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【DEEP NAGOYA IMPACT2023】エヴェルトンと対戦、ソーキ─02─「嫌なことから逃げない人間に」

【写真】昨年5月以来の試合だが、この11カ月というスパンはソーキにとっては短いことになる(C)TORAO

16日(日)、刈谷市産業会館あいおいホールで開催されるDEEP NAGOYA IMPACT2023公武堂ファイトで、エヴェルトン・イワナガと対戦するソーキのインタビュー後編。
Text by Shojro Kamaike

ソーキといえば、とにかくテイクダウンを狙い続ける試合スタイルだ。一方、インタビューでは営業マンとしての能力を発揮し、各エピソードにオチまでついてくるほど。しかし試合のこととなれば、やはり話の方向も変わってくる。「試合は常に怖い」というソーキ、そんな彼がMMAを諦めず、目指しているものとは。

<ソーキ・インタビューPart.01はコチラから>


――仕事と家庭があり、そしてMMAの試合に出るとなれば、難しいことが多いのも理解できます。

「それと僕は本当に怠惰な人間で……、放っておいたら体重が100キロを超えるんですよ」

――えっ!? ウェルター級のリミットから30キロ近く増えるのですか。

「実際、前回の試合は30キロ減量しました(苦笑)。頂いたオファーも下の階級とか、試合の1カ月前とかで――そうなると、体重を落とすのが無理だったんです。だから何か意図があって試合をしていなかったわけではないです。格闘技をやっているのは楽しいし、練習はしていましたから」

――プロになって満足し、新人王トーナメントで優勝してランキングに入って満足していたとなると、2019年に田村ヒビキ選手を下して環太平洋王座を獲得した時も満足してしまわなかったですか。

「はい。いつMMAを辞めてもいいと思っていましたね。ただ、やっぱり『まだ強くなれる』という気持ちが心の中にあったので、辞めるのは今じゃないと考えていました。そのままコロナ禍もあり、3年後に防衛戦をすることになって」

――防衛戦は2022年5月、田村ヒビキ選手とのダイレクトリマッチでした。

「あの試合は、勝っても負けても引退するつもりでした。減量前は体重が110キロあって、30キロ以上落としたんです。すると計量後に、ありえないぐらいリカバリーしてしまい、試合当日はメチャクチャ体調が悪くて……。試合では負けてベルトも失い、『もういいかな』とは思いました。でも、ベストを尽くすことはできていませんでした。それと、これは感動エピソードなんですけど――」

――「感動エピソード」と振っておいて、違うお話になりませんか。

「アハハハ。5歳の子供が初めて試合を見に来てくれて、僕は負けたじゃないですか。そうしたら子供が『パパ、なんで負けたの?』と、毎日聞いてくるんです。『パパが弱かったから負けたんや』と答えるしかなくて。やっぱり強い父親を子供に見せたいです。今MMAを辞めると、子供に負けた姿しか見せることができていないんですよ。まだ頑張れば、体は動く。なのにMMAを辞めると、応援してくれる子供や会社の人たちに負い目を感じながら生きていくことになりそうで。勝っても負けても、嫌なことから逃げない人間になりたい。だからMMAを続けようと思いました」

――まさかの本当に感動エピソードじゃないですか……。

「いやいや(苦笑)。あとは地元で試合をしたいという気持ちもあったんです。MMAを始めてDEEPに出始めた頃なんて、何人か友達が見に来てくれるぐらいでした。でも続けていたら会社の人たちも応援してくれるようになったし、1回みんなに自分が戦っているところを見てほしかった。そしてもう一度、修斗のベルトを獲りに行きたいです」

――今回はDEEPに出場することとなりましたが、それでも目標は修斗のベルトなのですか。

「そうです。今回、DEEPからオファーを頂いて、本当に感謝しています。地元に近い場所で試合をすることができるので。ただ、気持ちとしては失ったベルトをもう一度獲り返したいです」

――なるほど。では次の試合についてですが、エヴェルトン・イワナガ選手の印象はいかがですか。MMAのキャリアでいえば、ソーキ選手のほうが格上ではあります。

「僕は臆病なので、誰と試合をすることになっても怖いです。戦うのは相手ではなく自分だと思っているもんで、自分のほうが格上だなんて思えません。僕は誰と戦うことになっても、常にジョン・ジョーンズと試合をするんだと考えているぐらいで」

――……。

「今回の試合も、ずっと怖くて仕方がないです。対戦相手の映像って、試合直前まで視ないんですよ。みんなに驚かれるんですけど、映像を視ると相手のことが強く思えてくるんですね。『このパンチを食らったら……』とか」

――その恐怖を、どのように克服しているのでしょうか。

「練習仲間のおかげです。みんなが対戦相手の映像を視て、同じような動きをして練習相手になってくれます。その練習を経て気持ちも吹っ切れたところで、僕も対戦相手の映像を視始めるんですよ。……すみません、『相手をブッ殺す』とか言えれば良いんですけど」

――オフィスでインタビューを受けながら「相手をブッ殺します!」と言っていたら、周りの人がビックリしますよ。せっかく得た信用を失いかねないです(笑)。

「アハハハ! 確かにそうですね。営業マンとしてマズイです(笑)」

――強さの概念もまた、人それぞれだと思います。続けること、それも一つの強さだと思いますし、現にソーキ選手はMMAを続けてきました。ただ、ソーキ選手のファイトスタイルは、組んで組み続けてテイクダウンして、というものです。現在36歳、そのスタイルを続けると肉体も削られていくのではないですか。

「削られます。だから今、スタイルチェンジをしています。練習への取り組み段階の話になるのですが、今までは週3回ガチスパーをやって、あとは筋トレをしているような感じでした。すると常に最大出力でやっているような状態だったんですね。当然ダメージも溜まっていくので、まずはその点を直しています。まず練習も常に最大出力でやるのではなく、3Rあるいは5Rをフルで戦うことを意識して組み立てる。そしてファイトスタイルも少しずつ変えていて、大人になりました(笑)」

――アハハハ。今まではガムシャラな若者スタイルだったのですか。

「そうです。とにかくパンチを振って組みつけば良い、と思っていましたから(笑)。試合前なので細かいことは言えませんが、どれぐらい変わったかは試合を楽しみにしていてください」

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