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【IRE05】所英男DNA=コンバット柔術に適した長野将大✖IBJJF競技柔術家=生田誠が大会ベストバスト!!

【写真】異種格闘技的という意味でも、最高のコンバット柔術。コンバット柔術の可能性を見た一戦となった (C)MMAPLANET

14日(土)に東京都港区のリバーサルジム東京スタンドアウト田町芝浦スタジオで開催されたIRE(Imanari Roll Ecstasy)05。ここでは掌底有りのコンバット柔術65キロワンマッチ=長野将大✖生田誠の一戦の模様をお届けしたい。

<コンバット柔65キロ契約/7分1R>
長野将大(日本)
Def.OT
生田誠(日本

2008年ムンジアル黒帯ライトフェザー級ベスト8、全日本選手でも優勝経験があるなどIBJJF競技柔術で確かな実績を持ち、生涯柔術家的でもある生田誠。

ホイス・グレイシーに影響を受けた世代の彼はこの日、IREルール2試合を経て、コンバット柔術への出場となった。

対して長野はコンバット柔術で既に橋本圭右と戦い、掌底を被弾し続けた対戦相手がオーバータイム延長を拒否するという怖い結果を見せている。

所英男のDNAを持ち、ZSTでKOKルールも経験している長野。動いて掌底で攻め、一瞬の隙をついて関節技を狙う彼のスタイルは、コンバット柔術ルール下で戦う柔術家とは、明らかに別物だ。

だからこそ生田の競技柔術との応酬が期待された一戦は、すぐに直ぐに引き込んだ生田に対し、長野がすかさず左の掌底を打ってスタートした。その後もパスをするためではなく、相手を反応させるためのパスガードを駆使しつつ、隙を見ては掌底を落としていく。

生田はリバースデラも、当然のように掌底が待ち受けている。それでも足を絡ませつつ起き上った生田が、バックを伺う。長野に続き立ち上がった生田はすぐにシッティング、右足を長野の右足に内側から絡ませる。離れた長野は、両足首を掴んで左右に動き、ハーフのなかで正座するとトーホールドを取りつつ、掌底を打ちつける。

生田も下から掌底を打っていくが、ヒザを立ててシールドを作ったうえでの攻撃になるので、自身の体を起こす必要がなり、運動量も増える。そして上と下からの打撃では、圧倒的に上が有利であることは間違いなく、長野の掌底が次々と生田の顔面を襲う。

足関節の防御ができることで、長野は威力のある掌底を落とす距離にステイできる。

その長野の動きに合わせ、デラからクラブライドを狙いつつ、そのまま回転を続けた生田はMMAではまず見られないリバーサルでトップを取る。

正統派競技柔術家はここからパスを狙っていきたいが、長野は前転から50/50を作りトーホールドへ。この攻撃は自称「バカ足になっている」生田には効かず、下になった長野が逆に掌底を頭に受ける。

長野は左腕を差して、立ち上がるとハイタッチから試合は仕切り直しに。

残り3分20秒、座った生田に対して、長野はリバースデラを捌いて叩く。

長野のパス、生田が足を戻すという流れのなかで両者は上下から掌底を放ち、長野の限りなく真上から打ち下ろす掌底が生田に決まる。

それでも生田は右足を取って、内回しでリバーサルに成功する。さらに生田はパス狙いから、スクランブルを仕掛けた長野のバックを取り両足をフック。

仰向けにされた長野が、腰をずらして胸を合わせようとしたところで、腕十字へ。

体を起こした長野が胸を張ってハイガードを解除すると、思い切り左の掌底を振り下ろした。ここから長野の左の掌打が、連続で生田の顔面を捕える。明らかに効いた掌底攻撃に、生田の足のききが弱くなる。

リバースデラの生田は、内側から掛けた足をヒザで潰され、強烈な勢いの右の掌底で複数回、顔面を痛打される。

長野は左の掌底も入れて立ち上がると、生田の内回しに反応してヒザ十字へ。

一瞬左足が伸びかかったが、すぐに生田もずらして上をむく。すると長野は足関節に固執せず、上体を起こして再び掌底の連打で生田を追い込んでいく。

口を開き、頭が揺れる生田は残り10秒で懸命に足をきかせ、トーホールドも察知して時間切れに持ち込むものの、オーバータイムのためにケージ中央に移動する際に、足がふらついているようにも見えた。

OTでは先攻の長野はサドルを選択し、挟んでない方の右足を引き寄せてクロスヒール、ここから左足を取ってヒザ十字というアンドレイ・コピロフ張りの動きを見せる。腹ばいから上を向いた時にルーズになっていたが、長野は50/50から内ヒールにスイッチ。これを生田が抜いたところでエスケープとなった。

後攻の生田は50/50を選択も、長野は瞬時にして足を抜いてOTエスケーピング・タイムで勝利。その瞬間、生田は笑顔を見せた長野をハグした。

IBJJFの頂点を目指すアダルト世代の柔術家からすると、コンバット柔術へのチャレンジは必要ないだろう。その一方で、ホイス・グレイシーのUFCで柔術を多感な時期に知った世代の生田が何かを探求し、いや忘れ物を取りに行くように……身を削る姿勢には頭が下がる。大いに感じるものがあるチャレンジ──そして、この日のベストバウトだった。


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