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【WNO Championships】レポート─02─ライト級この一番。マイキーがファンダメンタル柔術でソウザに下る

【写真】衝撃のマイキー・ムスメシの一本負け (C)MIKE CALIMBAS/FLOGRAPPLING

25&26日(土&日・現地時間)にテキサス州オースチンのパーマー・イベンツセンターで開催されたWho’s Number One Championships。ライト級、ミドル級とヘビー級、女子はストロー級及びヘビー級で賞金3万ドルとチャンピオンベルトを賭けた2days 8人制トーナメント──は2021年グラップリング界の最大のイベントとなった。
Text by Isamu Horiuchi

レビュー第2回はライト級のこの一番──大アップセットとなったガブリエル・ソウザ✖マイキー・ムスメシ戦の模様をお伝えしたい。


<ライト級1回戦/15分1R>
ガブリエル・ソウザ(ブラジル)
Def. 10分10秒by ノースサウスチョーク
マイキー・ムスメシ(米国)

試合開始後、すぐにマットに横たわったムスメシ。体格に勝るソウザは、素早い動きで左右へのパスを仕掛けてゆく。

ムスメシは両手でソウザの左足首を掴んでグラウンドに引き摺り込むが、ソウザは腰を引いて距離を取り、やがて立ち上がって背中を向けて距離を取った。猛威を振るうムスメシの足関節に、ソウザは一切付き合うつもりはないようだ。

再びソウザがパスを仕掛けるために近づくと、ムスメシはKガードからソウザの右足を腕で内側からホールドして捕獲する。

逃げようとするソウザを強引に引っ張り込んで崩し、右足を両足で挟み込むと、強烈なヒザ十字に。一瞬ヒヤリとしたソウザだが、右足でムスメシのヒザ裏を蹴りながら角度を変え、やがて距離を取ることに成功した。

危機を脱したソウザは、左右に低く体を預けてのパスを狙うが、ムスメシは左腕のフレームと足を利かせて距離を作る。その後も足を狙いにゆくムスメシだが、付き合うつもりのないソウザは未然に対処して距離を取ると、逆に左右のパスを仕掛けてゆく。

やがて体格差が響いてきたか、ソウザがパスの攻勢に出る場面が目立ち始め、頭まで回られてしまったムスメシがインヴァーテッドガードで対処する場面が出てくる。ムスメシは足を極めるのは難しいと判断したか、ソウザの腕を下からたぐろうとするが、ソウザこれも素早く切ってはパス攻撃を繰り出していった。

ムスメシの足を捌きながら左右の動きを加速してパスのプレッシャーを強めたソウザは、6分過ぎに右方向に動いてムスメシの頭側に付くと、インヴァーテッドからこじ入れようとするムスメシの足を払いのけて胸を合わせることに成功する。

ムスメシは下から動き続け、なんとか隙間を作ってオープンガードに戻してみせたものの、ソウザが大きな印象点を得た。

その後四つ足で素早く歩くように右にパスを仕掛けたソウザは、そのままムスメシの頭に回り、インヴァーテッドから絡もうとするムスメシの足を完全に押し除け、なんと上四方で完全に押さえ込むことに成功する。階級別の試合でムスメシがパスガードを許したのは、おそらく16年のパン大会におけるルーカス・ピニェーロ戦以来だろう。

ムスメシは懸命に下から腕を伸ばして距離を作ろうとするが、体格に勝るソウザは重心を低くして密着し、上から巧みに動き続けてムスメシに隙間を与えない。さらに上からムスメシのワキに腕をこじ入れてチョークを狙うソウザ。

完全に上半身を殺されながらも、腕を差し返して守っていたムスメシだが、とうとうソウザが左腕をムスメシのワキに入れ、右腕で首を巻いてノース&サウスチョークをロックオン。

これで万事休すに追い込まれたムスメシがタップ──試合時間は10分10秒だった。立ち上がって咆哮したソウザ。ノーギ転向以来のムスメシの快進撃を止めたのは、意外にもグラップリングの専門家ではなく、階級上の柔術家ソウザだった。

ここまで、名だたるグラップラーたちを相手に足関節で圧倒してきたムスメシ。試合前はブレイキング・メカニズムをさらに徹底追求してきたと語っており、この試合も序盤から露骨に足関節のみを狙っていった。狙いが明白だっただけに、ソウザには対処しやすかった面もあるだろう。

またムスメシとしては、急速に熟達中である足関節技の完成に練習を集中してしまい、本来の強みであるガード&パスガードの攻防の準備が疎かになった面もあるしれない。最強の柔術ファンダメンタルを持つと思われたムスメシが、ノーギの舞台にて、同じく柔術をベースに持つソウザにファンダメンタルの攻防で完全に制されての敗戦。組技の奥深さを思い知らされた試合だった。

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