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【Fighter’s Diary con on that day】「試合がない日々」を生きる佐藤天の声 on 2015年3月10日

Takashi-Sato【写真】佐藤天、MMAPLANETインタビュー初登場のインタビュアーは中村拓己氏だっ!!(C)ABEMA & TAKUMI NAKAMURA

全世界を巻き込む新型コロナウィルス感染拡大の影響は当然のように日本の格闘家たちの人生にも影響が出ている。試合がない、大会が開かれない、練習場所の確保も困難だ。

そんな今、格闘技を愛する全ての人へ──ABEMA格闘CH が公式YouTubeチャンネルで Fighter’s Diary Ep.02が19日(日)より、アップされている。

第2回でクローズアップされた格闘家はKRAZY BEE軍団(朴光哲、矢地祐介、田村一聖、あい)、佐藤天、浅倉カンナ、北岡悟、堀江圭功(と高阪剛)の9人だ。

Fighter'sDiaryFighter’s Diaryは3週に渡り、3つのエピソードで総勢16人の格闘家たちの声をYouTubeで伝え、26日(日)午後7時より、ABEMA格闘CHにて Fighter’s Diary完全版が放送される。

そんなFighter’s Diaryでは「試合がない日々」を格闘家たちはどう生きるのか? ──という今の声を集めた。MMAPLANETでは、タイアップ企画ならぬボーディング企画を提案。MMAファイター達が今を発せられるようになった原点を探る上で、あの日の彼らや彼女達の声=on that dayとして、MMAPLANETインタビュー初登場時の声を紹介したい。

題してFighter’s Diary con on that day、第11回は2015年3月12日公開、3月10日に取材が行われた──キャリア7戦目=バイロン・フィリップス戦を5日後に控えた──佐藤天のあの日の声をお届けしよう。


<リードを含めた完全版はコチラから>

――試合が目前まで迫ってきましたが、仕上がりは順調ですか。

「月曜日までしっかりと追い込んで練習できたので、仕上がりはいいと思います」

――今大会ではカナダのバイロン・フィリップスと対戦、国際戦に挑むことになりました。

「国際戦は2試合目の時にパンクラスでジョー・プラクター選手と対戦しています」

――それから経験を積んでフィリップスを迎え撃つことになったわけですが、フィリップスにはどんな印象を持っていますか。

「元々バスケをやっていて、長身でバネがある選手かなと思います。プロフィールでは189センチだったので、自分より6~7センチは大きい相手ですね」

――佐藤選手は自分より背が大きい相手と戦ったことはありますか。

「1~2㎝はありましたけど、ここまで大きい相手は初めてです」

――なかなか普段の練習で190㎝近い相手と手を合わせることはないですよね。

「そうですね。そこはちょっと未知数な部分はあるんですけど…逆に中に入ってしまえばやりやすいところもあると思います」

――まずはリーチをどう攻略するか。そこがポイントになりそうですね。

「はい。今までは僕がリーチの長さを活かして戦うことが多くて、今回はそれが逆になるので、長南(亮)さんからは色々と対策を指導してもらっています。そこは綿密に、試合映像を見ながら研究してきました」

――佐藤選手は2013年にプロデビューして、ここまで6戦6勝、デビュー戦以外はすべて一本・KOで勝利しています。ここまでのキャリアを振り返っていかがでしたか。

「デビュー戦は判定決着で納得がいかない試合だったのですが、2戦目からは少しずつ練習でやっていることが出せるようになりました。それで一本・KOにつながっているのだと思います」

――それは経験を積んだことが大きいですか。

「大きいですね。デビュー当時は試合中にどう試合を組み立てていけばいいのか分かりませんでしたが、最近は落ち着いて冷静に戦えるようになってきました」

――過去の試合で自分で納得できた試合はありますか。

「う~ん…直近の試合ですが大晦日の試合(×秀虎、1R4分21秒、TKO勝利)は練習してきたことを頭で考えながら、相手の動きを見て戦えたと思います。それまでも練習してきた技でフィニッシュすることはあったのですが、すぐに試合が終わっちゃったり、自分の動きを確認しながら戦えた試合は少ないんですよね。そういう意味では前回の秀虎戦が一番やりたいことが出来た試合かなと思います」

――打撃で削って試合を作ることが佐藤選手にとっては理想形ですか。

「立ちにおいては、そうですね。自分から先に先にプレッシャーをかけて攻めていくという。まだ試合で寝技になる展開が少ないのですが、立ち技と同じようにトップをキープして相手を削ってフィニッシュすることが理想です」

――TRIBEはウェルター級の選手が多いので、佐藤選手にとっては最高の環境ですね。

「はい。白井(祐矢)さんや出稽古で来ている青木(真也)さんなど、すごいメンバーが集まっていますし、練習環境に関してはTRIBE TOKYO M.M.Aが日本一だと思います」

――先ほど青木選手が「首を絞められてタップしたあとにふて腐れるのはやめてください」と言っていましたよ(笑)。

「ああ……僕、結構熱くなるタイプなんで、やられたらやり返しちゃうんですよね。それでよく青木さんに注意されます(苦笑)。でもそういう熱くなることは全部が全部悪いわけじゃないし、そこは意地を張ってもいいところだと思います。周りは強い選手たちばかりですが、同じマットに立っている以上はやられたら悔しいし…熱くなりますよね? でもそれが悪いとは思わないです」

――佐藤選手は柔道出身とのことですが、どれくらいの柔道歴をお持ちですか。

「10歳から柔道を始めて、大学を卒業するまで続けていました」

――柔道を始めたきっかけは何だったのですか。

「うちの父親が柔道をやっていて、テレビで柔道を見ていたり、日常会話にも柔道のことがよく出て来ていたんですよね。その影響で小さい頃から自然と柔道に興味を持って、町道場に連れて行ってもらいました。中学時代は柔道のために陸上部にも入っていたのですが、それ以外はずっと柔道漬けの毎日でしたね」

――確かKRAZY BEEの矢地祐介選手とは高校時代の同級生ですね。

「はい。専修大学の附属高校に通っていて、矢地と宮川峻(狸瑪猿シュン、修斗やTTFチャレンジで活躍)が同級生です」

――同じクラスだったのですか。

「宮川とは柔道部で一緒で、宮川と矢地が同じクラスだったんですよ。みんな格闘技好きということで意気投合して、それからの付き合いです」

――当時、矢地選手はすでにKILLER BEE(現KRAZY BEE)でMMAの練習を始めていますよね。

「はい。宮川も大学に入ってからリバーサルジム東京に通い始めて。あとは中村K太郎さんも先輩なんですよね。そうやって自分の周りに総合をやる人間が多くて、自分もずっと総合をやりたいと思いながら柔道を続けていました」

――なるほど。ただし佐藤選手は専修大学に進学して柔道を続けることになります。

「東京都の大会で無差別や階級別でベスト8に入るくらいの実績だったのですが、大学から声がかかって、最終的に大学で4年間柔道をやることになりました」

――柔道をやりながらも心はMMAに傾いていましたか。

「そうですね。でもしっかり柔道を続けていれば、総合をやるための下地になると思って練習を続けていました」

――MMAにはいつから興味があったのでしょうか。

「最初は小学生の頃にK-1を見ていて、中学から総合という感じですね。当時は柔道の選手が活躍していて、見ていてこれだけ面白いんだから、やったら絶対面白いだろうと思っていました。他にやりたいこともなかったし、総合をやることしか考えていなかったですね」

――ただし、ご家族がMMAをやることに反対していたという話を聞いたことがあります。

「大学では寮生活していて、たまに2週間くらい実家に帰ることがあるんです。その時に格闘技の試合をずっと見ていたり、専門誌ばっかり読んでいたり…。父親がそういう僕を見て『(総合)格闘技をやるんじゃないだろうな?』とか『ちゃんと就職しろよ』とけん制してくるわけです。でも僕は僕でそれを上手くかわしてたんですけど(笑)」

――それで大学を卒業してMMAを始めることになる、と。

「いや、大学4年の時に単位が一つ足りずに留年しちゃって……それで退寮した年の5月にTRIBEに入門して、10月にプロデビューして、という流れです。さすがに父親も自分がプロデビューするとなったら、何も言わなくなったし、ある意味、留年している間にデビュー出来てよかったと思います」

――でもそれだけMMAをやることに情熱があったわけですね。

「はい。周りには柔道を活かして就職する人間もいましたけど、自分は総合をやること以外は考えていませんでした」

――数あるジムの中でTRIBEを選んだ理由は何ですか。

「どのジムに入ろうか悩んでいた時に、K太郎先輩から『大きい階級だったらTRIBEがいいよ』と薦められて。あとは大学時代のコーチが高阪(剛)先輩と面識があったので、アライアンスにも練習に行かせてもらったりもして。それで最終的にTRIBEに入ろうと思いました」

――入門して約5カ月後にプロデビューすることになる佐藤選手ですが、すぐプロ練習に参加したのですか。

「そうですね。プロ志望で入ったことは伝えてあって、最初は一般クラスに参加していたのですが、長南さんから『次からプロ練に来てもいいよ』と言われて、ジムに入って2週目くらいからプロ練に参加させてもらうようになりました」

――身体のサイズが大きくて柔道のベースがあったにせよ、早々の抜擢ですね。

「もっと一般クラスで実績を積んで、プロデビューしてからプロ練に参加できると思っていたので、声をかけてもらった時はびっくりしました。少し前まで一般会員さんたちとワンツーを教わっていたのに、いきなり白井さんや青木さんがいるところに放り込まれたので、最初はむちゃくちゃ緊張しました(苦笑)」

――TRIBEのプロ練はそうそうたるメンバーが集まっていて、それだけ練習もハードだと思います。心が折れそうになることはなかったですか。

「(きっぱりと)それはなかったです。高校時代の監督にずっと言われていたのが『同じ土俵に立ったら強い・弱いは関係ない』と。自分はその教えをずっと守っていて、相手が強いからって引くのが一番かっこ悪いじゃないですか。だからどれだけやられてもしがみついて練習にくらいついていきました」

――まさにその成果が短期間でのプロデビューにつながったわけですね。今はパンクラスを主戦場にしている佐藤選手ですが、今年はどんな目標を持って戦っていこうと思っていますか。

「今はパンクラスをメインに試合を組んでもらっていて、今年もしくは来年にはベルトを獲りたいですね。それこそ矢地はPXCのタイトル挑戦が決まって、堀口(恭司)選手はUFCのタイトルマッチじゃないですか。田中(路教)選手もUFCに出ているし。そういう同世代の選手の活躍は刺激になりますね」

――パンクラスのウェルター級はレッツ豪太選手がチャンピオンにいて村山暁洋、有己空(近藤有己が改名)、鈴木槙吾選手らがランキングにいて、4月大会からは外国人選手たちも続々と参戦します。やりがいはありますか。

「正直、練習で白井さんや青木さんに稽古をつけてもらっているので、しっかり練習でやったことを試合で出せば、トップ選手にも太刀打ちできるし、勝つチャンスもあると思います。それこそ試合になったら強い・弱いは関係なくやるしかないわけで。僕は決して天才型の選手じゃないけど、しっかり練習で技術と気持ちを作って強い相手と戦っていきたいと思います」

――このインタビューをきっかけに佐藤選手の試合に注目するファンの人たちもいると思います。これから自分のどういった部分をアピールしていきたいですか。

「2戦目以降はKO・一本で試合を終わらせているので、これからもそこにはこだわっていきたいですね。相手のレベルが上がれば、簡単にフィニッシュ出来ないと思いますが、フィニッシュして試合を終わらせる気持ちを持って戦い続けたいと思います」

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