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【Polaris20】ポラリスへ、高橋サブミッション─01─「ビジネス的な役回りをする人が、業界に必要」

【写真】先人のいないことをサブミッションはやろうとしています。そして、彼の言っていることはMMAも同じかと思われます(C)SHOJIRO KAMEIKE

25日(土)、英国ウェールズのニューポートにあるウェールズ国際会議場で開催されるPolaris20に高橋Submission雄己が出場し、トミー・イィプと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

5月上旬にグラップリングの本場である米国へ渡り、NAGAニューオリンズ大会でノーギ・エキスパートクラスのフライ級とフェザー級で優勝したという高橋。彼はなぜ米国に向かい、現地で何を見てきたのか。貴重な米国グラップリング事情を語ってくれた。


――5月14日に米国で開催されたNAGAに飛び入りで出場し、2階級で優勝されたとのことですが、この飛び入りというのはどんな経緯があったのでしょうか。

「もともとNAGAには出ようと思っていたんです。これは話が前後するのですが――まずポラリス出場が決まった時点で、それまで海外で試合をしたことがなかったんですね。そこでポラリスの前哨戦としてNAGAに出ようと考えていて。その折にONEでルオトロ兄弟やマイキーとかが試合をし始めていました。

僕は去年からIREのプロデューサーとなって、ABEMA TVさんと懇意にさせていただいているんですね。そこでABEMA TVの北野雄司さんから『ONEのグラップリングの動きは無視できないのでは?』と言われたんです。ルオトロ兄弟やマイキーがONEで試合をするタイミングで、シンガポールでこうしたグラップラーたちの映像を撮らないかと。ちょうど僕は米国へ行こうという計画があって。米国に行けばONEの契約選手なり、他のグラップラーがいるので、彼らを撮影するのはどうですか? という話になり、ABEMA TVのお仕事絡みで米国へ行くことになりました」

――そうだったのですか。

「そうなると優先順位としては、青木さんの試合の煽りVを撮らないといけないので、まずルオトロ兄弟を取材しないといけない。取材へ行ったときに練習することもできれば、米国で練習するという目的も合致するので良かったです。

ただ、ルオトロ兄弟のスケジュールが……海外の選手って、そういう取材スケジュールが前後することって、よくあるじゃないですか。まずはルオトロ兄弟のスケジュールを抑えないといけない。そのために僕の都合は後回しにしなければいけない。そういった事情から、ギリギリまでNAGAに出られるかどうか分からなかったんです。結果、撮るものは撮れたのでNAGAに出場することができた、という経緯がありました」

――かつて日本人選手がブラジルへ練習に行くと、日本人からすれば現地の選手たちが時間にルーズで、伝えられた時間に選手たちが集まってこないというお話は聞きました。

「僕はそれほどルーズな海外事情の煽りを受けたことがないのですが、伊藤健一さんがジョン・ダナハーのジムへ行ったら、ダナハーが自分のクラスなのに1時間半ぐらい遅刻してきて、会員さんがみんな怒っていたという話は聞きました(笑)」

――アハハハ、現地では何が起こるか分からないので大変ですよね。しかし撮影、練習、試合と希望していたプランは全て叶えられたということですか。

「はい。いわゆる映像の撮れ高や編集の出来については僕も分からないのですが、僕自身の希望としてはルオトロなり、ジオ・マルチネスなり、ダナハーのところにいるジョナサンと組むことができました。エディにクラスにも参加できたし、NAGAにも出られたしで、僕の希望は叶えられたと思います」

――そのような米国の情報を聞くと、日本のグラップリングにも同様のビジネスが持ち込めるかもしれないですね。

「持ち込めるというより、持ち込まないといけないと思っています。日本のグラップリング界には、各ステークホルダーをつなぐプラットフォームのようなことをしている人が全くいません。つまりビジネス的な役回りをする人が、業界に必要です。そこで僕自身が、そういう役回りをするのも有りだなと考えています。たとえばプライベートレッスンの予約ができるような、グラップリング版ホットペッパーを創るとか」

――それは面白そうですね! 他にも米国での取材、練習、試合を通じて見えてきたものはありますか。

「まず米国と日本で、グラップリング界の構造自体が全く違う、というわけではないと思ったんです。もともと僕の中にも、日本と米国のグラップリングは全く違う世界だという気持ちがありましたが、米国に倣って日本も伸ばしていけばいいと思うところはあります。ただ、人口も業界の規模も違い、それなりに成熟していっている米国には、技術を売り買いするプラットフォームがありますよね。たとえばBJJ FANATICSとか。これから日本のグラップリング界が整備していかないといけない点などが、自分の中でもクリアになりました」

――BJJ FANATICSは、有名選手がオンラインで技術動画を販売するプラットフォームですよね。米国では、そのような仕組みが普及しているのですか。

「そう思います。たとえば今回ニューヨークで、ヘンゾ・グレイシーの道場のヘッドインストラクターと『英語圏の人なら、英語の技術動画のプラットフォームを観られるから良いですよね』という話をしていた時、こんなエピソードを教えてくれたんです。

昔、ダナハーの大ファンでヨーロッパの片田舎に住んでいる方が、出稽古に来た時のことです。そんな片田舎では柔術の練習相手が誰もいない。でもダナハーが大好きだから、動画でダナハーのサドルシステムを学んで、友達を相手に打ち込みをし続けていたそうなんです。ダナハーの言っていることは、動画から全てインプットしている。でも練習相手がいないから、旅行がてらグラップリングの本場に来てみた、と。それでダナハーのアカデミーに行き、ゲイリー・トノンとスパーをしてみたら、トノンと互角の実力を持っていたそうです(笑)」

――えっ!? 動画を見てゲイリー・トノンと互角レベルにまで……。

「やはり現代のグラップリングは情報戦だな、と思いました。これは極端な例ですけど、すごく面白い話ですよね。勤勉な人が勤勉に学び、インプットとアウトプットを繰り返していたら、理論上はそこまで伸びるわけです。あくまで理論上ではありますけど。

たとえ、そこまでのお話ではなくても、一部の最先端を行っている人たちがどんどん先に行って、地方は取り残されているという状況が、日本は多いので。今でいうとBJJ Laboとか、BJJ FANATICSの日本版のようなものが立ち上がっていて、精力的にやってくれています。それはすごく良い動きだなと思っています。そういったプラットフォームの規模がもっと大きくなり、いろんな技術が末端の人まで広まれば、業界の底辺拡大にも繋がりますよね。もちろん動画を販売しているトップ選手にもお金が入るシステムですから、日本の柔術&グラップリング界にも良い影響を及ぼすと思います」

――なるほど。技術面についてはいかがですか。

「おそらくコレはまだ米国の人たちも言語化できていないのだろうな、と思ったものがあります。実は僕が最先端を行っているんじゃないか、と思うものなんですけど(笑)」

――ぜひお願いします。

「レッグロックが流行り始めたじゃないですか。エディ・カミングスとか、ダナハー一派のゲイリー・トノンたちがサドルロックなどを使い始めて、内ヒールをバンバン極める時代がありました。これは宣伝っぽくなって申し訳ないんですけど……僕は先日『レッグロック4.0』という教則DVDを出したんです。実はレッグロックもアップデートされ続けていて、今はバージョン4.0まで来ているという意味なんですよ」

<この項、続く


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