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【Special】月刊、青木真也のこの一番:1月─その参─齋藤曜×佐藤将光

Saito vs Sato【写真】世界王者が第4試合に出場し、ノンタイトル戦で判定負け。齋藤は1月のランキングで世界2位、環太平洋3位に躍進した(C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ1月の一戦=その参は1月28日、プロ修斗公式戦から齋藤曜×佐藤将光戦を語らおう。


──2018年度1月の青木真也が選ぶ、この一番。3試合目はどの試合になるでしょうか。

01「ギロチン……齋藤曜と佐藤将光の試合ですね。齋藤曜の独創性に感動してしまいました。下になってから、上を取る。今のMMAで一度下になってから上を取るという発想が……自分で作り込んでいる発想で。そこに一番乗れましたね。

02彼は強くなろうとして、色々なことを工夫している。そこに乗れたんです。素晴らしい試合だったと思います。ケージコントロールは副産物であそこまで持っていければ、それはできるだろうと」

03──佐藤選手の打撃の圧力に組んでテイクダウンという風にはグラウンドに持ち込めないなかで、一度ガードを自らの組みの形を作り上を取っていった。

04「頑張りが伝わる試合。頑張ると独創性が伝わる試合だと思います。彼が生きてきたなかで、そして生きていくなかでベストバウトじゃないでしょうか。失礼だけど、これを越えられるモノを作れることはないと思います。それだけの試合でした」

05──この一戦は言ってみれば青木選手がabemaTVの冠番組である月間青木賞のなかで唱えていたミスマッチメイクの類の試合だったと思います。佐藤選手寄りの。

「ミスマッチメイクだし、どっちに勝たせたいのかが透けて見える試合でした。と同時に、佐藤選手は修斗の世界チャンピオンで去年はフル活動して活躍し続けた。その選手にもうちょっとね……とも感じましたよね」

──勝負なのでMMAファイターは勝つしかないのでしょうが……村田一着選手に敗れた猿丸ジュンジ選手、齋藤選手に負けた佐藤選手、星野大介選手に判定勝ちをした松本光史選手……力の差、あるいは格下と思われる相手と戦う時は集中力に違いがあるのでしょうか。

「いや、可哀想だよ。ああいう試合は。僕もそういう試合が多かった方なので」

──ONEだとアルナウド・ルポン戦、IGFの山本勇気戦やTOSHI戦、DEEPのヨックタイ・シスオー戦などがそれに当たるかと思われます。

「辛いんですよ。僕も負けたらどうしようって凄く思っていたし。いや、猿丸選手とか本当に辛い試合だったと思います。負けたら、どうしようっていう試合はしんどいんです……戦う方は。そりゃあ、力の差があるでしょう──どうせ青木が勝つんでしょと思われている試合の方が怖いですよ。

僕は佐藤将光が負けたからってくさすつもりはないし、猿丸ジュンジは本当に辛かったと思います。でもね、これはやった人間しか分からないことだから……『やってないと分からないでしょ?』となるから、言っちゃいけないことなんです。実力差のあるマッチメイクは辛いとはいっても、やっぱり戦ったことがある者にしか分からないから」

──興行の流れと選手に試合機会を与えるという部分の落としどころで致し方ないのかもしれないですが、一つのイベントで3試合そういうファイトが続くというのはあまりないです。こうなると目に見えない、精神的な部分で何かが介在していると考えてしまいました。

「いや、それは勝つべくして勝つという試合が多いからで、この間の修斗は逆を打った試合が2つも出た。だから、そういう印象を与えることになったんだと思います。ONEでルポンと戦った時、レアンドロ・イッサがキム・スーチョルにTKO負け、ゾロ(ソロパベル・モレイラ)が朴(光哲)さんにTKO負け。

イヴォルブのアップアップ崩れが来た時、僕は『死んだっ』って思いましたよ……。イッサとゾロと僕の勝たせだったのが、先の2試合が崩れた。『マジか?』って。凄く怖かったです。それでもイッサもゾロのONEの世界戦だった。

06だから猿丸選手とか……ねぇ。そんな背景があったとしても、佐藤選手と齋藤曜の試合は齋藤曜が素晴らしかった。彼はケージレスリングが好きで、本当に格闘技が好きなんだなって。

07で、そうやって頑張っている選手ですら、あの試合がなかったことにされるから」

──番狂わせを起こした側の人間には、次の試合でも光が当たらないというのは、興行側の理論で少なくない事例です。

「そうなるので、僕は齋藤曜に触れたい。彼の勝利が無しにされそうで怖い。リターンマッチありますかね? あれだけ良い試合をしたのに。ギロチンは露骨に、この試合がなかったことにされそうだから、僕ができる限りの範囲で火をつけたいと思いました。

彼が今後、これ以上の試合ができるという確証はないんです。それだけの試合をなかったことにされてしまうリスクがある。それは避けたい。リターンマッチや祖根寿麻選手に挑戦とか、何か与えてあげてほしいです」

──ランキング制ですし、修斗だからこそあって然りだとも思います。

「その修斗っぽいっていうのが、絵に描いた餅が逆さまになるという状況。サステインのセンスと反対をいく。これはもう伝統だなあと。それもまた良い味を出していますよね」

──この月刊、青木真也の一番で取り上げた若い選手が月間青木賞の受賞者となるところですが、20代、できれば20代前半という枠組みを設けたところ1月から拾い上げた選手が20代ではなかったです。

「ホントね。コレ、どうしようか?」

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