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【WNO Championships】レポート─08─ヘビー級この一番。敗者復活戦勝ち抜き、ハイサムが3位入賞!!!!

【写真】今回のトーナメントで3位は、世界で3位と捉えて良いはずだ (C)MIKE CALIMBAS/FLOGRAPPLING

9月25&26日(土&日・現地時間)にテキサス州オースチンのパーマー・イベンツセンターで開催されたWho’s Number One Championships。ライト級、ミドル級とヘビー級、女子はストロー級及びヘビー級で賞金3万ドルとチャンピオンベルトを賭けた2days 8人制トーナメント──は2021年グラップリング界の最大のイベントとなった。
Text by Isamu Horiuchi

レビュー第8回はヘビー級のこの一番──ハイサム・リダの3位決定戦、✖ジャンカルロ・ボドニ戦の模様をお伝えしたい。


トーナメント1回戦でスプリッグスの足関節に敗れたハイサムだが、敗者復活戦の初戦でオーランド・サンチェスと対戦。サンチェスは、かつてその特殊体型を活かし、決して下にならない戦いぶりでADCC世界大会を制した大物だ。

序盤はハイサムが下から攻めあぐねる場面も見られた。が、ハイサムは中盤にオープンガードから足を絡めて足関を狙いつつスイープを決めると、スクランブルで背中を見せたサンチェスのバックを奪い足を一本フックさせる。

(C)CLAYTON JONES/FLOGRAPPLING

ここで場外となったが、同体で再開となり強烈なネッククランクを極めて6分52秒で一本勝ち。

元ADCC世界王者から値千金の勝利を得たハイサムは、3位の座を賭けてジャンカルロ・ボドニと対戦することとなった。ボドニはもともとベウナウド・ファリアに教えを受けたアリアンシの新黒帯だが、最近ジョン・ダナハーとゴードン・ライアンが結成したニューウェーブ柔術の新メンバーとなった。今年のパンノーギヘビー級決勝では、昨年の決勝で敗れたルーカス・バルボーザを相手にレフェリー判定で下し雪辱を果たすとともにパンノーギの挑戦に立っている。体重が軽いとはいえ、実績ではハイサムを上回る選手だ。

ボドニは1回戦でマイケル・ファウラーに敗れたものの、負傷リタイアで準決勝進出へ。ここでもカイナン・デュアルチに敗れ、さらには敗者復活戦もカイル・ベームが棄権したため白星がないまま3決へ。

<ヘビー級3位決定戦/15分1R>
ハイサム・リダ(ガーナ)
Def. 2-1
ジャンカルロ・ボドニ(米国)

試合開始後に引き込んだボドニに対し、ハイサムも素早く横にパスを仕掛けるが、ボドニもハイサムの右足に内側から絡める。

さらにハイサムは軽快な動きから右にパス、対してボドニは足を効かせてフレームを張って守る。

ならばとハイサムは長いリーチを伸ばして上からダイビングキムラ狙い。が、ここもボドイは防御。序盤から両者の持ち味が発揮されている。

その後もボドニはハイサムの右足に絡ませると、そのまま立ち上がってのシングルレッグへ。するとハイサムは自らクローズドに引き込んで三角狙いへ。

ボドニが両腕をこじ入れて防ぎ、続いてハイサムは足をきかせてボドニを浮かせる。

さらにハイサムは内回転でボドニの右足を引き出して抱えると、そのまま立ち上がってのテイクダウンを狙うが、ボドニも素早く足を抜いた。ハイサムのダイナミックな動きと、足関節とレッスルアップというダナハー派の影響を受けたボドニのテクニカルな仕掛けが噛み合った攻防だ。

その後立ち技の攻防になると、ハイサムは足車でテイクダウンに成功する。

その後もボドニは足を絡めてスイープやストレートレッグロックを仕掛けるが、ハイサムはうまく対処してゆく。

途中ボドニに何度かシットアップを許す場面もあったハイサムだが、その度に下から長い足を利かせ、またフットロックを仕掛けて距離を取ることに成功させた。

残り5分を切ると、リードを許している状態のボドニは、シッティングから素早くハイサムの右足を掴んでレスリングアップを狙う。が、ハイサムは小手投げで切り返して崩してからガードに飛びつく。

立ち上がってハイサムのガードを開けたボドニは、その両足首を掴んでスタックパスを仕掛けてから、下に飛び込んでクラブライドを狙う。

が、ハイサムはしっかりと背中をマットにつけてバックを許さず。やがて離れることに成功した。

またしても引き込んだボドニはハイサムをクローズドガードに入れ、両者は膠着。残り1分のところで、上から防御に徹していたハイサムにペナルティが与えられた(ペナルティは3回受けると反則負けだが、判定に直接加算されることはない)。

立ち上がってボドニのガードを開かせたハイサムは、軽快な動きでボドニの足を捌きにかかる。それを防いだボドニはシッティングから前進し、最後の望みをかけてハイサムの右足に外掛けで絡む。が、長いリーチを誇るハイサムが立ち上がってボドニの足の絡みを押し下げたところで試合終了。両者が持ち味を発揮した15分の熱戦が終了した。

判定は2-1でハイサムに。敗者復活を2試合勝ち抜いて、大舞台で堂々の3位入賞となった。内容面を見ても、1回戦はスプリッグスにテイクダウンもパスを許さず、敗者復活一回戦は難攻不落のサンチェスのバランスを見事に崩しての一本勝ち。3決では、ダナハー派の流れを汲むボドニの仕掛けにうまく対処した上で、自らの持ち味であるダイナミックな動きを活かして競り勝っての勝利。北米グラップリングの最先端に対応しつつ、自身の強みを大いに発揮するという天晴れな戦いぶりだった。

ファウラーとベームという強豪二人が途中棄権という幸運に恵まれた面はあったものの、世界最高峰のグラップリング大会での3位入賞。このWNOチャンピオンシップの舞台は、ハイサム・リダが真の意味で世界の重量級トップグラップラーの仲間入りを果たした、記念すべきものとなった。

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