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【Road to UFC2023Ep05】リー・カイウェン戦を振り返る、神田コウヤ─02─「豊かなMMA人生とは」

【写真】リー・カイウェンに判定で敗れた神田。しかし、この敗北が彼をさらに強くするだろう(C)MMAPLANET

27日(日・現地時間)、シンガポールのインドアスタジアムでRoad to UFC2023Ep05&Ep06が開催された。各階級トーナメントの準決勝戦が行われるなか、フェザー級でリー・カイウェンに敗れた神田コウヤのインタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike

MMAPLANETではRoad to UFC2023の準決勝で戦った選手に試合を振り返ってもらうレビュー企画を実施。その第一弾として神田コウヤにリー・カイウェン戦について訊くと、UFCの採点基準から神田のMMAファイター観が明らかとなっていった。

【神田コウヤインタビューPart.01はコチラから】


――2Rはジャッジ2者が神田選手の10-9としています。1Rと同様に神田選手が距離を取っているのに対し、カイウェンも手数が少ないためレフェリーが両者に注意を与えていました。その際、神田選手はレフェリーの顔を見ていませんでしたね。

「そうです。気づいちゃいましたか(笑)」

――レフェリーに対して明らかに顔を背けているので、誰でも分かると思います(笑)。

「アハハハ。試合前にケージの中央で、レフェリーが選手にいろいろ言っているじゃないですか。自分はあの時もレフェリーのほうを向いたり、ちゃんと聞いたりはしないです。英語が分からないので」

――まず言語の問題で……。

「はい(笑)。まず試合前は、とにかく集中したいので他の声はシャットアウトします。それにカイウェン戦は、あの状況でレフェリーが入ってくるということは、『アグレッシブに戦え』というようなことを言っているのは、英語が分からなくても察知できますよね。でも、そんな注意を与えられても――あの段階で自分は戦術を変えられないです。1Rの採点が分からないので」

――確かにそうですね。UFCはオープンスコアリングではありません。あの時点で1Rはカイウェンが取っていることが分かれば、神田選手も2Rに戦術を変えられるかもしれない。しかし採点が分からない以上、神田選手は自分の戦術を貫き通すしかない。

「それで2Rはジャッジ2者が、自分の10-9としているわけですからね。僕としても勝つための試合をしているので、ただアグレッシブさを求められても戦術を変えることはできないです。最終ラウンドはカイウェンが前に出てきたじゃないですか」

――はい。

「あれもカイウェンが1Rと2Rを取っているか分からない。あるいは2Rは取られていると判断したから、確実に3Rを取りに来たと思うんですよね」

――前に出て来るカイウェンに対し、神田選手はサークリングしながらテンカオや蹴りを当て、カウンターでパンチも当てていました。

「でもずっとカイウェンがケージ中央を取っていたから、結果論ですけど――カイウェンのラウンドになっていても仕方ないです。最後は僕が組むと、カイウェンがケージに押し込んできましたよね。あれもリカバリー力というか、カイウェンのほうが自分を優位に見せるための戦術として正しかったんだと思います」

――その点では、採点基準の一つであるケージジェネラルシップについて、より理解を深める必要はありますね。3Rは神田選手の顔から出血が見られており、それも採点に影響を及ぼしたのかと思いました。

「えっ、血が出ていましたか。それは記憶にないです。別にクリーンヒットを貰っていたわけでもないし、バッティングなどもなかったので……」

――なるほど。そうであれば、何かしらの接触で出血を引き起こしてしまったのでしょう。結果は神田選手がユナニマスで敗れました。

「最初に言ったとおり、結果は仕方ないです。UFCと契約して生活を豊かにする、という目標は達成できなかったですけど(苦笑)」

――生活を豊かにする……金銭面で言えば、選手によってはUFCよりも国内で戦うほうがファイトマネーも良い選手はいます。そこで神田選手は今後、どのような道を選択するのか教えてください。

「それはタイミング次第ですね。UFCにも行きたいし、RIZINで戦いたいという気持ちもあります。もちろんDEEPのチャンピオンだから防衛戦もある。今後どこで誰と戦うかは、その時のタイミング次第です。また国内で試合をしながら、来年もRTUが開催されて、タイミングが合えばエントリーしたいですしね。国内で負けているようでは、エントリーしても出場できないかもしれないし。それもタイミングです」

――なるほど。

「一つ言えるのは、引退して自分のキャリアを振り返った時に『ここでこうしておけば良かったなぁ』と思いたくないんですよ。そんな後悔をするようなキャリアを送りたくない。結局、自分の生活が豊かになったかどうかは引退した時に分かるのかなって思うんです」

――心の豊かさという意味では、まさにそのとおりですね。

「年齢的なことを考えると、自分がUFCにチャレンジできる時間も限られてくるじゃないですか。だから今できることを、やりたい。そう考えています」

――分かりました。最後に……カイウェン戦ではレフェリーに無理に促されても打ち合うことがなかったのは、一つの成長ではなかったかと思っています。

「ホント、それですよ!『同じ負けるなら判定よりもKO負けのほうが良い』という人もいるじゃないですか。でも僕がRIZINの関鉄矢戦で打ち合いに行ってKO負けした時、どれだけ言われたか(笑)」

――アハハハ。でも、そんな過去の敗戦を笑って振り返ることができるようになりました。

「今は『プロだから負けて何か言われるのも当然』だと考えています。そういう一つひとつの敗戦を糧にしながら、僕はMMAを続けていきます。いつか『自分のMMA人生は豊かだったよな』って言えるように」

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