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【Bu et Sports de comat】武術の叡智はMMAに通じる。岩﨑達也─02─試合をするのは人間だけ

Tatsuya Iwasaki【写真】武術と格闘技の違いは、武術とスポーツの違いでもある(C)MMAPLANET

MMAと武術は同列ではない。ただし、通じている部分が確実に存在している。

4月23日のプロ修斗公式戦で岩﨑氏の指導を受ける澤田龍人×木内崇雅の一戦に見られた先を取る打撃を一端として、『間合い』という言葉を取ってもその武術的意味合を知ることになる。

単なる距離でなく、威力でもタイミングでもない──間合いを切り口に武術とスポーツの違いを剛毅會空手・岩﨑達也宗師に尋ねた。

<武術の叡智はMMAに通じる。岩﨑達也─02─澤田の勝利に見えた先を取る打撃──はコチラから>


──先が取れた打撃の威力について、澤田龍人選手に実演していただきました。

「その威力という言葉ですが、威力も一つの要素です。ここに距離だったり、タイミングなどが含まれた状態にあることを彼らに指導しています。威力だけだと、潰されてしまうので。それは平たい言い方をすると、全てが整っているとオーラのようなモノが備わるようになるんです」

──オーラですか……。

「言葉にするとすれば、ですね。でも、オーラが備わった攻撃なんて風に指導はできないですよ。先日の澤田龍人の試合でいえば、先を取っていたのでもう相手選手の反撃があっても効かされる打撃はないと踏んで、あの距離で戦わせることができたんです。

空手に先手なしという言葉があります。それは倫理観の話。先に手を出したらいけないっていうことです。同時に……実のところ、空手には本来、己の制空権以外の技がないんです。だから逃げる相手を追う、距離を取っている相手を攻めるという局面において手がないという大きな特徴があります。それらの攻撃手段は型という教科書のなかにないのです」

──なるほど、興味深いです。

「ただし、選手は試合に勝たなければならないです。対して、武術の目的は自分の身を守ることなので勝つ必要はない。つまり制空権以上の技がない。でも、MMAっていうのは制空権の外に倒すべき相手がいる。よって、とことんと考えないといけないわけです。

それには距離だとか、スピードだとか、威力という一点だけを見るのではなく、全ての関係値が見えていなければならない。その関係値のことを『間』と表現します。その間が合った状態が『間合い』です。距離が合ったことを間合いと名詞化して呼ぶことが多いですが、空手においては間が主語、合いが動詞になります」

──ムエタイやキックボクシングも、本来は自分の拳や蹴りが届く距離、そして正面に立っているという競技性のなかで磨かれた打撃です。つまり、その距離と角度を作ることができれば、特性にあった攻撃力が発揮されます。それは空手もキックやムエタイと同じになりませんか。

「その場合の空手とは競技の空手ですか?」

──いえ、今、澤田選手が見せてくれた空手です。

「MMAというものは0が100です、距離が。ボクシングやキックのように中間距離で殴り合うことを想定していない。そして、当然のように組みもないです。ただし、MMAは殴り合わなくて良い。殴り合いたくなければ組んでしまえば良い。となれば、正面で殴り合うというコト自体の持つ意味合が、ルールによって違ってきます」

──これは別の質問になってしまうのですが、競技の空手になるとポイント空手はかなり距離が遠い、だからMMAに合っているという考えを持っていました。

「ポイント空手については、あまり詳しくないのですが……競技特性としてタッチするような感覚じゃないですか。さきほど言っていた間合いのなかで、威力が抜け落ちている。効かせた攻撃をしようと思うと、殆どの打撃競技は重心を一度掛けます。そこにタイムラグができる。スピードとタイミングを争う寸止めだと、そのラグを取れない競技特性になると思います。つまりは……」

──あぁ、効かせないといけないMMAでは、距離とタイミングは似通ったケースがあっても、そこからの攻撃は違うということですね。

「そうなんです。だから寸止め空手出身のリョート・マチダ選手も打つときはボクシングのようになり、出入りの感覚として寸止め空手が生きている。でも、リョートはお父さんに『空手をやれ』と指摘されている記事を読んだことがありました。ボクシングやキックばかりやって、空手になっていないと。

つまり僕が思うに出入りは伝統派空手の動きで、打つ・蹴るという動きはボクシングやキックになっている。だから、それぞれ競技特性があって、MMAに如何に生かすかという部分で皆が工夫をしている。そして、MMAの競技特性として今、言われたように打撃を効かせる必要があるんです」

──さきほどの話からすれば、武術としての空手はMMAの距離があれば攻撃する必要がないわけですね。

「武術とスポーツの違い……試合をやる動物は人間以外にはいません。武術の本質として、戦いを知ることで戦わないということがあります。実際に戦争はあってはならない。殺し合いはしてはいけない。そんななか殺し合いのなかでどう家族を守るのか、国家をどう守るのかが武術の起源になっています。

勝つ必要がある格闘技と、守るための武術。格闘技の先に武術はないんです。ただし、試合を戦う選手たちの見る目、モノの見方に関して、武術の型だとか叡智がもの凄く生きてくるんです」

<この項、続く>

■岩﨑達也
1969年6月20日、東京都出身。極真空手90年、95年全日本重量級チャンピオン、世界大会三度出場。
2002年国立競技場Dynamite!!でヴァンダレイシウバと対戦。
現在剛毅会空手道主宰、武術空手の指導、MMA選手の育成に励む。

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