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【Special】月刊、青木真也のこの一番:7月─その参─AJ・マッキー ✖パトリシオ・フレイレ「危うい」

【写真】ハイキックからパンチを纏め、最後はギロチン。この勝ち方はインパクトが大きい (C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。

青木が選んだ2021年7月の一番、第三弾は7月31日に行われたBellator263 からBellator世界フェザー級選手権試合=AJ・マッキーJr✖パトリシオ・フレイレ戦について語らおう。


──青木選手が選ぶ7月の一番、最後の試合は何になるでしょうか。

「AJ・マッキー✖パトリシオ・フレイレの試合ですね」

──おおBellator世界フェザー級選手権試合。フレイレが王座をAJに明け渡した一戦です。

「まぁ、パトリシオの評価ってライト級でマイケル・チャンドラーに勝ったことで爆上がりしているということなんです。チャンドラーに勝ってからは絶好調だったのが、今回は風水的に悪いような感じがしていたんです」

──風水ですか(笑)。

「風水……バイオリズムというのか、何かファイターにはあるじゃないですか。流れ、気運、巡り合わせというものがマッキーに傾いていたように感じました。それは向かい合った時にも分かったように、AJ・マッキーが強かったというのはありますけど」

──それって試合前から感じていたことですか。

「いえ、50/50だと思っていました。結果、この試合はAJ・マッキーがあの勝ち方をしたから話題になったと思います」

──勝っている間は過去の対戦相手を比較して、経験豊かな選手の方が有利だと思ってしまうきらいがあります。

「あぁ、それは分かります。MMAは打撃系格闘技と違うから、頭抜けている選手がいたとしても、戦って強くなる部分が強いですからね。この2人は特に勝ち方も良いですからね。究めてベラトールらしいマッチアップだと思いましたね」

──ベラトールというパッケージで見れば、もう最高の顔合わせであり、最高のストーリーです。

「そこなんです。そうなんですよね……。AJ・マッキーはジョージ・カラキャニャンに勝った時に強いなって思い、そこからダリオン・コールドウェル、そしてパトシリオに勝つ。まぁ、認めざるを得ないです。

と同時にあの勝ち方をしていると、それがBellatorだけで見ることができなくなります。Bellatorで見ればAJが最強です。そして国内との繋がりで、UFCよりBellatorの方が親近感を持っているファンの人もいる。そういう層もあって『AJ、最強』とかっていう反応もあります」

──そうなのですね……。

「危ういです。全く、そんなこと思えないです。UFCへ行っても活躍できるって言っちゃう人が出てくるんです」

──それだけ期待させる試合だったと思います。そして、それがBellatorだけの世界観が持てない。UFCがこの世界を総ていることが浮き彫りになります。

「でも、UFCで活躍できると思いますか」

──活躍できるかどうか、嫌らしい見方をしてマックス・ホロウェイ戦が見たいと思いました。お手並み拝見的な感覚で。

「あぁ、そうなんだ。僕は全然思わないです。ザビット・マゴメドシャリポフに勝てますか?」

──マゴメドシャリポフは無冠の帝王ですよ、UFCでも。

「だから僕はAJ・マッキーはマゴメドシャリポフ、ホロウェイ、アレックス・ヴォカノフスキーの戦いの輪に割って入れるとは思わないし。そこに行き着くまでに攻略されてしまうだろうなって。

ウィル・ブルックスは失敗し過ぎて。でもエディ・アルバレスのようなケースもある。そこは個々の力だからUFCだ、Bellatorだといって判断はできない部分はありますけど、まぁ攻略されちゃうよなって思っています。

そこがPFLとの違いですよね。PFLはPFLで完結できるだけ、選手の答え合わせが済んでいます。でもAJ・マッキーは違うので、どこまでやれるんだろうっていう見方ができるからUFCが関係しちゃってくるんですよね」

──UFCで戦うところを見てみたい。そうファンから思われることはUFC以外で戦う選手にとっての価値として、最高のモノだと思います。実際、UFCから他に流れる場合──チャンピオンが出ていくことはないわけですし。

「そうなんです。要はUFCを離れるのは都落ちです。トップは動かないです。だからBellatorにいて、UFCから流れてきた選手と戦ってもUFCに行くまでの面白さはない。

確かに、この大会はとても面白かったです。勝負カードが揃っていて。ただし、エマニュエル・サンチェスにしても元UFCのマス・ブーネルに負けちゃうんわけで。フアン・アルチュレタがセルジオ・ペティスに負けたように。ここで答え合わせが済んでしまうんです」

──AJ・マッキーがBellatorでこれ以上輝くことが難しくなってしまいますね。

「だからUFCから落ちてきた人間よりも、BellatorがUFCは取りたがらないロシア人とか見つけてきて、やらせるとかの方が面白いですよね。それ以外は、やっぱりパトリシオ戦の勝ち方を見ちゃうと見劣りするだろうし。無慈悲な見方ですけどね、色褪せて見えます。だからってUFCで──となるのは、勝手な見方でなんですけどね」

──マイケル・チャンドラーの位置で行かなければ、マッキーも下手な商売になってしまいますし。

「AJ・マッキーはその位置にあるかと思います。ただし、AJ・マッキーがUFCにいっても甘くない。そう思いますね。でも、そういう問題を抜きにして、Bellatorのパッケージは優れていて、面白い大会を開いています。実際、裏のUFCより面白かった」

──あのカードをUFCが組んでも、面白くない。でもBellatorだと面白いというのは確実にあるかと思います。

「きっとあの日の2つの大会を見ると、プレリミでも強いのはUFCなんです。Bellatorはロシア勢があれだけ出てきて、ウスマン・ヌルマゴメドフに横から当てるヒザ蹴りのKOや、ブレント・プリマスがイスラム・マメドフにラバーガードを使って殴らせないとか──僕がなぜか乗れないゴイチ・ヤマウチも含め、UFCにはない面白さなんですよね。

それに──そもそもイベント内容をUFCと比較されちゃうところが、もう凄いことで」

──なるほど、その通りですね。

「Bellatorで戦っていたら、強くなれますよ。だから日本の選手もUFC、UFCって言っているけど、フェザー級とかバンタム級の選手はBellatorで勝てるのかって話になるんです。SASUKE選手と工藤の時と被っちゃいますけど、世界とかいうなら、もっとマニアックに色々と見ないと。UFCが見えていて、Bellatorが見えていないってことがそもそもおかしくて。

『マッキーがRIZINに来たら』って意見も見ました。皆、レベルが違うと思わないのかなって。そこまでのレベルにあるのか、ないのか。ないなかでの楽しみもあるわけで。結局のところはBellatorの選手にRIZINとの提携で来てもらって、その機会に戦うんじゃなくて──そんな甘いこと言っていなくて、Bellatorと契約して向うで勝つって言う風に思わないと、渡り合えないです。そこら辺が辛いところです。

同じことを言ってしまいますけど、UFCを見ているならBellatorも見て。そこを見るなら、BRAVE CFとかUAE Warriorsも注視しないといけないってことに落ち着いてしまいます」

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