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【Road to ADCC】ADCCで頂点に立つために進化。ニッキーがレスリングアップ&パスでリオン下す

【写真】レスリングアップからリバーサル、そしてパスというのはADCCで最高のポイントアウトといえる。ここがあることで、足関節等もさらに仕掛けやすくなるだろう (C)CLAYTON JONES/ROAD TO ADCC

17日(土・現地時間)にテキサス州オースティンのJWマリオット・オースティンでRoad to ADCCが開催された。来年開催予定のノーギグラップリングの祭典=ADCC世界大会への前哨戦として位置付けられたワンマッチ大会は、注目の対戦が並んだ。
Text by Isamu Horiuchi

Road to ADCCプレビュー第2回は、後半はポイント有りのADCCで勝てるよう進化の過程にあるニッキー・ライアンとダンテ・リオンの一戦の模様をお届けしたい。

<175ポンド契約/20分1R>
ニッキー・ライアン(米国)
Def. 5-0
ダンテ・リオン(カナダ)

前回のヒカルド・アウメイダ戦においてスタンドレスリングで勝負したニッキーは今回も積極的に前に出ては、リオンの首に手をかけていなしにゆく。

そしてダブルレッグテイクダウンを仕掛けるが、リオンががぶって体重をかけるとニッキーは頭を抜く。

約3分経過時点で、ニッキーが再び飛び込んでダブルへ。リオンは倒されながらもすぐにオモプラッタを狙うが、ニッキーが正対して防いでクローズドの中へ。

すぐに立ち上がったニッキーは、リオンのガードを開かせると、左足を狙って足を絡めて倒れ込むが、リオンは落ち着いて絡みを外しながら立ち上がった。

右ヒザを前にパスのプレッシャーをかけるリオンに対し、ニッキーは内掛けで右足に絡むと内回りを狙うが距離を取られる。

リオンが再び前にプレッシャーをかけ、ニッキーは後転するように前に崩すと、その刹那、立ち上がってダブルへ移行し見事にテイクダウンを決める。上になったニッキーは再び倒れ込んで50/50&内ヒールを狙うが、ここもリオンは距離を取って立ち上がった。

ニッキーは、スタンドレスリングとガードからのレスリングアップという、まさに最近の試合で試してきた動きでリオンと堂々勝負している。対するリオンの方も、ニッキーの足関節にしっかりと対処。両者との進化が窺える攻防だ。

もともと得意のシッティングガードを取ったニッキーに対して、リオンはヒザを入れての侵攻を試みるが、巧みな腕のフレームと左ヒザのシールドに阻まれて攻め込めない。やがて左手のフレームで距離を取ったニッキーが、瞬時にシットアップしてダブルへ。またもや見事にレッスルアップして上を取ってみせた。

三たび上になったニッキーは、今度は足を狙わずに横にパスを狙うが、リオンは対応してデラヒーバガードに。やがてリオンが距離を取って立つと、ニッキーは座り込む。加点時間帯に入る前にスイープを取らせて下になろうという考えだったのかもしれないが、自ら座ったことは明らかだったのでニッキーに引き込みのペナルティが与えられた。

試合は10分を経過して加点が開始。シッティングのニッキーは、再びリオンを前に崩してからのダブルレッグを仕掛ける。が、これまであまり抵抗せずに倒されていたリオンが踏ん張る。それでも前に出たニッキーはリオンの背中を付けさせるが、動きが止まらないうちにリオンは振りほどいて立ち、両者は場外となりブレイクが掛った。

再開後、逆にリオンが右にシングルを仕掛けるが、ニッキーは距離を取る。今度はニッキーがダブルへ。尻餅をつかされたリオンだが、ここでも勢いが止まらないうちに距離を取り、場外際で立ち上がる。

再びスタンドに戻った両者。ニッキーはまたしてもダブルに入る。深く入ってクラッチを組んだニッキーは今度はゆっくり倒して勢いを作らせず、ついに上を取ることに成功した。

倒すと同時に、ニッキーはハーフ&ボディロックの状態と取る。腰を固められたリオンは足を使って浮かそうとするが、ニッキーはすかさず右足を超えてサイドに。テイクダウンとパスガードのあまりに見事な融合を見せたニッキーが、5-0とリードした。

さらに上四方から逆側のサイドに回ったニッキーは、右腕でリオンの顔面を圧迫する。嫌がったリオンが上体を起こしたところで、すかさずバックを狙うという理詰めの攻めを見せるニッキー。対してリオンもすぐに動いて、下のリオンと上のニッキーがお互いにバックを狙い合うような格好にとなり、揃って距離を取り立ち上がった。

残り6分でスタンドに戻るが、ここで右足をひきずりはじめたニッキーは、二つ目のペナルティを承知ですぐに座り込んでシッティングガードへ。

リオンは右ヒザから侵攻を試みるが、ニッキーの強固なニーシールドと左腕のフレーム阻まれ、形を作れない。先ほどまで何度も下からのレスリングアップを決めたニッキーは、足の負傷を受けて防戦に徹している。

怪我をしてなおかつ鉄壁のガードを見せるニッキーの前に、リオンは攻撃の糸口を見出せないまま時間が過ぎてゆく。最後は足を狙って自ら倒れ込んだリオンだが、この分野の専門家のニッキーは難なく防御して試合終了。

立ち上がって勝ち名乗りを受けたニッキーは、歩くのも困難で、師ダナハーらセコンドに肩を借りて試合場を去った。

放送席でインタビューを受けたニッキーは「上になろうとして、自分のかかとが尻に食い込むような形になったんだけど、その時スプロールされて外側に異変を感じたんだ。右ヒザさ。試合内容自体はすごくハッピーだよ。前の2戦では、僕がジムでやってきたことのほんの一部しか見せられなかったけど、今回はそれが見せられた。途中で怪我してしまったのは残念だけどね。怪我してからはもうレッスルアップできないと分かったから、防御に徹して、足を狙うくらいしかなかったんだ。でもADCCルールでは、僕の新しいスタイルはすごく有効だと思う」と語った。

実際、負傷するまでは強豪リオンに凄まじい強さを見せつけたニッキー。今回の試合で見せた進化の意味は大きい。以前は完全に下派だった彼が、スタンドレスリングとレスリングアップの二つを徹底強化。引き込みがマイナスになるルールにおいてスタンドで相手と渡り合う力と、上から膠着を試みる相手への強力なカウンターの手段を手に入れたことになる。

また、途中で見せたダブルレッグとボディロックパスの融合や、パスを決めてから相手に逃げ道を作っておいてバックを狙う動き等も、きわめて理詰めの素晴らしい展開だった。何より負傷して新しい武器が使えなくなった後は、以前からの強みであるシッティングガードを用いて鉄壁の防御は見事なばかり。

もし今後も大怪我等をすることなく進化を続けるようなら、世界最強の兄ゴードン以上に完成された組技師──師のジョン・ダナハーが言うところの「スーパーグラップラー」──へと成長する可能性さえ感じさせたニッキー・ライアン。負傷が癒えた後の、この20歳の若者のさらなる戦いに目が離せない。

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