択だ。

第一の選択じゃない。でも、レッグロックが命を救うことがある。1998年、PRIDEでゲイリー・グッドリッチのパウンドで攻め立てられていたマルコ・フアスが、残り1分でヒールフックを極めて勝利した。そういうことだ。

そして、レッグロックは最後の手段としての精度が上がっている。あくまでもMMAでの話だぞ」

──つまりグラップリングになると?

「最初から仕掛けても全く問題ない。特にノーポイント、オンリー・サブミッションのEBIでは、な。レッグロックを警戒した相手は、絶対的に動きが固まる。そこがチャンスだ。ロックダウン、エレクトリックチェアー、ラバーガードの形を取りやすくなる。

俺の教え子たちの動きを見てくれ。レッグロックからラバーガードのコンビネーションをどんどん仕掛けることができる。レッグロックを仕掛けた、相手が固まる──『サンキュー、ラバーガードに入れるよ』ってことだ」

──レッグロックの仕掛けが、次の仕掛けの布石になるということですね。

「ザッツ・ライト。もう、世界中に浸透したからすぐにラバーガードに入れるわけじゃない。でも、レッグロックがあれば、サッとラバーガードを取ることが可能になる」

──非常に興味深いです。

「だからグラップリングだと、レッグロックから試合を組み立てることができるんだ。MMAは打撃から始まるから、そういうわけにはいかない。

ADCCルールでも、最初の5分はポイントがない。だから、どんどんレッグロックを仕掛けるべきだ。もともと、ディーン・リスターがADCCでヘンゾ・グレイシーの連中をヒールフックで苦しめたことで、ダナハーのレッグロック考察が始まったんだ。

ただし、ADCCルールだと後半5分はシッティングするとマイナスポイントを献上することになる。だから、誰もがただ立っている選択をして、柔術ゲームにはならない。あれじゃレスリング・ゲームだ。ADCCはレスリング・トーナメント・ウィズ・サブミッションなんだ」

<この項、続く>

PR
PR

関連記事

Movie