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【UFN196】3連勝中のパク・ジュンヨンと対戦、グレゴリー・ホドリゲス─01─長い旅路の末の第一歩

【写真】諦めない限り夢は叶うというが、諦めかけたところでも叶う。こんな話を訊くと、肩入れしてしまうだろうって…… (C)Zuffa/UFC

23日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXでUFN196:UFN on ESPN+54「Costa vs Vettori」が開催される。

同大会には韓国からチェ・スンウ、パク・ジュンヨンというUFCで3連勝中の2人が出場する。そしてパク・ジュンヨンと戦うのが、LFAミドル級王座奪取から2週間でUFCデビューを戦ったグレゴリー・ホドリゲスだ。

この2週間のショートノーティスでUFCとサインしたホドリゲスには、このコールを受けるまで長いストーリーが存在した。サンフォードMMAの好漢がUFCを想い続けた物語とは──。


──グレゴリー、インタビューの機会を頂きありがとうございます。実は昨夜、サンフォードMMAのチームメイトである佐藤天選手と連絡を取っていて。グレゴリーのことを「とてもスマートで右ストレートが強く、いつ使うべきかを心得ている選手」と言っていました。

「オォ、マイ・ブラザー、嬉しいよ。トレーニングパートナーのサトーにそういってもらえるなんてハッピーだ。僕は彼の試合を視るのが大好きで、『いつ、試合があるんだ』っていつも尋ねているんだ。サトーは本当にナイスガイで、気持ちの良いヤツだよ。僕はオンラ・ンサン、サトーという素晴らしいアジアの練習仲間に恵まれているんだ」

──そのアジアからUFCに挑戦している韓国人ファイターのパク・ジュンヨンと土曜日に試合をします。

「凄く楽しみだよ。UFCと契約したファイターは全員が、すでに大きな夢を実現させたといえる。パク・ジュンヨンもその1人だ。彼は凄くタフな相手になることは間違いない。なんせオクタゴンで今、3連勝中だからね。でも僕は自分が何者で、何をしないといけないかは分かっている。このビッグファイトは僕にとって、次の進むための試合さ。レッツゴー!! 準備はできているよ」

──そのUFCと契約を果たした時の話ですが、グレゴリーは昨年5月21日にジョシュア・フレムドを初回KOで下しLFAミドル級王者に。そして6月6日にドゥスコ・トドロビッチを相手にUFCデビュー戦を戦いました。この間、わずか2週間強という日数しかありませんでした。この時の心境はどのようなモノだったのでしょうか。

「そうだね、長い話になってしまうけど……去年の9月にコンテンダーシリーズでジョーダン・ウィリアムスに負けて、全てを見直した。トレーニングだけでなく、試合をするうえでの心の持ち方も含めてね。僕はUFCと契約するためにブラジルを離れ米国にやってきた。

まずはLFAで戦い、そこからUFCを目指そうと思っていた。そうしたらコロナ・パンデミックが起こり、僕のLFAデビュー大会はキャンセルされた。

(C)Zuffa/UFC

でも、そのおかげでかコンテンダーシリーズで戦うチャンスを得たんだ。

対戦相手が直前に代わったり、色々とあったけどチャンスを掴んだ。そして……KO負けした」

──ジョーダン・ウィリアムスとメインで戦い、右ストレートを入れ首相撲に捕えた時に左から連打を受け、打ち返そうとした時に左をカウンターで受け逆転KO負けでした。

「そう……その通りだ。もう、あの時点でMMAは辞めようかと考えた。ジムでも開いて、指導して食っていった方が良いかなって。僕は柔術の黒帯だし……。当時はカリフォルニアにいたけど、数カ月後にフロリダに友人の練習を手伝うためにやってきたんだ。

ヘンリー・フーフトのことは知っていたけど、初めて話して……すぐにLFAのミドル級王座決定トーナメントの話が決まったんだ」

──MMAから退き、ジムをオープンしようと思っていたタイミングで?

「サンフォードMMAでヘンリーと話し、続けようと思った。でも、そのためには金が必要だった(笑)。だからLFAのオファーに応じたんだ。カリフォルニアを引き払って、フロリダで生活する資金が必要だったから。アパートの賃貸料も払わないといけないしね。

あの試合はUFCと契約するとか、そういう気持ちもなかった。そうしたら凄くリラックスできたんだ。楽しもうと思えたんだよね。これは神様が与えてくれたチャンスなんだから、楽しもうって。そして、UFCで契約するために戦うというプレッシャーから解放された。

僕はUFCと契約して、成功するために家族をブラジルにおいてカリフォルニアにやってきた。絶対、契約しないといけないというプレッシャーが常にあった。でも、この時から、そんな焦燥感はなく、『MMAのことが好きで始めたんじゃないか。なら、もっと楽しもう』と思えるようになったんだ。MMAで戦えることは光栄だし、既に人生に与えてもらった大きな贈り物じゃないかってね。好きだからMMAを戦う。

(C)LFA

そういう気持ちでLFAで戦って1試合目で勝ち、トーナメント決勝でもKO勝ちしてベルトを巻くことができた」

──勝利後のインタビューでは「ビッグマッチだけど、凄くリラックスして戦えた。自信をくれたジーザスに感謝している。ハッピー・バースデー、ヘンリー・フーフト。オンラ・ンサン。これは皆のベルトだよ」と話し、LFAのケージでは恒例の『ダナ・ワホイト、ショーン・シェルビー、ミック・メイナード、オファーをくれ』というマイクではなかったです。

「あの勝利でUFCと契約できるという考えなんてなかった。だってコンテンダーシリーズでダナ・ホワイトの目の前でKO負けしたんだから。どうやってUFCと契約なんてできるだっていう気持ちだったから。で試合の翌日、友人がタイトル奪取を祝ってくれていた時、マネージャーから電話あったんだ」

──「UFCからオファーがあった。2週間後に戦えるか?」と。

「2週間なんて必要なかったよ。次の日でも戦ったさ(笑)。LFAでベルトを獲り、UFCからコールがあった。こんなに幸せなことはなかったよ。それからの出来事には、全て感謝している。でも、まだ始まったばかりだよ。僕は凄く成長できている。UFCで戦い続け、一歩一歩上へ進み、自分がやれるっていうことを証明していきたい。

そのためにもベストな相手と戦いたくて、この時点で3連勝中のパク・ジュンヨンと戦えることは凄く嬉しい。彼との試合はタフになる。そして、僕を強くしてくれるファイトになるからね」

──グレゴリーのLFAでの試合を見ていると、柔術の黒帯というよりも優れたキックボクサーのように思っていました。ただレコードを見るとKOだけでなく腕十字などで一本勝ちが4試合ありました。

「MMAを始めたのはリオデジャネイロだけど、マナウスで生まれ育った僕は5歳の時に父と一緒にカポエイラを習い始めた。

ホドリゲスの原点、マナウスのASLE

そして8歳の時に、エンヒッキ・マシャードの下で柔術を習うようになった」

──エンヒッキ・マシャードということは、ASLEですか!?

2005年8月これだけの子供たちがASLEで柔術を学んでいた

「そう、ジャカレ・ソウザと同じアカデミーだよ。僕が柔術を始めた時、彼は紫帯だった」

──おお、実は2005年の夏に訪れた時があります。ひょっとしたら13歳の時のグレゴリー少年と会っていたかもしれないですね。センセイ・マシャードは平気で教え子の頬をビンタで張ったり、軍隊のように規律を重んじていたのを思い出します。

確証は持てないが、右から2番目の少年──グレゴリー・ホドリゲスの面影がかなりあるような……

「アハハハハ。そうやって精神を鍛えるんだ(笑)。センセイ・エンヒッキは子供たちに無償で柔術を指導する素晴らしい人だったよ。

本当に厳しい人だったけど、センセイ・エンヒッキのおかげで今の僕があるんだ。ジャカレだってそうだ。セイセイがいなければ、ファイターとして成功した彼はいない。彼のおかげで、やっていけるようになった柔術家やファイターは数知れないよ。実際は僕はセンセイ・エンヒッキの黒帯だからね。

僕は8度ブラジレイロで優勝し、紫帯では世界王者になったよ。

決して豊かではなかったけど、両親は僕の柔術キャリアを常にサポートしてくれていた。でも、生活をしていくために何かを始めないといけないと思った。2014年だったと思う──ジャカレに連絡を取ると、『サポートするから、リオに来い』と言ってくれた。そしてリオデジャネイロへ行き、ジャカレが所属しているX-GYMでMMAキャリアをスタートさせたんだ」

<この項、続く

■視聴方法(予定)
10月24日(日・日本時間)
午前2時00分~UFC FIGHT PASS

■ UFN196対戦カード

<ミドル級/5分5R>
マーヴィン・ヴェットーリ(イタリア)
パウロ・コスタ(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
グラント・ドーソン(米国)
リック・グレン(米国)

<女子バンタム級/5分3R>
ジェシカローズ・クラーク(豪州)
ホセリン・エドワルツ(パナマ)

<フェザー級/5分3R>
アレックス・カサレス(米国)
チェ・スンウ(韓国)

<ウェルター級/5分3R>
ドワイト・グラント(米国)
フランシスコ・トリナルド(ブラジル)

<ライトヘビー級/5分3R>
ニック・ネグメレアフヌ(ルーマニア)
イケ・ビジャヌエバ(米国)

<ミドル級/5分3R>
パク・ジュンヨン(韓国)
グレゴリー・ホドリゲス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
メイソン・ジョーンズ(英国)
デヴィッド・オナマ(ウガンダ)

<女子ストロー級/5分3R>
タバタ・ヒッチ(ブラジル)
マリア・オリヴェイラ(ブラジル)

<ミドル級/5分3R>
ロウレアノ・スタルポリ(アルゼンチン)
ジェイミー・ピケット(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
カーマ・ワーシー(米国)
ジェイ・ハーバート(英国)

<フライ級/5分3R>
ジェフ・モリーナ(米国)
ダニエル・ラセルダ(ブラジル)

<女子ストロー級/5分3R>
ヘナタ・リヴィアナ・ソウザ(ブラジル)
ランダ・マルコス(カナダ)

<バンタム級/5分3R>
ジョナサン・マルチネス(米国)
ズヴァイアド・ラジシュビリ(ジョージア)

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