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【WJJC2022】世界に立ち向かう日本の柔術家 橋本知之─02─ 「優勝し、シェアできる存在に」

【写真】結果として、彼を揺り動かしているのは柔術への想い。柔術愛なんだと(C)SATOSHI NARITA

2日(木・現地時間)から5日(日・同)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチのウォルター・ピラミッドにて、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権が行われている。
Text by Shojiro Kameike

ルースター級にエントリーしている橋本知之が試合直前に語ってくれた世界で戦う意識と、柔術家として世界一になることとは? 本人によるルースター級トーナメントの分析も含め──必読だ。

<橋本知之インタビューPart.01はコチラから>


――ご自身の中で、昨年から今年のムンジアルまでの間、どのような部分が成長してきたと思いますか。

「技術的にはトップからのアタックとか。ボトムからのアタックのバリエーションも増えましたし、クオリティも上がったと思います。それ以上に、まず練習の取り組み方がだいぶ良くなってきました。昔から世界一を目指して取り組んでいたんですけど、まだ楽しさ優先だったというか」

――……それは意外です。

「楽しいのが一番、というのは変わらないんです。それが今は楽しいことと、世界一になるために突き詰めることが、自分の中でシンクロしてきたというか。昔は突き詰めることと、楽しむということが若干ズレていたんですよ。今はその部分を考えて取り組むことが楽しくなってきていて、そこは変わった気がします」

――これまでは、世界一になるための練習はツライものだという気持ちが先行しすぎていたのでしょうか。

「強くなるためにはツライ練習をしないといけない、という根性論みたいなものが自分の中にもあって。それは違うなっていうことに気づくことができました。米国でも世界大会前のファンとキャンプとかは、メッチャ根性論なんですよ。本当にキツイ練習で。それを何回もやっていると『これが本当に正しい練習なのかな?』という疑問が浮かんできて。ただ、トップ選手でも選手によって練習内容は違いますし。

あとは他競技のトップアスリートはどんな練習をしているんだろうか、と思って本を読みました。すると強度の高い練習だけが良いわけではない、ということをトップアスリートなら普通に理解していることだったんですよね。強度よりも効率が大事だと。考えてみれば当たり前のことなんですけど、その意識が低かったなと思って。

そこから効率を考えて練習するようになりました。あとは無理をしすぎると故障も増えるし、故障が多いと練習も楽しくなくなるんですよね。だから最近は常に良いコンディションで練習をして、どんどん上手くなっているように感じています。だから楽しいです」

――それもキャリアを重ねていかないと分からないことかもしれませんね。

「そうですね。そう思います」

――では今回のトーナメントについて触れていただきたいのですが、マイキー・ムスメシとブルーノ・マルファシーニがエントリーしていない点は、どう考えていますか。

「マイキーは最近、ADDCやグラップリングに集中しているので、今回出ないのは仕方ないのかなと思います。ブルーノに関しては……出てほしかったですね。マイキーには負けちゃいましたけど、そのパフォーマンスを見るかぎりは、今もルースターでベストに近い選手だと思いますし。そうやって強い選手が出ているほうが、注目度も高いので。

これで僕が優勝できたとしても、マイキーとブルーノが出ていたら結果は違っていただろうなって、みんな思うでしょうから。世界大会という名前であれば、みんな出ているほうが良いですよね」

――……。

「もちろん肩書は大事です。世界大会で優勝すれば世界一という肩書きは得られるし、生きていくうえでその肩書きを使うことはできます。でも……本当の価値があるのは、ちゃんと自分の柔術が強いということであって。ブルーノはグラップリングをやっているわけじゃないし、コンディションも悪くなさそうなので、出てほしかったですけど。

でもブルーノは、もう10回優勝していますからね(苦笑)。今出ている選手にはほとんど勝っているか、あるいは新しい世代の選手なので、ブルーノにとってはそれほどモチベーションが上がらないのは仕方ないかもしれないです」

――そのなかで、今回のトーナメント表が発表された時の印象は?

「強い選手がバランス良く分かれているので、フェアな組み合わせだなと思いました。まず2回戦のベベト(カルロス・アルベルト)はレベルが高い選手ですよね。パンでもタリソン(・ソアレス)に勝って優勝していますし。メチャクチャ段違いにレベルが高いっていうわけじゃないですけど、全体的なレベルが高いので。

そこで僕がベベトに勝ったら、次はジョナスでしょうね。ジョナスはディフェンシブな選手で固い試合をするので、難しい相手なんですよ。怖さはないけど、ちゃんと勝つのが大変な相手です。でも一回対戦して、相手がどういうことをしてくるかは分かっているので。対策もしてきていますし、実際に戦ってみて、いろいろ試していきたいですね。

決勝の相手はタリソンになると思うんですけど、新しい世代で強い選手たちもいるので、どうなるか」

――詳しい解説、ありがとうございます。では最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします。

「日々の練習の中で、自分が工夫しながら取り組んでいることがあります。それは技術的にも、フィジカル的にも。その結果、世界大会で優勝できたら、自分の取り組み方も説得力を持って日本でシェアできる。そうやって日本の人たちの力になれますよね。

日本国内には世界トップの選手がいないし、英語も得意ではないから情報も少ないと思うんです。それは世界で戦ううえでは、すごく不利じゃないですか。自分が世界大会で優勝することによって、そうやってシェアできる存在になれればと思っています。もちろん自分が楽しみたいという気持ちもありますし、頑張ります」

■黒帯ルースター級放送予定
6月5日(日・日本時間)
午前3時00分~ FLOGRAPPLING

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