【AJJC2017】新時代フェザー級─02─。大塚に競り勝った世羅をラペルチョークで下した八巻がアジア王者に
【写真】黒帯初挑戦でアジアの頂点に立った八巻。これでムンジアルへの出場権も獲得したことになる (C)MMAPLANET
8日(金)に始まり、10日(日)に幕を閉じたアジア柔術選手権2017。9日(土)に行われた黒帯の部トーナメントを軽量級中心にレポート。レビュー第4弾はフェザー級、後半戦の模様をお伝えしたい。
2回戦はともに初戦で一本勝ちしている大塚博明とマックス・デビーンの一戦からスタート。下攻めの大塚はスイープで2Pを先取すると、デビーンのガードからの攻撃を防いでパスし5-0に。その後は互いに加点し、8-2となりデビーンの足関節を凌いだ大塚が準決勝へ駒を進めることとなった。
続いて世羅が、シンガポール在住GTチーム・インターナショナルのヴィニシウス・デ・リマと対戦。ボトムを選択したリマに対し、世羅はパスを何度も仕掛けアドバンを重ねる。
やがて枕を作ってリマの上体を固めパスを決めた世羅が3Pを得る。その後も世羅は攻め続け、途中でバックを狙い、落とされそうになりながらも上を取り切り、リマの腕十字も対処。最後まで動き続けて3-0で勝ち切った。
八巻祐は2回戦でジェイク・スコベルと対戦し、2Pを先取されるも5-2で逆転勝ちした。10分強のインターバルで2回戦のなかったマイキー・サンチェスと相対することとなった八巻は、力強い立ちの組み合いを嫌がったサンチェスの引き込みに合わせて、テイクダウン2Pを獲得する。
クローズドから三角、腕十字を得意とするサンチェスだが、八巻はポスチャーが強い。三角狙いは帯掴んで背中を伸ばして解除し、右手が危なかった腕十字も頭を抜いてエスケープ。クローズドを割ってパスガード、残り2分30秒で5-0とした。
ニーインベリーで加算し頭を跨いでキムラ、サイドからアメリカーナと腕を攻める八巻の一方的な展開に。さ懸命に腕関節は凌いだサンチェスだったが、最後は上四方からの絞めでタップを強いられた。
<フェザー級準決勝/10分1R>
世羅智茂(日本)
Def.2-0
大塚博明(日本)
その時は世羅は9-0でリードしておきながら、残り1分で腕十字により一本負けを喫している。その世羅がガードを取った大塚にパスを仕掛けて、いきなり絞めを狙っていく。ここは大塚の凌ぎ、世羅が右足を胴に回した状態でバックをキープする。
その後、大塚の右手を両足でロックしてバックからのクルスフィックスの状態に。大塚が上を取ろうと動くと、世羅は腕十字。立ち上がった大塚が世羅をゆすり落とす。
ここで逆バックマウントのような状態から、自分が下になり足を絡ませていく大塚だが、上を取り切ることはできない。逆にトップを取った世羅に2Pが与えられる。
残り1分半、ハーフマウントの世羅は足を懸命に抜きに掛かり、これを大塚が必死にこらえる。残り30秒を切り、このハーフから尻をずらし、足を取りながら大塚が立ち上がる。
手押し車状態にはなるが、場外には出ない世羅のバックに大塚が飛び乗る。残り10秒を切り、世羅は前転してスイープのポイントを除外し、足をフックされないよう選択。
体をかがめ、自らの右腕で右足を抱えるようにして、大塚の右足を払いのけ侵入を許さなかった世羅が2-0で逃げ切り、大会ベストバウトといえる内容で決勝進出を決めた。
<フェザー級決勝/10分1R>
八巻祐(日本)
Def.4分41秒 by ラペルチョーク
世羅智茂(日本)
準決勝第2試合の終了から20分ほど置かれて始まったファイナル。まずは世羅のダブルレッグをかわした八巻が、奥襟を掴むと大内刈りでテイクダウンポイントを獲得する。ここから座った世羅に足を取らせず、背中をつかせ怒涛のパスを仕掛ける八巻。
世羅も横回転から右足を掴むと、ダブルレッグ&ダックアンダーでバックを伺う、これは場外となり、アドバン止まり、試合はスタンドからの再開となった。
すぐに引き込んだ世羅の煽りにバランスをキープする八巻が、足を捌いてパスへ。背中を向けてスクランブルに持ち込もうとした世羅だが、準決勝までの切れが感じられず動き続けることができずに再びガードを選択する。
世羅のデラヒーバを潰して、ハーフとなった八巻はパス&小手の強さでスクランブルを許さずサイドで抑え込み、パスガードのポイントを追加する。
上四方で抑え、ここからニーインベリーで7-0とした八巻は、ヒップエスケープから足を取りに来た世羅のバックに回り、両足をフック。回転してエスケープを図る世羅の動きに合わせて、ラペルを取り絞めでタップを奪った。
フェザー級新鋭対決は決勝までの道程の違いもあったが、体力の差が売り彫りになったように映った。力強い上攻めと高いフィニッシュ力を誇る新アジア王者の八巻。盤石の強さを見せていた八巻に対して、ガードからスクランブルを仕掛けた世羅の戦法も間違っていなかったはず。ただし、スクランブルはMMAと同じで汗っかき戦法。4試合を短時間で勝ちぬくことを考えると、動き続ける体力を身につけるのと同時に、じっくり勝てる試合を挟むなど、さらなる引き出しが世羅には求められる。それこそが、世界で勝負することにも通じるはずだ。
杉江大輔の不在のフェザー級で、彼を超える可能性を八巻、そして世羅を見せたアジア選手権フェザー級。アジアの頂点を考えると、チェ・ワンキの存在も忘れられないトーナメントとなった。
■AJJC2017黒帯フェザー級の結果
【フェザー級】
優勝 八巻祐 (日本)
準優勝 世羅智茂(日本)
3位 マイケル・サンチェス(グアム)
3位大塚博明(日本)