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【Special】中村倫也、韓国&モンゴル格闘紀行─01─「この経験をすることで人生が豊かになる」

【写真】モンゴルの草原、ゲルをバックに爆風を満喫 (C)MMAPLANET

16日(火)から21日(日)にかけて中村倫也が韓国はソウル、パジュ、スウォン、モンゴルではウランバートルを訪れ、実質5日間でシルム、テッキョン、モンゴル相撲を体験するともに、KTT、シャンダスMMA、マザーライMMAを巡り出稽古を行った。

韓国&モンゴル格闘紀行──この5泊6日間を終え、ウランバートルのチンギス・ハン国際空港から帰路に就く直前の中村倫也に話を訊いた。


――5泊6日、足早で韓国はソウル、そしてモンゴルはウランバートルを周り、土着格闘技に触れるとともにMMAジムで出稽古を経験しました。今、この格闘紀行を終えてどのような気持ちですか。

「抱えていた不安要素として、一番大きかったのは熱くなってケガをするというものでした。それがなくて、まずホッとしています。海外で毎回、毎回初めての場所で1回、1回、緊張感のある組みを味わいました。その緊張感のある中で得られるモノも多かったですし、何よりも楽しくこの旅を終えることができたことが本当に良かったです」

──どのジム、道場でも練習を楽しめる。特にMMAのジム巡りだけでなく、シルム、テッキョン、モンゴル相撲という土着格闘技や武道まで楽しめるものとかと。撮影、つまり仕事ではあったとしても──この好奇心と探求心の強さが、中村倫也が強くなれる大きな要因なのかと感じました。

「本当にこんなことができる機会が、人生のなかであるとは思ってもいなかったです。だから、やりたいと思ったことすらなかった。この旅の話を貰って『そんなこと、できるの?』という想いがあって。

38度線を隔てて北朝鮮と接するパジュのウォルロン・シルム場 で大統領杯優勝経験のあるソン・ギョンホ 氏にサッパを巻いてもらう

実際、体験するまでこの気持ちを持ち続けた旅でした。

でも、本当に一つひとつ……韓国軍の立ち入り禁止の地域とか、怖いようなところでも皆が温かく迎え入れてくれて良かったです。全然、仕事だからとかっていう気持ちではなかったです。シルムは思っていたような体の使い方とは全然違っていました。

ティジプギで豪快に投げられた。ただの力技でなく、サッパを巧妙に使っているのが分かる

体の軸を一本柱にして、それが中心でなく右にある。この右軸を大切にして、左組みがない。

レスリングに少し共通している部分がある一方で、首を使うことの大事さとか、また違う軸を創らないと成立しない。サッパという布のようなモノを巻いて、そこを掴む。レスリングは、その掴むという行為がないので。そこに対する適応は凄く難しいと思いました。

あと、テッキョンですね。テッキョンという競技自体知らなくて。でもテコンドーではなくて、テッキョンこそが韓国古来の武道だと知って。本音を言えば全然知らなかったので、最初はテッキョンから得られるモノって余りなさそうだなっていう印象を抱いていました。

チョ・セヒョン先生、笑顔を浮かべながら──メチャク怖い蹴りを見せる。当てる気があれば、中村はモロに食らっていただろう

でも蓋を開けてみれば、一番MMAで生きて来そうな技術を貰えたし、もう少し股関節の使い方とか自由にしてテッキョンの技を広められるようにしていきたいと思いました」

──テッキョンの伝道師ですか(笑)。

「アハハハハハ。日本で、ちょっとでも生かしていければと思いました」

MMAにテッキョンを落とし込む作業も

──ギョルリョン(結合)テッキョン協会のチョ・ゼヒョン先生が揃って「MMAで使うなら」ということを言われていて、MMAの浸透度が伺えました。

「ハイ。あの先生が、愛があって優しくて。でも厳しさもある。本当に僕のMMAには、こういう技が使えるんじゃないかって親身になって教えてくれて。最後も『いつでも来て良いよ』ってみたいな言葉までいただいて。韓国ではシルムでもテッキョンでも、ウェアをプレゼントしてもらって。凄く良い思い出になりました」

──対してモンゴル相撲は、ガチガチのモンゴル相撲を大学で練習できました。さらにいえば軽量級でレスリングもやっている選手は逆に倫也選手に教えを乞い、レスリングの練習に発展するという──まさに格闘異文化交流が目の前で繰り広げられました。

「モンゴル相撲が、あそこまでレスリングと違うとは思っていなかったです。掴む場所が上も下もあって。上手い人は『そこ、持つ?』みたいな箇所を掴んで来て。人間のあらゆる箇所を支点に、遠心力を使うような……。

私立アウラガ学校10年生、16歳のバットバヤル・ゾルジャルガル君に振り回される……

振り回されるという経験がほとんどなかったのですが、16歳の子に思い切り振り回されて(笑)。

いけると思ったところで、『あっ、そこが支点になるんだ。ここを持たれていると』という。ただ、その展開が速過ぎて全く自分の頭がついて行っていないです」

バットバヤル君のリクエストに応えて、中村倫也スペシャル=チンクル(笑)を指導する。素晴しい交流が見られた

──とはいえMMAで強くなることを考えると……。

シルムやテッキョン、そしてモンゴル相撲の体験は決して必要なモノではない。どこかで使う場面があったとしても、ここに時間を割くことが有効なのかという見方は成り立つかと思います。

「MMAに役立つという要素もありますけど、強く想うのはこの経験をすることで人生が豊かになるということです。

僕らの知らない競技に触れて、知らない考え方に触れる。どういう想いでモンゴル相撲をやったりするのか。

逆おひねりのような、勝者が乳製品を観客席に投げる時、中村はモンゴルのファンと同じように懸命に手を広げてキャッチしようとしていた(笑)

実際にモンゴル相撲の大会を観戦しました。

実力者が選抜されたトーナメントを観戦させてもらい、そこで国技というものは国民からどれだけ尊敬されているのかを知りました。一概にスポーツという一言では片づけられないような歴史が感じられましたね。そういうモノに触れられて、モンゴルの方たちの神話性が増したような気がします」

──今回はMMAジムの方は6月11日のGladiator022に出場する選手が所属するジムを訪れたわけですが、KTTでは凄く気を使ってくれている感のある練習に参加しました。

ハ・ドンシンKTT監督から「中村が落としたら、一からやり直し」という脅しを受ける(笑)

「KTTに関しては、まず驚いたのが練習開始からミットを6R。

お互い、持ち合ってやる。そこから疲れた状態でスパーリングに入る。最後は考えられない量の補強をやる。それも本来はラントレの日だったのを僕が来るということでジムでの練習にしてくれたので、2Rでした。でも普段は6Rやるという……。

僕は今回、特別に1度経験させてもらっただけですが、彼らは当たり前のように日常的にやっている。あの練習に触れたことで、僕も当たり前のレベルを上げていこうと思いました。KTTの練習からは、底知れないエネルギーを感じましたね」

<この項、続く

※中村倫也が体験した「韓国&モンゴル格闘紀行」の模様は近日中にTHE1TVでアップされ、6月22日発売のFight&Life誌に詳細レポートが掲載されます。

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