【RFC40】フーヘンフウと対戦、佐々木信治─01─「地方の子と同じ環境でどれだけ結果を残せるのか」
【写真】KIDSクラスの親御さんたちと。この道場に佐々木が格闘技を続ける理由、そして上を目指す理由が集約しているといっても過言でない(C)MMAPLANET
15日(土・現地時間)、韓国ソウルのチャンチュン体育館で開催されるROAD FC 40において、ライト級100万ドルトーナメント本戦が開幕する。
同大会でアマチュシン・フーヘンフウと対戦する佐々木信治をAmeba TVが制作する格闘家の1日を追うドキュメンタリー番組=ONE DAYが密着した。
福山という地方都市、プロ格闘技未開の土地でフジメグこと、恵(旧姓・藤井)夫人と二人三脚でジム運営を切り盛りし、アジア最大規模のMMAイベントで戦う佐々木。
その彼に今回の試合、福山で格闘技を続ける拘り、そして恵夫人の存在について尋ねた。
──7月15日にいよいよライト級トーナメント本戦が始まり、アマチュシン・フーヘンフウと戦います。今の調子はいかがですか。
「この2カ月ほど教え子の試合が続いて、遠征が多くスケジュールがタイトだったんです。だからコンディション作りが難しいと思っていたのですが、かなり体調は良いですね」
──覇彌斗選手のプロ修斗公式戦出場以外にも、生徒さんの試合が続いたのですか。
「ハイ、アマチュア修斗の地方大会も始まったので、2カ月ほど週末はドライブ続きでした。オフが取れなかったのですが、それこそ教え子や家族も手伝ってくれて息抜きもできました」
──1日、ウィークデーに休日を取ることはないのですか。
「まるまる1日はないです。でも、ジムに来ない方が自分はストレスが溜まってしまうので(笑)。もう習慣になっていますしね」
──でも夜のドライブは厳しいですね。
「アレはシンドイですね。キッズの大会は親御さんが連れて行ってくれたりしますけど、それ以外はやはり自分が責任をもって送り届け、家に帰したいですからね。それにただ車に乗っているより、自分で運転している方が楽なんですよ(笑)。疲れを抜くことには気を配っていたので、順調に仕上げることができたかと思います」
──アマチュシン・フーヘンフウですが、試合を見る限り世界トップというファイターではないのですが、戦い辛い相手のように感じました。
「もう、全く同じ感覚です。上手くはないですけど、あの体だし、モンゴル人特有の気持ちの強さと力がある。そこが一番厄介ですよね。下石(康太)君と戦っているので、彼と中蔵(隆志)さんにアドバイスを貰ったら案の定、気持ちとフィジカルが強くて大変だったということでした(笑)。
技の怖さはないですけど、攻めても引かないようなのでタフな試合になりそうですね。腹を括らないといけないです」
──どれだけ自分のペースで戦っていても、あのフックを一発もらうと形成逆転が考えられます。
「嫌ですね。チョコチョコやってくる選手も嫌ですけど、一発のある豪腕は……自分も貰いやすい方なんで。細心の注意を払っていないといけないです。鼻血を流そうが、技がガッチリと極まろうが、心は折れないと下石君も言っていましたし。
ただリーチが短いのと、外からの攻撃しかないので自分の方が背が高いし、中から攻めたいです。柔道出身だと聞いているのですが、足を掴んでのテイクダウンには弱い。リーチを生かして、遠間から打って足の方に組んで寝かせてしまいたいです。寝かせると怖くはないですから。
振り回しを本当に警戒しないといけないですけど、寝技だと自分が下になってもパスされたり、パウンドアウトされることはない。だからスタンドのフック一発に気を付けて、自分の距離と自分の組みの形に持っていければと思います」
──ダメージがない時は引き込んでも良いぐらい、寝技だと問題なさそうですね。
「だから一発を貰わないことですね。ダメージがあると、あのパウンドも危険ですし。でも、やはり気持ちですね。ホドリゴ・カポラルと戦った時もマウントから殴られているので、心が折れていなかったですしね。あれだけ上手くないということは、それだけノビシロもある。この間に強くなっているはずだし、戦績とかこれまでの試合内容よりもずっと警戒しています」
──そのなかでBURSTで練習し続ける。打撃、組み、寝技、フィジカルという個々の局面でのコーチ、練習パートナーという面では東京ばかりか、大阪や名古屋のジムともやはり違います。
「始めたばかりの頃は、そういう部分で都会のジムが羨ましかったです。でも、下の人間が往く道は自分のような人間がいないと切り開くことはできないですから。
自分が東京、名古屋や大阪に行ってしまっていたら、格闘技はここで絶対に根付かない。だから、そういうことに自分の価値を見いだすようになったんです。
トップになることから逃げたということではなくて、道場をやりながらアマチュア選手から育てていると、色んな選手の夢をとかを耳にする機会がありあす。それが……僕が格闘技を始めた頃のような熱量で語っているんです。彼らのために道を創りたい。その環境を自分が創ることに拘るようになりました。
こっちでやって行けるところまで行く。技術も自分が吸収して、ここで広めていく。それが自分の遣り甲斐ですね」
──それでも大一番を前にして、短期間でも強度の高い練習をしようという考えはなかったですか。
「う~ん、僕も出稽古に全く行かないわけではないです。ただ今は嫁さんがいてくれるのですが、元々は一人でやっていたので長期に渡って道場を空ける状況にはなかったです。今は1週間とか、嫁さんに言えば大丈夫だと思いますけど……。
う~ん、簡単に言えばここでの練習がベストだと考えています。東京へ行った方が強くなるかも──というのは、常にあったことです。でも、自分はそれができる環境にあっても、同じことを地方の選手が皆できるのかっていえば、それは無理なんです。
そうすると、こっちの子は『佐々木さんは時間を作って出稽古ができるから』ってなるじゃないですか。自分のことだけを考えると、きっと行った方が良いんです。でも、ここで皆との練習で行けるところまで行くということが、僕にとって大切で、そのことに価値を見いだしたんです。
出稽古をして強くなり、結果を残しても彼らにとって追いつける選手ではなくなってしまいます。それは僕の教え子だけでなく九州、四国、山陰地方の選手もそうで。彼らと同じ環境でどれだけ結果を残せるのかが重要なんです」
──そうすることで、地方在住の選手も励みになると。
「一人でやってあそこまでいったと思ってもらえると、ですね。今では地方の若い選手にも指導者もいますし、僕よりもっと上を目指せると思ってくれるだろうし。それは西日本だけの話ではなくて、日本中の地方都市に住んでいる子たちの励みになると思います。
魅津希選手、井上直樹選手のような選手が地方からもっと出てくれば、MMAだけで食っていける地方在住の選手もふえていくでしょうし。そういう風になってほしい……それが出稽古にいかない理由でもあります」
──となれば恵夫人と一緒になれたことは、佐々木選手の格闘技の知識を深めるうえでも本当に良かったですね。
「自分の想いとしては、嫁さんと結婚する前から変わっていないです。でも、一緒になって選手として成長できた。結果を出すことができた。出会う前より、上を目指せたことは本当に感謝しています。出会っていないと、ここまで来られなかったと思うので。より、皆の高い目標になれたと思っています」
──一緒に練習していても、生徒さんから『重心が高くなっている』という注意は受けないですしね(笑)。
「全く言われたことなかったです(笑)。ケツを叩かれることがなかったので。正直、一緒になるまでセコンドすらいない状態でした。ストップウォッチを見て、時間を言ってくれる子がいるだけで。だから、ここ3、4年のことですよね」
──試合結果にその違いが表れている。その結果、佐々木選手自身、ファイターとして恵夫人に対する気後れのようなモノがなくなったような気がします。
「私生活は完全に対等ですが、格闘技の空間では彼女の業績は偉大だし、凄くリスペクトしてきました。今も数字では嫁さんに敵わないですけど、自分がやってきたことに自信が持てるようになってきたというのはあります」
<この項、続く>
■ROAD FC40対戦カード
<Road FC無差別級選手権試合/5分3R+Ex1R>
[王者]マイティー・モー(米国)
[挑戦者]カン・ドングク(韓国)
<ライト級T1回戦/5分3R>
佐々木信治(日本)
アマチュシン・フーヘンフウ(モンゴル)
<ライト級T1回戦/5分3R>
ナム・ウィチョル(韓国)
トム・サントス(ブラジル)
<ライト級T1回戦/5分3R>
ホニ・トーレス(ブラジル)
エルヌール・アガエフ(ロシア)
<ライト級T1回戦/5分3R>
下石康太(日本)
パク・デソン(韓国)
<ライト級T1回戦/5分3R>
ムングントスズ・ナンディンエルデン(モンゴル)
トニーニョ・フリア(ブラジル)
<ライト級T1回戦/5分3R>
キム・チャンヒョン(韓国)
マンスール・ベルナウイ(フランス)
<ライト級T1回戦/5分3R>
シャミール・ザフロフ(ロシア)
レオ・クンツ(米国)
<ライト級T1回戦/5分3R>
バオ・インカン(中国)
レイドン・ロメロ(フィリピン)
<ミドル級/5分3R>
福田力(日本)
キム・フン(韓国)
<女子フライ級/5分2R>
ライカ(日本)
キム・ヘイン(韓国)
<ライト級Tリザーブマッチ/5分2R>
ジョン・ドゥジェ(韓国)
アレクサンダー・メレスコ(ロシア)
<ライト級Tリザーブマッチ/5分2R>
イ・ヒョンソク(韓国)
パク・へジン(韓国)
<ミドル級/5分2R>
イム・ドンファン(英国)
キム・ジフン(韓国)