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【Gladiator022】GP準々決勝でマルガリョと対戦、竹本啓哉「ベルトに挑む見込みは薄いと思っていた」

【写真】そりゃあ彼女さんは嫌がるだろう……。これは自身のヘアースタイル以外は髪型に無頓着なジムの指導者の責任だ (C)SHOJIRO KAMEIKE

11日(日)、大阪府豊中市の176boxで開催されるGLADIATOR022より、8人参加のバンタム級GPがスタート。竹本啓哉がトーナメント初戦でフィリピンのジェイソン・マルガリョと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

元GLADIATORバンタム級王者にとって、再びベルトに絡む戦いのチャンスが訪れた。減量失敗で失ったベルト、ライバル神田T-800周一との関係——そしてグラジのケージで見た外国人選手との国際戦への想いとは。


――いきなり試合とは関係ないお話で恐縮ですが、モヒカン頭になっていますね。確か恋人の女性が爽やかな髪型を薦めてくれていたのでは……。

「あぁ、コレですか。額の左上を負傷してしまって、その部分だけ毛が無くなってしまったんですよ。だから坊主にするかモヒカンにするか悩んで。以前、モヒカンにしていたこともあったので、原点回帰のつもりでモヒカンにしました」

――何の原点回帰ですか(笑)。せっかく恋人が爽やかな竹本選手に変えてくれていたというのに。

「彼女もモヒカンにしたのを見て、『そんなに悪くないね』と言ってくれています」

――……。

「スミマセン、嘘です。すごく嫌そうでした(笑)」

――アハハハ。では試合の話に移ります。まずグラジエイターからバンタム級GP出場のオファーが来た時の気持ちを教えてください。

「今年の4月ぐらいにオファーを頂いて――もう一度ベルトに絡むチャンスを頂けたんだなぁ、と。これは気を引き締めなければいけないなと思いました。もしかしたら、もうベルトに挑む見込みは薄いのかなとも思っていて……」

――というと?

「……やっぱり減量失敗のことがあったからです」

――竹本選手は一度グラジエイターのバンタム級王座に就きながら、2021年9月の2度目の防衛戦で計量をクリアできず、ベルトを剥奪されました。今でもその時のことが、心の中に引っかかっているのでしょうか。

「はい。でもグラジエイターは好きな団体です。ベルトに絡むことができないとしても、何か貢献したいと思って、ずっと戦ってきました」

――ただ、その気持ちで戦うことは辛くはなかったですか。どれだけ試合をすれば、どれだけ勝てば自分は許されるのだろうかと……。

「正直、辛かったです。でも僕は試合をすることが好きですし、頂いた目の前の試合を一つひとつクリアしていくしかない。そうすることでしか、もう一度ベルトに絡むことはできないと思っていたので」

――では今回のオファーが来た時、ホッとしたのではないですか。

「そうですね。でも本当にホッとできるのは――まず計量をクリアしてからです(笑)」

――アハハハ。その冗談が言えるほど、今は心の中も整理されているのですね。一方、ここ最近のMMAの試合は、スプリット判定による決着が続きました。

「僕の決定力不足でした。エダ(塾長こうすけ)さんとの試合(2022年5月)は、組みの展開を理解し合っている者同士の対戦だったので、どうしても展開が止まってしまうところがありました。その前の福島啓太選手との試合(2022年1月、福島が3-0の判定勝ち)から、判定基準について考えていて。『もっとダメージを与えていかないといけない』そう考えるとエダさんとの試合も、僕の決定力不足だったと思います」

――ではエダ戦に続き、2022年6月に笹晋久選手に判定勝ちした試合はいかがですか。

「あの時も危ない試合をしてしまいましたね。1Rの最後でオモプラッタを取りきりたかったです。これは結果論になってしまいますけど、相手のパンチをもらわないようにコントロールしすぎて、自分も取り損ねました。あそこで逃げられると、トップを奪われてしまう。それを避けるために、オモプラッタで取りきるよりもコントロールを優先してしまったんです。あそこでオモプラッタを外すこともできたし、自分からもっと攻めていっても良かったですね」

――2Rにハーフガードから返したり、サブミッションを狙うことも考えていましたか。

「自分の鉄槌が当たっていたんですよ。下から嫌がらせしながらキムラという展開もあったと思います。でもそのまま鉄槌を当て続けることで勝とうと考えました」

――福島戦についていえば、竹本選手がコントロールしきったように感じました。しかしジャッジは組みで劣勢でも打撃を出し続けた福島選手の勝利を支持しています。その判定基準から、ポジションを整えていくより手を出し続けていく、フィニッシュだけを狙い続けるというスタイルに変えようとは考えませんでしたか。

「ハッキリ言って、それはないです。勝つことに徹底したいので。だから試合では、まず自分のポジションを整えてからフィニッシュを狙います。実は今、試合で出してみたいフィニッシュのパターンがいくつかあって。それを出せたら楽しいですよ」

――それはどのような技なのでしょうか。

「MMAの試合で初めてKO勝ちすることができると思います」

――えっ!? サブミッションではないのですか。

「ウフフフ。グラップリングの技術でありながら、KOできるという技です。MMAでは珍しい展開になると思うし、そこから派生した技もたくさんあります。試合を楽しみにしていてください」

――なるほど、それは楽しみです。エダ戦、笹戦の次にコンバット柔術ルールで江木伸成選手にRNCを極めました。あの展開はコンバット柔術だからこそ、だったのでしょうか。

「自分の中ではMMAと同じことをやりました。MMAでも同じ展開でフィニッシュしていたと思います。江木選手との試合前は、すごくレスリングを強化していて。グラウンドに持ち込んでからはバックに回って掌底で削って――MMAと同じ展開でした。自分としてはやりたいことを出せて良かったです」

――一方、3月大会でバンタム級王者の神田T-800周一選手が、モンゴルのテムーレン・アルギルマーにKOされた試合は、どのように感じましたか。

「神田君もテムーレンも、フィジカルが強いタイプじゃないですか。フィジカルが強い者同士が戦って、そこで勝ったテムーレンのフィジカルの強さには驚きました。『そうなるか……』と思ってしまうぐらい、僕にとっては予想外の決着でした」

――竹本選手としては、そういった外国人選手と対戦したいと感じたのでしょうか。

「もちろんです。コロナ禍が明けて今年から、グラジエイターはたくさん外国人選手を呼んでくださっていて。試合を見ていると、これだけ国によってMMAのやり方が違うんだなって興味深いですよね。僕もいろんな国の選手と組んでみたい。今後はどんどん国際戦をやっていきたいです」

――竹本選手自身がモンゴル勢と組んだらどうなるのか。それは考えたりしますか。

「考えてはいなかったですけど……、簡単ではないです。でも単純に、どちらが自分にとって良い形を組むか。まず僕の良い形で組めたら勝てると思います。自分の形をつくることに、どれだけ梃子ずるのかがポイントで。神田君とテムーレンの初戦が、まさにそういう試合でしたよね。テムーレンが自分の形を創って、神田君から削ることができなかった。逆に神田君がやりたいことを、相手にやられてしまって……。もし僕が対戦するとしても、その組み手争いでは体力を使いたくないですね。最初に自分の形で組み、削り続けたいです」

――その神田×テムーレンの再戦が、GP1回戦で行われることは想定していましたか。

「本人がダイレクトリマッチを希望していることは知っていたので、実際にそうなっても驚きはなかったです」

――神田選手ご本人に聞いたところ、ダイレクトリマッチをGP1回戦でやりたくはなかったそうです。しかし、とある理由で気持ちが変わったそうです。なぜだと思いますか。

「えっ、自意識過剰だったらスミマセン。もしかして僕がGPに出るからでしょうか?」

――その通りです。

「うわっ! そう来ましたか。いやぁ……、……、……」

――神田選手曰く「腐れ縁」という、本当に不思議な関係性ですよね。普段はお互いに話すこともないとお聞きしました。

「戦う可能性があるかぎり、仲良く話をすることはないです。連絡を取り合うこともなくて。それはどちらかが引退してからで良いと思っています。でも本当に――何でしょうね。だからって彼のことを嫌いっていうわけじゃないんです。同じ時代で戦っているからなのか。たとえば、同世代の野球選手を応援したりすることがあるじゃないですか。それと同じような感覚かもしれないですね。

自分もGPでモンゴル人選手と対戦して勝ちたいと思っていました。でも今回は神田君に勝ってほしい。自分の次に、神田君のことを応援していますから」

<この項、続く

■視聴方法(予定)
6月11日(日)
午後12時30分~ THE 1 TV YouTubeチャンネル

6月11日(日)
午後12時30分~ THE 1 TV YouTubeチャンネル

■ Gladiator022対戦カード

<バンタム級/5分2R>
フェルナンド(ブラジル)
今村豊(日本)

<バンタム級/5分2R>
秋田良隆(日本)
田中壱季(日本)

<フライ級/5分2R>
古賀珠楠(日本)
廣瀬裕斗(日本)

<フェザー級/5分2R>
桑本征希(日本)
天草ストロンガー四郎(日本)

<バンタム級/5分2R>
藤原克也(日本)
別所竜弥(日本)

<フェザー級/5分2R>
ハンセン玲雄(日本)
徳野一心一馬(日本)

<Gladiatorバンタム級GP1回戦及びGladiatorバンタム級選手権試合/5分3R>
神田T-800周一(日本)
テムーレン・アルギルマー(モンゴル)

<Gladiatorフェザー級王座決定T準決勝/5分3R>
河名マスト(日本)
パン・ジェヒョク(韓国)

<Gladiatorフェザー級王座決定T準決勝/5分3R>
チハヤフル・ズッキーニョス(日本)
ダギースレン・チャグナードルジ(モンゴル)

<Gladiatorバンタム級GP1回戦/5分3R>
竹本啓哉(日本)
ジェイソン・マルガリョ(フィリピン)

<Progressフォークスタイルグラップリング・ウェルター級暫定王座決定T準決勝/5分2R>
森戸新士(日本)
網藤雄太(日本)

<Progressフォークスタイルグラップリング・ウェルター級挑戦者決定T準決勝/5分2R>
世羅智茂(日本)
加賀谷庸一朗(日本)

<バンタム級/5分2R>
江田こうすけ塾長(日本)
溝口司(日本)

<ウェルター級/5分2R>
阿部光太(日本)
スティーブン・ギレスピ(英国)

<フライ級/5分2R>
江木伸成(日本)
空(日本)

<フェザー級/5分2R>
木村総一郎(日本)
藤岡陸(日本)

<ライト級/5分2R>
後藤丈季(日本)
水野翔(日本)

<ライト級/5分2R>
八木敬志(日本)
直島弘昌(日本)

<バンタム級/5分2R>
安枝匠(日本)
吉田開威(日本)

<ストロー級/5分2R>
田中優樹(日本)
武尊(日本)

<フライ級/5分1R>
MASATERU(日本)
塩谷尚也(日本)

<フェザー級/5分1R>
野口蒼太(日本)
西村剛(日本)

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