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【The Fight Must Go On】DVDチラ見─01─2003年5月24日、ヘナーが優勝ノータイム&12P先取制組技大会

So Cal PRO-AM【写真】2003年から2007年頃のグラップリングの潮流は時間無制限&ポイント逃げ切りルールだった(C) MMAPLANET

国内外のMMA大会の中止及び延期、さらには格闘技ジムの休館など、停滞ムードの真っただ中です。個人的にも大会の延期と中止のニュースばかりを書かざるをえない時期だからこそ、目まぐるしい日々の出来事、情報が氾濫する通常のMMA界では発することができなかったMMAに纏わる色々なコトを発信していければと思います。こんな時だからこそ The Fight Must Go On──第5弾は懐かしくもあり、今や秘蔵っぽさタップリのDVD紹介シリーズ、その第1回として2003年5月24日にカリフォルニア州トーランスにあった(当時の)グレイシーアカデミーで開催された Southern California PRO-AM InvitationalのDVDを紹介したい。


今や道着柔術とは別物として、ノーギグラップリングの世界観は確立されている。ノーギが柔術の一部であるという意見に対し、別物だと柔術家自身が口にし始めたのは、ノーギ独特の技術が生まれ、かつカレッジレスリングとの融合が始まった頃からだった。

2005年頃のカリフォルニアはツイスターやラバーガードのエディ流柔術=10th Planet柔術、エディよりもさらにレスリングを融合させていたハビエル・バスケス、また従来の護身やMMAを考慮した柔術の理論から、より競技ルールに則したジェフ・グローバーに代表されるディープハーフの一大ブームなど、道着とノーギ、柔術とMMAの分離がすでに起こっていた。

このトーナメントはさらに2年ほど時代を遡り、エディが三角絞めでホイラー・グレイシーを破った1週間後に、ほぼ世界に知られることなく開かれた大会だ。この時代の大きな特徴は、今では指導に専念するエリオ・グレイシー直系のヒーロン&ヘナーの実戦出場期に当たること。

Gracie彼らは自らの柔術……本家本元のグレイシー柔術のアップグレードを負けられない実戦を経験することで果たしていた。そんな時期にグレイシー柔術の本拠地で、無観客で開催された同トーナメントはヘビー級とライト級の2階級で行われ、それぞれに8人が参加、最後に両階級を勝ち抜いた者同士がファイナルを戦うという形式が取られていた。

ただし体重や大会進行に関しては、ビデオを見る限りは細部まで知りえることは不可能で、敗者復活なのか、完全に順位を決定するためなのか敗れた選手の再登場が頻繁に見られる。またルールは時間無制限、決着は一本かIBJJF柔術と同じポイントで12P先取というモノ。

ライト級は後のPRIDEオーディション合格者のタイロン・グローバーが優勝、アンディ・ウォンをペルヴィアンネクタイで下しているが、当時はそのような名称があることも知られていなかった。またこの階級には今ではベラトールからUFCの解説者として活躍しているジミー・スミスが補欠ながら負傷欠場の代役として途中から本戦出場を果たし、ジェラルド・ストレベンド&ドリュー・フィケットに勝利し2勝1敗と結果を残している。

ヘビー級はホリオンの嫡男ヘナーが、初戦でなぜかヘビー級出場のジョー・スティーブンソンを20分以上かけて外掛けストレートフットロックで破り、2回戦ではパン&ムンジアル王者のカッシオ・ヴェルネックを相手に場外際で同じくアキレス腱へ。カッシオが1度、太腿を触れたことで一本勝ちを決めた。

この2試合は道着の上だけを着用していたヘナーは、続くジェイソン・ミラー戦では上下道着の身にまとって試合に臨んでいた。そして、クローズドガードからラペラを使った絞めでタップを奪い、優勝を果たしている。敗れたメイハムは道着着用についてしっかりと嫌味を言い、会場を後にした。

この後ヘナーはライト級優勝のグローバーも外掛けストレートフットロックで下し完全優勝。スーパーファイトに出場したヒーロンも、上下道着着用で戦いバックマウントから腕十字に移行し一本勝ちしている。

ノーギかと思われた大会ながら道着着用で勝つなど、自らの庭でしっかりとヘナーが勝利したトーナメントであったが、スティーブンスがクリンチからカニ挟みからヒールを極め、他にもがぶってからのギロチンなどスクランブル&サブミッションという──昨今のグラップリングに通じる技術や動きが、既に見られているのも改めてDVDを見直して驚かされた。当時はこの動きが後の主流になるとは予想だにしていなかったからだ。

Keiまた会場にはホリオン&ハレック親子、ジョー・ルイス、エディ・ブラボー、ジャンジャック・マチャド、タカ・クノウらの姿が確認されただけでなく、今や名古屋で日沖発とstArt Japan MMA BJJフィットネスを主宰する前田桂氏が1階のスムージー・バーに臨時で作れたスタンドでブリトーを販売しているシーンもDVDには収められている。

古き良き南カリフォルニア柔術が堪能できるDVD──、DISC01が2時間40分、DISC02が1時間1分の超大作だ。

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