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【Special】月刊、青木真也のこの一番─番外編02─バラルト✖澤田龍人「反則やり得になる」

【写真】ここから後頭部に入っているパンチは、複数回見られた (C)ONE

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。

青木が選んだ2021年7月の一番─番外編─第二弾は7月30日に行われたONE Battle Groundからグスタボ・バラルト✖澤田龍人戦について語らおう。


──青木選手が選ぶ7月の一番、番外編として複数の試合を取り上げたいということですが、次の試合はいかがでしょうか。

「澤田龍人とグスタボ・バラルトですね。この試合、澤田龍人の負けっておかしくないですか? 相手はイエロー2枚ですよ。これで負けるって可哀そうですよ」

──自分も勉強不足なのですが、イエロー1枚で攻勢点の20パーセントが差し引かれると。それって……。

「分からないですよね(笑)。どういうことなんだよって。それにしても20パーセントが2回で40パーセントだし。なら澤田龍人は判定負けにならないだろうって」

──2回目は20パーセント引かれた80パーセントのなかから20パーセントなのか。

「全く分からない。どっちしてもイエロー2回で、あの流れだと負けてねぇだろうって思いますけどね」

──急所攻撃もそうですが、イエローにならなかった後頭部へのパンチ、あれは確実にダメージを与えたと思います。澤田選手の動きが止まりましたし、その後のバラルトの攻勢は反則攻撃があったからこそと見ることもできます。

「その通りだし。あの攻撃を不当だと認めたのだから、注意が入った。つまり反則ですよね。反則だから、攻勢点はないわけで。なら、さすがに澤田龍人が勝つだろうと思っていたら、負けたのは……何なんだろうなって。反則した者勝ちになりますよね、これでは」

──キムラの態勢でのボディロックテイクダウンも、下手すると頭が落ちる角度ですし。頭を打つからダメなのか、頭を打つ可能性がある投げがダメなのか。その辺りを我々も明確に知る必要があると改めて感じました。

「そこもあるし、後頭部への反則パンチはエディ・アルバレスとユーリ・ラピクスの試合で、エディの反則負けが無効試合に覆ったのも影響しているのかと勘ぐってしまいますね。判断が難しいからレフェリーが思い切って、試合を止めることができなくなったのか」

──澤田選手があのまま頭を抑えて、試合できないとアピールしたら反則勝ちになっていたかもしれない。でも、頑張るから反則攻撃で受けたダメージを引きずって戦う……。

「そうなんですよ。澤田龍人が思い切り痛がっていれば……頑張らないで終わらせていた方が良かったのかって。でも、それはそれで少しの後頭部へのパンチで、メチャクチャ痛がる振りをする奴も出てくるでしょうし」

──サッカーみたいに、ですね。とりあえずアピールする。そしてレフェリーを欺く行為──シミュレーションが適用される(笑)。

「反則か、シミュレーションの罰則かって。それも技術になってしまいます。サッカーなんて、完全にそうじゃないですか」

──そんな見苦しいMMAは見たくないですねぇ(苦笑)。

「反則を厳格に取ると、MMAだってそうなるかもしれない。それにしても、あのレフェリーは酷いです。それ以前の問題です」

──映像を確認して、後頭部へのパンチが何発あり、そのうち何発をレフェリーが見逃したのかプロテストしても良いですよね。 ONEの競技運営陣はどういう組織なのか、ここも我々は見過ごしてきましたけど由々しき問題です。

「いやぁ、あのレフェリーは余りにも……ですよ。あれは酷いです。後頭部へのパンチで動きが止まるなら、ちゃんと対処してほしいですよね。あのレフェリングは怖さがあるッスね」

──コロナの隔離措置で梅木レフェリーがシンガポールへ行けない状況になっています。そして昨年の大会などは、島田裕二レフェリーがレフェリングをしていました。

「島田さんの方が全然、上手いですよ。止める間合いとか、タイミングとか。島田レフェリーも梅木レフェリーも、微妙なところには『コーションだすぞ』と選手にプレッシャーを掛けることができるじゃないですか。

あれがあるのとないのとでは、まるで違ってきます。コーションがあるということは、反則をグレーゾーンのうちに制止できる。あのレフェリーみたいに、やらせ放題にしているとナンボでも続ける選手も出てきますよ。今回のバラルトは完全にそれで、反則やり得になっている。澤田龍人は災難です。

で結局のところイエローより、減点の方が分かりやすい。ラウンドマストの方がMMAは判断がつきやすいというところに落ち着きます。『お前、何をいまさら言っているの』って言われそうですけど、トータルのジャッジって分かりづらいですよ。対してラウンドマストの10-9システムは公平性が担保されやすいです。

スプリットになろうが、シンプルに理解しやすいです──結果を受け止める時に」

──異論を唱えるにしても、うやむや感がない?

「そういうことですね。『おかしいだろう!』って言えるのが、トータルジャッジだと『あれ、なんなんだろうな』ってことになってしまう。澤田龍人は可哀そうですよね、アレで負けにされて連敗になるって。

入られたところから頑張っていたのに。ただ得意な部分のレスリングで攻められると、手詰まりになって引き込んでしまいます。本当はレスラーじゃないのかもしれないから、あのレスリングを途中まで使うスタイルを創っていかないと、ですね。とにかく、今回の澤田龍人の負けは気の毒でした」

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