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【Grachan48】長岡弘樹とGrand王座統一戦、49歳・桜井隆多─01─「諦めが悪いんじゃないですかね」

【写真】魂の一本勝ちから1年7カ月、桜井隆多が本来は防衛戦の相手だった長岡と王座統一戦を戦う(C)MMAPLANET

20日(日)、東京都大田区の大田区産業プラザPIOで開催されるGRACHAN48。そのメインイベントはGRANDウェルター級タイトルマッチ、正規王者・桜井隆多×暫定王者・長岡弘樹の王座統一戦だ。
Text by Shojiro Kameike

桜井隆多は2019年12月、ルクク・ダリに勝利して同王座を獲得し、昨年6月に長岡を挑戦者に迎えて防衛戦を行う予定だったが、靭帯損傷により試合は延期に。

仕切り直しという形で迎える今回の防衛戦――現在49歳の桜井、その心の中には新たな闘志が生まれていた。


――今回、ルクク・ダリ戦で勝利し獲得したGRANDウェルター級王座の防衛戦を、暫定王者・長岡弘樹選手を相手に行います。そのダリ戦では試合後、SNSで故カール・ゴッチさんという名前を挙げていましたね。

「ハハハ、そうですね。ゴッチさんには少し教わったことがあるだけで、弟子といえるかどうかという感じなんですけど」

――そこでカール・ゴッチさんの名前が出てくるあたりが、桜井選手のキャリアの長さを表しているように思いました。

「確かに(笑)」

――桜井選手はプロデビューが1998年、年齢も現在49歳です。ここまで現役を続けることを想像されていましたか。

「いやぁ、あの頃は先のことなんて何も考えていなくて。そう言われると『よくやっているなぁ』って自分でも思います」

――キャリアの中で、過去にはDEEPのベルトを獲得しながら、2013年から2018年までの間に7連敗を喫しました。GRAND王座についたのは、そんな状態からの復活劇といえます。

「選手として考えたら、あの戦績では引退するという選択肢もあると思います。いろんなケガをして、自分の思うような動きができなかった。でも、そのケガを直したら、まだできるんじゃないか、と思えて……。すると自分の中に『まだ辞められない』という気持ちがわいてきて、今に至っています」

――そのケガは、今は完治しているのですか。

「手術とかして、一番ひどかった時期に比べると、徐々にコンディションも良くなってきています。思うような動きができない時も、それを挽回できるような動きができたり。……何て言うのか、諦めが悪いんじゃないですかね(笑)」

――ハハハ。でも、さすがに靭帯損傷で試合をキャンセルというのは……。

「はい、選手生命に関わるケガですよね。それでもベルトを返上することなく、現チャンピオンとしてやらせていただいているので、防衛戦で自分の責任を果たしたいという気持ちがありました。長岡選手も『ぜひ桜井選手と試合がしたい』と言ってくれて。待ってくれている人がいるなら、その試合に向けて頑張りたいと思ったんです」

――なるほど。

「でも途中から……これは自分の勝手な考えなんですけどね。MMAって相手を殴るものじゃないですか」

――はい、もちろんです。

「僕はキャリアも長いから、データも残っているし、試合映像もある。僕が試合で何をやるかも、長岡選手は分かっているはず。それで、僕と殴り合って勝てるから『桜井選手とやりたい』と考えたのだとしたら、『長岡選手にナメられているのかな?』と、メラメラ燃え上がってきて……(苦笑)」

――なぜですか(笑)。

「長岡選手は、僕がベルトを返上して、僕以外の選手とタイトルマッチをやるという選択肢もあったと思うんですよ。でも僕とやりたい、っていうのは――」

――ではMMAPLANETで、長岡選手のインタビューを読んでください。

「そうなんですよね、分かっています(苦笑)。僕のことを尊敬しているから試合がしたい、ということも聞きました。ただ、自分が動けるようになってくると、そんな気持ちになってきて」

――つまり、ナメられたら負けるわけにはいかない。今もなお、そんなモチベーションの上がり方があるということですね。

「はい。それとまだ、自分自身に期待しているんです。次の試合では、何ができるのか。その先はどうなるのか。そんな自分自身への期待も大きいですね」

――ただ、GRACHAN初参戦となった間宮晃仁戦(2019年3月、判定勝ち)の試合内容は、ご自身が満足いくものではなかったように感じられました。

「満足できていなかったです。年齢の影響もあるのかもしれないけど、思ったとおりの動きができませんでした。ダリ戦でも最初に一発もらい、目が見えづらくなったこともあって、攻撃の面ではうまくいかなかったですね」

――攻撃の面では、ということは防御については……。

「攻められてからの展開は、練習でやっていたことが出たと思います。

それが最後の腕十字でした。あの時は、たとえ腕十字に失敗しても次の展開がすぐに浮かぶぐらい、冷静だったので。それもキャリアのおかげだとは思います」

――ダリ戦直後のインタビューで、「最後は冷静だった」と言っていましたね。

「そういった展開については、自分の動きも戻ってきていると思います。あとは、攻撃の面で出せるかどうか。次の試合では、そのギャップを埋めて、思うような攻撃を出していきたいです」

<この項、続く>

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