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【Special】「世界の頂点へ」──BRAVE内弟子プロ養成方法を宮田和幸が語る<03>

Kazuyuki Miyata【写真】指導、そしてスポンサー集めは自身の役目。チケットはジムの会員さんが購入してくれるため、内弟子は練習に専念できる体制は宮田は築いた(C)MMAPLANET

宮田和幸率いるBRAVEには現在、芦田崇宏、鈴木隼人、坂巻魁斗、竿本樹生という4人のプロファイターが、内弟子制度によって給与を受けながらジムでの指導、トレーニングを行っている。

一度は大々的に行った内弟子募集が裏目に出て、トラウマとなった宮田はその後、段階を踏み内弟子を採用するようになった。現在の日本のMMA界に置いて、練習環境の確保という強くなるために一番大切な部分を選手に提供したい。インタビュー第3回は宮田のそんな言葉が続いた。

<宮田和幸インタビューPart.01はコチラから>
<宮田和幸インタビューPart.02はコチラから>

──内弟子募集の失敗で色眼鏡を掛けて鈴木選手のことを見てしまったのですね。

【写真】当初は寝所を与えられ、バイトをしながらキャリアをスタートさせた鈴木隼人(C)MMAPLANET

【写真】当初は寝所を与えられ、バイトをしながらキャリアをスタートさせた鈴木隼人(C)MMAPLANET

「そうですね。芦田と違って、すぐに辞めちゃうと思っていました。なので『ここに住んでも良いけど、バイトをして』って伝えました。雇うようなつもりは全くなかったです。アイツは夕方からバイトをしていたんですけど、性格も良いし、強くもなっていた。なのでバイトを辞めさせて、昼練に参加させて──と段階を踏みました。やはり人となりを見るようになりましたね」

──格闘技の基礎があって性格が良い人の方が、内弟子に採用しやすいというのはありますか。

「即戦力になってくれるなら、すぐに考えます。今の内弟子プロの連中もそうですが、やはり高校までに何か一つでも格闘技をやり込んでいると早いですね。レスリング、打撃、寝技とMMAはやることは3つあり、僕はやはりレスラーが指導しやすいです。自分がやってきたことなので、何が必要なのか分かります。何が足らないかを同じ目線で見ることができます。芦田のようにボクシングをやっていた人間も続けていれば、今のようになれますしね」

──キッズでレスリングを練習していた子が、成長してMMAをやりたいと言ってくるようなケースもありますか。

「今、一人そういう人間がいます。ただし、高校だけは行ってもらいます。芸術家だとか料理人だとか、上に行って世間から認められている職業なら、確固たる意志を持っていれば中学を卒業してその道を究めようと思うのも良いでしょう。でも、格闘技は世間からの見られ方が違います。

格闘技だけで喰って行こうとすると、ケガもあるしリスクが高い。そして世間的にそこまで認められていない。だから、高校だけには進学して、練習をしたいなら通う。そういう風にしています。

もちろん、ご両親と話をして進路のことは決めていますし。今は『やりたい』という人間が来るのを待つ、受け身の状態なのですが、今後は大会に出向いて選手を見て、スカウトも始めようと思っています」

──おお、それだけの基盤をBRAVEでは作っているということですね。

「僕はカルペディエムでレスリングの指導をしていますが、若い子を連れて行って手伝わせると、向こうでの人脈も作ることができるんです。スポンサーって、選手が自分で見つけようと思うと、夜に飲みに行かないといけないような状況がまだあります。

でも、それって選手として弱くなることを意味します。だから、この部分は僕がやって、若い子は強くなることに専念させたい」

──応援団の多い選手はチケットの手売り枚数も増え、スポンサーは高額のチケットを入手してくれるということで試合のチャンスが増えるという現実も今の格闘技界にはあります。

「それでパフォーマンスが落ちると、本末転倒です。選手は練習に専念させてあげたい。自分で飲み歩いて、人脈を広げるケースもあります。それはそれで楽しいでしょう。ただね、練習に支障が出てしまってはどうしようもないから、そういう営業活動は僕の役割です。

やはり内弟子というのは練習に関しても、責任が生じますし。ウチも一人、網膜剥離で内弟子を辞めてしまった人間がいます。だから打撃のガチスパーリングはそれほどやらせなくなりました。やるとしても、絶対にヘッドギアを付けることを原則としています。

しっかりと打撃を学ばせたくてタイ人のコーチを雇ったのですが、その人個人ということではなく、余りMMAにおける戦略を持っていなかった。BRAVEはあくまでもMMAのジムなので、選手に則した打撃の指導が必要だと感じましたね。ずっとミット打ちをやっているような形で。その人に月々、○十万を支払うなら、弟子に払いたいと思ったんです」

──なるほど。

「トレーニング環境としては、だからといってここだけで全て済ませるなんて言うつもりもないです。芦田にはHALEOに行かせていますし、ここで足らないモノは他で練習させています」

【写真】Brave=レスラーではない。ボクシング出身の芦田は、HALEOでフィジカルトレも行っている(C)MMAPLANET

【写真】Brave=レスラーではない。ボクシング出身の芦田は、HALEOでフィジカルトレも行っている(C)MMAPLANET

──日本の現状を考えると、MMAファイターを目指しても、どのように食べて行けるのかという問題を抱えていると思います。

「だからウチでは就職の相談もしますが、結婚するまでにプロファイターとしてある程度のところまで行けよ──というのはあります。そのため……格闘技で食べられるようになるまでの練習環境を与えるための内弟子制度です。チケットもジムの会員さんが買ってくれる。それは日ごろの行いを皆が見ているということです。そしてスポンサーは僕が見つけてきます」

<この項、続く>

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