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【Special】月刊、青木真也のこの一番:4月編─その弐─キム・スーチョル×キム・ミンウ& 日韓の違い

2017.05.01

Kim Soo-Chul vs Kim Min-Woo【写真】首相撲の攻防も、受ける強さがキム・スーチョルにはあるという青木(C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ4月の一戦=その弐は15日のROAD FC38からキム・スーチョル×キム・ミンウ戦を語らおう。

──4月のMMA、シャーウス・オリヴェイラ×ウィル・ブルックスに続く、一番は何になりますか。

「キム・スーチョルのキム・ミンウの試合ですね」

──ROAD FCバンタム級選手権試合ですね。

「スーチョルはONEで同じ時期にチャンピオンでいたことがあるので、思い入れがあります。20歳ぐらいでONEで戦い始めて、まだ25歳なんですよね。凄く強くなっている──強くなっていると思います。

この試合の攻防の全てを覚えているわけじゃないけど、スーチョルはアップライトに構えているのに、相手の攻撃を受けて返すことができる。相手の攻撃を受けとめて、自分の攻撃を仕掛けることができるんです。

あの戦いができるのは、自分に圧倒的な自信があるからです。ミスをしないから、賭けに出ることなく勝てるからアレができる。つまり、強いんですよね。勝たないといけない試合で確実に勝てるのは、本当に強いからですね」

──背の低い方のキム・スーチョルが首相撲を仕掛け、キム・ミンウが首相撲で対抗してくると、重心が高くなるのでダブルレッグを仕掛ける。テイクダウンに帰結するファイトでした。

「そこにも受けることできる強さがある。クリンチの強さに関しては、一昨年のRIZINでマイケ・リニャレスと戦った時にも出ていましたよね。なので今さら驚くことではないですけど、背の低い人間はやはりムエタイでもインファイトで組まれることが増えてくるから、その対処方法は整っています。

さらにテイクダウンに結びつけることができるスーチョルは、MMAとして独自の進化をしています。サブミッションも強いですし、打撃もテイクダウンディフェンスも強い」

──キャリア序盤から、身の丈に合っていない試合を組ませるという韓国MMA界の以前の育成方法で、サバイバルを果たした。そのような感じがします。

「UFCと契約することとか考えるとレコードが汚れてしまう。だから、それが良いかどうか分からないですけど、あれを勝ち残ると強くはなれる。というか、強くないと潰れちゃう。つまり韓国人ファイターは戦績が良くなくても、強い選手が多いのは、そういう戦いをしてきたからですよね。

殴り合いが多い韓国のMMAですけど、トップ選手は攻撃を受けない。スーチョル自身は打たれ強くないし、ディフェンスや受け方が上手だと思います」

──アジア内での争いとなると、日本の若い世代は韓国に対して対抗していけるのか。

「いやいや、日本にもいますよ。堀口(恭司)君、元谷(友貴)君、24、25歳ぐらいで出てきた選手がいますから……。う~ん、そうだな……3年ぐらい前の日本のMMA界の風向きだったら、そういう風に若い選手がもっと出てきたと思います。

でも、ここ2年ぐらいの風向きを見ていると……今の韓国の若い選手には競り負けてしまう……ような気がします。日本の格闘技がどの方法に向かってしまったのかは言わずもがなですけど。

ロードFC、ONE、アジアの他の国は真剣勝負をしている。彼らはしのぎを削った真剣勝負をやっている。だから韓国にしても、フィリピンにしても出てくる。この流れ以前の日本もそうだった。僕らの世代の日本人ファイターから、堀口君や元谷君の世代だってそう。

それが真剣勝負なんだけど、緩い……真剣勝負ごっこみたいな世界観が出てきた時に……う~ん、短期なスパンでは良いかもしれないけど、長期のスパンではしんどいかもしれない」

──本当のサバイバルか、サバイバルありき──サバイバルがルーティンなサバイバルの違いは出てくるかと思います。サバイバルの先とサバイバルの受け皿がない状況なので。

「落とすための入試と合格させるための入試みたいなモノですよね。一敗の価値……ではなくて代償が軽くなる。まぁ、難しいところですよね。ちゃんとこの先を見て、判断していかないと」

──私はファイターだけでなく記者、関係者もこの10年間、そこを見ることができる機会があってからの今なので。もうしょうがないかと……。

「しょうがないですよね。賢いヤツは見ていますよ。右肩上がりソーンでなくなると、UFCを見ても面白いと思えなくなっている。そんな感じ取り方をしているようですし」

──でもBellatorとUFCを上から下まで眺めると、その差は歴然としているんですよね。

「受ける、受けないという部分でないと部分で、UFCとベラトールは違います。なんかバターとマーガリンみたいで(笑)。UFCに対してベラトールはカウンターカルチャーだから面白いんです」

<この項、続く>

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