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【VTJ2021】青木真也に西川大和戦=乱入劇の是非を問う──「西川選手は尺を越えちゃった」

【写真】青木のファンクスのようなエルボーが西川を襲う (C)MMAPLANET

6日(土)、東京都江東区のスタジオ・コーストで行われたVTJ2021で、菅原和政をRNCで破った西川大和が青木真也へ対戦アピールをした。

直後に電光石火のごとく、ケージに乱入してエルボーを見舞い、マイクアピールを行った青木。その仕事ぶりがMMAに相応しいのか──を尋ねた


──先日のVTJの乱入劇に関してですが……。

「ハイ、何かいけないですか」

──正直言えば、本来はMMAがああいう形で盛り上げなくて良いモノになってほしいと思っています。そして、以前の自分なら『やっちゃダメだ』という論調になっていたかと。ただし、青木真也はそこを越えたのかと。VTJとはいえ、いわば修斗の中核をなすプロモーションのサステインからお咎めがないわけですし。

「それで是か非か的に言われるなら、別にイイですよ。俺はもうやらないから。だったらもうイイですってだけで。何でダメなのか。それでダメだというなら、もうこのままで抜けないポジションでやっていれば良いと思います。この考え方自体が、良いか悪いかは分からないけど」

──重ねていえば、ああいうことがなくても盛り上がる業界にしていきたいですね。

「それは高島さんの見解で。高島さんは、アレがなくても楽しいんだもん。ずっと見ているし、見ていられる。それで食っていけて、商売になっている。だから、そうやって言えるわけで」

──……。

「でも、多くの人が『お金にならないよね。でも好きなことができて幸せだ』ってMMAをやっている。好きなことならファイトマネーが1万でも良いのかと」

──そこは人それぞれかと。そりゃあ好きなことをやって金持ちになれるのが一番。でも、まぁ生活できるからそれで良いのもありだし。

「生活ができているから、ですよね。それにあのイベントはABEMAで中継されていた。つまりは商売にしているモノなんです。なら僕は視聴者数を伸ばしたい。このままじゃ、どうにもならないというところで、あの発言があって僕は動いた。だから、アレを批判したりするっていうのは、そういう全体像が見えていないんです。見えて批判するなら良いけど、見えていない。そう思いますね。

高島さんはアレを批判するポジションでやれている。そうやって格闘技を報じる立ち位置にあるから、そうすれば良いわけで」

──だから、今聞かせて頂いているわけですね(笑)。それが自分のポジションで。そして青木選手が青木選手のポジションから返答をくれる。それで良いのかと。

「ハイ。それがビジネスだから。皆には皆のポジションがあって、是か非を問うとポジショントークになるので、そこは答えを決めずに皆がビジネスの可能性を広める。多様性ってやつですよね。

だって今もコレを聞いているけど、答は求めていないし。僕も答えは求めてない。でも何があったのか、話を聞いてもらって記事にしてもらう。そうやって回していく。ある意味、そのためですよね。アレをやったのも」

──だからこそ、青木選手に訊きたいことがあります。西川選手の青木選手と戦いというマイクがあり、ケージまで駆け上がる時の青木選手からは『来たっ。見せ場もらう』という意気揚々さがすぐに伝わってきました。

「まぁ試合をしないで、持っていける場面が来たわけですからね」

──ただしコナー・マクレガーとジョゼ・アルド、ジョン・ジョーンズ✖ダニエル・コーミエ―、あとはマゴメド・ヌルマゴメドフのマクレガー戦後などは、ヤバいという怖さがありました。対して、青木選手の先日の乱入は、最初からプロレス的な乱闘劇でした。

「あぁ……ハイ、ハイ、ハイ」

──これで盛り上がるんだと、模倣犯がでないか。青木真也だから成り立つことを、真似をする輩が出てこないかと危惧はします。

「いや、誰もできないですよ。簡単にいえば喋るのだって、見せるのも腕が必要なんで。やる度胸があるヤツはいないですよ。だから誰もこれまでやってこなかったわけで」

──と同時に青木選手は盛り上げるためでも、西川選手が本気でやり来たと思って渾身の力を込めてカウンターを合わせてくることもありえます。

「それが技量なんですよ(笑)。皆はプロレスっていう言葉を慣れ合いのように使うけど、そうじゃないから」

──本気でプロレスリングに取り組む人に、その使い方は失礼ですよね。自分もよく若い頃に『高島君はプロレスができないなぁ』とか言われましたが、そう言っていた谷川さんにしても人を掌の上で転がりしたり、言い方は悪いけど欺く時にプロレスという言葉を使っていた。それってプロレスをしている人に失礼だと思っていました。ターザンさんの『お前はガチバカだ』っていう言葉の方が、やはりプロレス界の人だと。

「そう、だからプロレスって言葉をそういう風に使われるのは凄く嫌なんです。モノゴトを創る上で、どうなるか分からないことを綱渡りでやっているんですよ」

──それこそ真剣勝負で。

「ハイ。それが度胸ってことなんですよ。それを回りでやったことがないヤツが、プロレスどうこうっていう言葉を迂闊に、軽く使わないで欲しいですね」

──では、本気と受け取った西川選手が仕掛けてきたらガチに持ち込んで仕留めるぐらいの気持ちでいたのでしょうか。今も使われている言葉なのか分からないですが、キラー振りを発揮して。

「そんなことは全く思わないですよ(笑)。でも、そうなったとしてもプロレスです。何が起こっても形にするのがプロレスだから。そういう意味で真剣勝負だったんです。仕事、このインタビューだって真剣勝負ですよ」

──では真剣に取り組んだものですが、青木選手がケージを下りてから、西川選手がクソ真面目に正論を言い続けた。アレはプロレスが成り立たなかったかと。

「マジで困っちゃいました。西川選手は尺を越えちゃった。俺は尺を短くしているのに、アレを続けると収集収拾がつかなくなります。『この野郎、バカ野郎』ってやってくれるのが一番良かったのに。『俺は辿り着くからな』って論調でやってくれるのが一番なのに、それができなくて理屈こね始めて、こりゃあダメだって(苦笑)」

──グダグダになりました。

「僕はある程度、仕事をした。そういうことですよね。相手もアップできて、僕も欲しいモノを貰った。誰も損をしていない。だから俺がケージを下りた時点で成立したと思っています。アレで西川選手も注目度が上がったからWIN WINだと思っていますが、認識が違っていますか」

──あの場面を切り取り記事も書かれたでしょうし、西川選手も青木選手もWINだった。ただし尻切れトンボ的な状況だったものを見て、WIN WINでいえばお客さんもWINになったのか……。

「お客さんはあの場でアレを見てもらった。それだけでWINになったと思ってもらえるようにやりました。VTJ自体、良い試合もあってアレもあった。もう一つ、WINにならないといけないのがプロモーションで。アレをやって話題になった。それは役立てたかという認識です。

それで是非云々って言われるなら、そもそもマスコミの方で取材的なことをしてくれたのはABEMAの中継班とABEMA TIMESの橋本宗洋さん、東京スポーツだけなんです。東スポを格闘技メディアって捉えるのは、難しいところがあるけど実質、他の格闘技メディアとされている人たちからは取材されていない」

──基本、囲み取材を文字化するのが一般的になっています。

「そう、でもアクセス数は伸びるから取材がなくても記事にはなっている。だからちゃんと取材をしてもらって選手の声、関係各位の声がもっと届くようになってほしいですね。もう構造的な問題ですよ、全部。

格闘技メディアもオイシイところだけタダ乗りして、ちゃんと取材して伝えないし。それなのにサステインから文句を言われるなら、もっと大会のプロモーションをしようよってことですし。だから、乱入について何か注文つけられる筋合いは1ミリもない。そう思っています」

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