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【JBJJF】8月6日、全日本柔術選手権──大塚博明─01─「3人寄れば文殊の知恵ではないですが」

Hiroaki Otsuka【写真】「継続性がなければ手の内はみせたくない」──ごもっともな、出稽古に関する大塚の意見だ(C)TAKAO MATSUI

8月6日(日)、東京都大田区の大森スポーツセンターで、第18回全日本ブラジリアン柔術選手権が開催される。国内屈指の層の厚さを誇るフェザー級で初優勝を狙うのは、フィジカルスペースを主宰している大塚博明。全日本選手権の抱負と世界挑戦への想い──そして、MMAと柔術の違いについても語った。
Text by Takao Matsui


――黒帯になってから、全日本選手権は何度目の挑戦に?

「今年で3回目です。2015年が初めてで、その時に準優勝しました。黒帯になって初めての全日本選手権で準優勝という結果を出して、当時の自分は満足していたと思います」

――つまり、今は満足できない?

「黒帯3年目になって、そろそろ優勝したいと思っています。昨年は、指のケガの影響もあって初戦で負けているので、今年は何としてでも優勝したい気持ちが強いです」

――準優勝した全日本選手権は決勝で岩崎正寛選手と対戦しましたね。

「彼はライト級へ階級を上げたので対戦をすることはないと思いますが、今回は結果を出したいです」

――かつて決勝を戦った岩崎選手が海外で活躍している姿を見て、どのような印象を持たれていますか。

「彼に関わらず、海外に挑戦している選手は凄いなと思います。ここの道場を設立してちょうど3年経ったんですけど、なかなか1週間空けて海外へ行くことはできなかったです。時間もそうですし、金銭的にも余裕はありませんでしたから。でも、少しずつ海外へ行ける環境が整いつつありますので、これからはできる限り挑戦していきたいですね」

――海外で活躍する彼らの挑戦からは刺激を受けますか。

「活躍したという話を聞けば、やはり良い刺激を受けますよ。でも、まずは自分がやらなければいけないことを最優先でやっています」

――道場経営と指導、ご自身の練習の折り合いは、どのようにつけているのでしょうか。

「優先すべきことはその時によって変化しますが、現役でやっている以上は、自分の練習も大切にしたいと思っています。経営があるから練習ができないと思われたくないですし、その逆も嫌です。今は、結果を出すことによって会員数を増やしたいと考えて挑戦を続けています」

――経営と試合結果の両輪を成立するのは、なかなか難しいですね。

「道場を設立して今年で4年目になりますが、会員さんが増えて、こうして柔術一本で食べていけている環境にいつも感謝をしています。練習環境にも満足しているので、あとは結果を出すだけですね」

――道場経営者であっても、世界へ挑戦できる環境が整いつつあると。

「うちには茶帯や紫帯をはじめ協力してくれる優秀な会員さんたちがいるので、そこは大丈夫だと信じています。昨年は、身内の不幸があって1週間くらい道場を空けることになったんですけど、みんなが助けてくれました。自分だけで成り立っている道場ではないんで、協力をしていただいた分は結果を出して応えたいですね」

――出稽古もしていますか。

「そうですね。週6回練習をしていますが、土曜日だけ自分の道場でやって、あとは月曜日から金曜日まで午前・午後と他の道場で練習をしています。他の道場といっても、1週間を通して、一緒にやっているメンバーはほとんど変わりません」

――出稽古が刺激に?

「刺激というか、今日はここをやられたから、次はこうしようとか、ここが良かったから、次はここを試そうとか、その繰り返しです。皆がそれぞれ別々で、ただ練習をしているという感覚ではないですね。継続性がなければ手の内を見せたくないですし、ともに切磋琢磨している今の練習環境が合っています」

――日本と世界の実力差が広がっているという声もあるかと思いますが、そこはどうのように感じていますか。

「3人寄れば文殊の知恵ではないですが、自分一人だと限界があるので、いろいろな人が知識を持ち寄って練習をすることに意味があると思っています。海外のトップ選手も、一人で転々と出稽古をしていることは少ないはずです。例えばATOSならATOSの中で切磋琢磨しているのではないでしょうか。日本でも、所属は違っても同じメンバーが集まって練習をした方がレベルは上がると思います」

――日々の練習で、強くなっている実感がある?

「間違いなくいえるのは、昨年、全日本選手権に出場した自分より強いと思います」

――練習で特別に工夫をしている部分はありますか。

「打ち込みは毎日やっていますが、これはもう日々の積み重ねですね。前回の反省点があれば、次の練習では修正をするようにしています。打ち込みのパートナーの鍵山(士門)と話をして、課題に取り組んでいます」

――そうしたことが、今年の東日本選手権の二階級制覇につながっているのですね。

「結果を出せるようになったのは、気持ちの変化が大きいですね。昨年は負けても、負けた気がしないというか、動いていないまま終わるという感じでした。止まっている状態が多かったです。今年は、それを変えるために練習の時から意識して動くように心がけてきました。ここが自分の悪いところだと、気づけるようになれたことが大きいです」

――柔術はロジックが大切な競技だと思いますが、カウンターを狙うことで、考え過ぎて手が出なくなることは?

「動かない時は、カウンターすら考えていなかったと思います。普段の練習では考えながら動いていますが、試合になると考えられなくなっていたんです。そのもう一人の自分との戦いですね。今年に入ってからは、悪い自分を封じ込めることができています」

<この項、続く>

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