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【Special】月刊、青木真也のこの一番:6月─その弐─モハメッド✖マイア「勝った時だけMMAを使うな」

【写真】デミアン・マイアを本当にリスペクトしているからの青木の柔術界への苦言だ(C)Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

2021年6月の一番、第ニ弾は12日に行われたUFC263よりベラル・モハメッド✖デミアン・アイア戦について語らおう。


──青木真也が選ぶ2021年6月の一番、2試合目をお願いします。

「ベラル・モハメッド✖デミアン・アイアです。この試合が組まれたUFCの直後にRIZINがあって。サトシ・ソウザとクレベルが三角絞めで勝ったら、日本の柔術の人たちが『柔術だぁ!!』、『三角だぁ』って、わいていたんです」

──自分のところにもSNSで、そういう喜びの声が凄く届きました。

「喜んでいましたよね(笑)。でもデミアン・マイアに触れない。マイアは内容も完敗だったけど、柔術家として凄く気合の入った生き方をしているのに。ベン・アスクレンに勝った時に『オモプラッタでスイープだぁ』、『柔術だぁ!!』ってわいていた柔術界隈の人たちは、モハメッド✖マイアには触れない。

日本の柔術家の人って、MMAで柔術っぽいモノが見られると『柔術最高』って言いたいんだなって思いました(笑)」

──自分は北米MMAで下になって勝つことの難しさは理解はしているつもりで、下でなくても柔術的な動きが見られると嬉しいです。それは足関節も同じだし、カポエイラでも首相撲でも、空手でも同じです。キックボクシング&レスリングでないMMAの王道から外れた技術が見られると。

「はい、分かります。だからデミアン・マイアが負けた時も見ているじゃないですか?」

──はい。

「でも勝った時だけ盛り上がるのは、都合良いよなって思います。都合良くMMAを見ているなって」

──ボンサイ柔術の人々が、喝采するのは良いですよねぇ。柔術の先生が勝って、『柔術最高じゃん。俺たちの先生、最強だよ』って。負けたら、彼らは落ち込むわけですから。

「はい、はい、はい。でも、MMAで勝った時だけ『柔術っ!!』って喜ぶ柔術家は都合が良い。だから僕は『日本はMMAができないヤツが柔術をやっているじゃん』って言ってきたんです」

──懐かしい、もう4年も前に論議した件ですね。柔術は柔術、MMAはMMMA。その青木選手の言い分に真向から反論させてもらった身ですが、『都合良い』という青木選手の言い分は分かります。MMAの試合で蹴りで決着がついて『キックぅ!!』、アッパーで決着がついて『ボクシングぅ!!』とわくキックボクサーやボクサーがいないのは、MMAと自分たちの競技を別物として見ているからでしょうし。

「そうですよね!! だったら負けた試合も見て、触れろって。勝った時だけMMAを使うなって」

──三角絞めの解析をYouTubeでやるぐらいの商魂があったほうが、ただ喝采しているより好きです。

「デミアン・マイアに触れろ。ムンジアルとか柔術の試合でわかないし。柔術同士では柔術最高ってならないで、MMAで勝った時にソレをMMAをやっていない柔術家が言うなら、僕は『MMAできないから』って言います。高島さんは柔術とMMAは別だっていうけど、『お前ら一緒くたにして見てんじゃん』ってなりますよ。」

──WNOやEUGとかのグラップリング・シーンより、MMAでわくのは……都合が良い。

「結局のところ、ちゃんと格闘技を見てない。だってレベルでいったら、絶対に違うわけじゃないですか。デミアン・マイアがやってきたことって……。

あとデミアン・マイアのモハメッド戦で興味深かったのは、モハメッドは佐藤天が2年近く前に戦った相手なんです。間モハメッド✖マイア戦が終わって僕、佐藤天に連絡しちゃったんですよ。『あの時に勝っていたら──デミアン・マイア戦があったかもしれなかったんだ』って。もちろん、あの後モハメッドは連勝しています。でも、それは佐藤天にもあり得るわけだし。

彼はそういう風に勝っていると、デミアン・マイアと戦うことができる環境にあるんですよね。僕たちのようなグラップリング寄りの柔術が好きな人間からすると、デミアン・マイアとできるって凄いことだし。それを想像するだけで、ドキドキしちゃったんです」

──想像するだけで(笑)。

「そうなんです(笑)。そんな混沌とした中で、佐藤天は頑張っている。だから佐藤天がインタビューで話している内容が、真実味を増してくるんですよね。そうやって佐藤天はリアルな中にいるのと、日本は違うなって……僕は思いました」

──別物になりつつありますね。いや、もうなっているのでしょうね。

「佐藤天が何をやっているのか。そういうことだと思います。平たい言葉ですけど、夢がある。モハメッドはアブダビ筋に押されているのはあるかもしれないですけど、まぁそこも含めて夢があります」

──そのモハメッドですが、最初にシングルレッグで尻もちをつかされて、バックを譲ることなく立ち上がっていました。デミアン・マイアの壁レスを遮断したことで、その後のテイクダウン防御もあったと思います。

「それをどれだけの人間ができるのか。でも、最初のアレ以外は取れてないから、マイアも落ちてはいるんですよね。なんだかんだといってベラル・モハメッドは強いし、UFCのランキングから零れそうな選手は強いということですね」

<この項、続く>

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