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【AJJC2016】フェザー級優勝、杉江アマゾン大輔<02> 「まだ頑張ってムンジアルに出たい」

sugie-amazon-daisuke【写真】頭に白いモノがチラホラと見えるようなった杉江。優勝を決めた直後は空を凝視していた(C)MMAPLANET

10&11日(土・日)に東京都足立区の東京武道館で開催された国際ブラジリアン柔術連盟=IBJJF主催のアジア柔術選手権2016(Asian Jiu-Jitsu Championship 2016)のフェザー級で優勝した杉江アマゾン大輔インタビュー後編。

35歳で新階級、その基盤を作った修斗での日々。戦い続けることが杉江にとって柔術家としての生き方だという。

<杉江アマゾン大輔インタビューPart.01はコチラから>


――脱力……格闘技において階級を落とす場合、上の階級の体格やパワーをアドバンテージとすることが多いと思います。

「今の僕は、それをアドバンテージとしていないですね。軽量級や、よりテクニカルな展開を求められます。僕も18歳から柔術をやっていて、今35歳。その間にアジア選手権は4回優勝しているんだから、自分でも『よく頑張っているなぁ』と思いますよ」

――いつの間にかアマゾン選手も35歳になって、白髪も目立つようになっていますね。

「白髪混じりでムンジアル。めっちゃストイックですよ(笑)。でも35歳になって思うのは、修斗世代って強いですよね」

――修斗世代?

「あの頃の修斗を経験した世代です。たとえば川尻(達也)さんは今もUFCで戦っているし、今日は宇野(薫)さんも試合に出ていたじゃないですか」

――宇野選手は41歳にして柔術に初挑戦、紫帯フェザー級で3位でした。

「青木(真也)もそうですけど、修斗世代はみんな体が丈夫なんですよね。僕もまだ頑張ってムンジアルに出たいと思っています」

――今回のアジア選手権優勝で、これから2年のムンジアルの出場権を獲得しました。

「来年も出ますよ。道場をどうしようかな、という部分はありますけど……特に来年は細川と2人ともムンジアルに出ることになったらどうしようか。考えるのはそこだけですね。今年は細川に迷惑をかけてしまったんですけど、そこは僕のワガママを聞いてくれて」

――カルペディエム・ホープのインストラクターは現在、アマゾン選手と細川選手の2人のみ。両者揃ってムンジアルに出場すれば、道場で指導員がいなくなるということで、細川選手が今年のムンジアルを断念したという経緯もあります。

「はい。でも、そこはその時になったら考えようかな、とは思っていますけどね。ムンジアルっていつまでも目指せるものではないし、柔術家として生きるなら、王道を突き進みたい、という気持ちがあるので」

――王道、つまり競技者として世界を目指すということですか。

「それと、自分は試合に出たくても出られないという時期を知っているから――。今は出られる環境にいるわけじゃないですか。そこで試合に出ないっていう選択肢がない。別に大会って、出たくなければ出なくていいんですよ」

――そうですね。試合に出るも出ないも、競技者を続けるも辞めるも選手の自由です。

「だけど、僕はやっぱり勝負が好きなんです。常に『負けるのかな?』っていう不安と、『負けてもいいかな』っていう気持ちを横に置きながら、目の前のプレッシャーから逃げない。そういう生き方を選ぼうと思いました」

――……。

「僕たちのやっていることって、いかに名前を残すかだと思うんです。柔術家として名前を残していきたい、という気持ちは強く持っています。そのなかで、こういうアジア選手権で勝つというのは、僕の生き方の中では大切なんですよ。柔術家としての生き方の中では」

――柔術家としての生き方、ですか。

「柔術家として生きていくために、試合に出るのって凄く大切なことだと思うんです。だからムンジアルには出ますよ。でも、しばらくは休みたい……もう満身創痍です。ムンジアル、全日本マスターズ、全日本選手権、ONEグラップリング、ワールドマスターズ、アジア選手権と試合が続きましたからね」

――6月のムンジアルから毎月、何かしらの大会に出場していました。

「とにかく実践経験を積みたかったんです。ずっとタフファイトをやっていなかったので。ずっとライト級でやってきて、フェザー級では僕は新人ですからね。そんな今の自分がどれだけ強いのかも確かめたかったし、やっぱり試合をしないと強くなれないので。特に今回のような接戦をモノにするのは、凄く良い経験値になりますし」

――ではもう3カ月前になりますが、2009年以来7年ぶりの出場となった今年のムンジアは、1回戦でファビオ・カロイに敗れました。

「できれば1回戦は勝ちたかったけど、現実的に考えて難しいかなぁ、というのはありました。実際に肌で触れてみて、『今の外国人選手はこれぐらいの実力なのか。勝てないわな』っていう。今さら言うのも何なんですけど、コンディションはあまり良くなかったんですよね。試合前の練習で、指を負傷してしまって」

――それではグリップが弱くなってしまったのではないですか。

「握れなかったですね。でもせっかくポイントがあるのでムンジアルには出たかったし、肌で感じないと分からないことがあるので。それと、負けないと分からないこともありますから」

――その中で柔術家としての生き方が見つかったのでしょうか。

「はい、やっぱり戦って証明しなければいけないことがあるじゃないですか。柔術家としての生き方もそうだし、子供に自分の戦いを見せたいんですよ。娘のこともあったし……。僕の中では、戦うっていうことが一番大切なものなんです」

――今日の戦いは、ご家族はインターネットを通じてご自宅で観ているのですか。

「見てくれています。でも決勝戦は画面が止まってしまったみたいで……(苦笑)」

――えぇーーっ。

「でも、そうやって家族が見てくれているのは嬉しいです。……柔術家ってどうしても、周りから遊んでいるように見られることもあるじゃないですか」

――「好きなことをやっているから云々」という意見はありますね。それは柔術家に限らず、格闘界全般でそう言われることはあります。

「僕たちは毎回毎回逃げずに、こういうシリアスな戦いをやっているということは、家族に見てほしいんです。試合では勝つこともあるし負けることもあるけど、この日のためにやってきたことは、自信を持って誇れることだから」

――そのとおりですね。

「特にそれが今回のように、結果で証明されたのは、凄く嬉しいです。逆に試合が無いと、なかなか頑張ることもないかもしれないし(苦笑)。この日のためだけに、自分を作り上げる。それって凄く尊いことだと思うし、そんな自分たちの想いに賛同してくれる人たちがたくさんいる。だから試合に出て、勝ちます。これからも」

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