この星の格闘技を追いかける

【ONE160】新ONE世界フェザー級王者タン・カイに訊く、タン・リー戦─01─「安全に戦い過ぎた」

【写真】意外なほど、試合内容については厳しい目で見ていたタン・カイ (C)MMAPLANET

8月26日に開催されたONE160のコメインでタン・カイが、タン・リーを下しONE世界フェザー級チャンピオンに輝いた。

激闘必至、距離とタイミングの神経戦が繰り広げられるという予想を裏切り、タン・カイはダウンを奪い完勝した。タン・リーの動きがどんどんラフになるというなかで、サークリングを駆使し着実にカウンターを当てたタン・カイに改めて、世界戦を振り返ってもらった。


──まずはONE世界フェザー級王座獲得、おめでとうございます。

「ありがとう。チャンピオンになった日の夜は興奮して、眠ることができなかったんだ(笑)。翌日にやってようやく寝ることができた。それぐらいエキサイトしていていたけど、3日後にチンタオに戻ってきて、今はすっかり落ち着いているよ。すぐにトレーニングに戻るつもりさ」

──チャトリ・シットヨートンの声明によると、中国でのSNSでのリアクションが凄かったそうですね。

「中国の人々は、男子では初めてMMAの世界王者が誕生したことを喜んでくれたようで。地元の人たちからも、ここまで注目されたことは過去になかったよ。それは試合に勝ってチャンピオンになれたからだけではなく、試合前からこのファイトをONEがしっかりとプロモーションしてくれたおかげだよ。

これまでの自分の試合を見ることがなかった人も、多くのメディアがこの試合のことや僕自身のことを取り上げてくれて、中国の人々の注目度が高まっていたからね」

──もうチンタオの街をこれまで通りに歩くことができないかもしれないですね(笑)。

「それはまだ分からないけど、シンガポールでは道行く人たちが僕に気付いて話しかけてきてくれたよ(笑)」

──タン・カイがONEで戦うようになった時から、その実力とチャンピオンになる可能性があると感じてきましたが、まさかタン・リーをあれほど一方的にドミネイトしてチャンピオンになるとは戦前も思っていませんでした。

「2度ほど、タン・リーとの試合を振り返って視てみた。個人的にはあの試合に満足はしていない。さっきも言ったけど、試合前から中国で注目されていたから、ちょっとナーバスになっていた。試合を見なおしてみても幾度かフィニッシュできるチャンスがあったのに、タン・リーを倒しき切ることができていなかったことが分かった。

この試合が世界選手権試合でなくて。普通の試合だったらあそこまで緊張せずに、試合を終らせることができていたんじゃないかと思っているんだ。もっと普段通りに戦えていれば、あんな試合にならなかった。ちょっと安全に戦い過ぎたね」

──ファイトウィークの火曜日にインタビューを申し込んでいたのですが、直前になって体調が悪いとキャンセルになりました。ONEのオフィシャルインタビューの時も声が出ていなかったとか伺いました。

「実はシンガポールにやってきて、ホテルの中の寒さに体調を崩してしまって。エアコンディショナーが効きすぎて、本当に寒くて」

──あぁ、分かります。外との気温差も凄くありますし、エアコンをオフにしても寒いままで部屋が乾燥するということが多いですよね。

「その通りなんだ。だからインタビューを受けなくて、本当に申し訳なく思っている。実はONEの公式スケジュールのほとんどをパスさせてもらっていたんだよ」

──そこまでだったのですね。ところで先ほど、安全に戦い過ぎたと言っていましたが、それこそこの試合の鍵は如何に相手の攻撃を受けないで戦えるのかということではなかったかと思います。一か八か倒し合いをすればファンは喜ぶでしょうが、それは安定性を欠くことで。タイトルを獲得するために、安全に戦うことは当たり前かと思います。

「謝謝。でも次の試合では、自分の持ち味を発揮してもっと良い試合をしてみせるよ。初防衛戦はフィニッシュすると約束するよ」

──内容が良くないという声は、少なくとも私の耳には全く入ってこなかったです。何よりも色々と考えることができる試合でもありました。この試合はカウンターの名手同士が如何に距離とタイミングを掴んで攻撃するのか。そこが大きな見所でした。

「以前から言っていたように、自分はタン・リーの技術が特別だとは全く思っていなかった。何か秀でているモノがあるようには見えなかったからね。ただ、速いんだよ。だからその動きが功を奏することもあったけど、特に距離やタイミングを取ることに長けているわけではない。でも奇抜……アンオーソドックスな戦い方をするんだ。ジャンプをして、飛び込んできたり。予備動作がなくて、急に動き出すとかね。

そういう奇をてらった動きというのは、しっかりとした技術を持っている選手には通じない。そして僕の持つ技術力は十分に彼をぶちのめすことができていたはず。とはいえ、その不規則で予想しづらい動きは僕にとっても危険なモノではあった。いつ、彼が飛び込んでくるのかを見極めることが欠かせなかった。

試合中に僕のコーナーマンが、倒せるタイミングや距離になるとアドバイスを送ってくれていたんだけど、圧力を掛けることはできてもパンチを打つことはなかなかできなかった。後から試合映像をチェックした時に、もっとストレートを顔面にヒットさせることは可能だったし、ハイキックも蹴っていれば当たっていたと思えるシーンが何度もあったよ。そういう反省点を次の試合に生かしたいと思う」

<この項、続く>

PR
PR

関連記事

Movie