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【Grachan48】桜井隆多とGrandウェルター級王座統一戦、長岡弘樹─01─「楽して勝つことはできない」

【写真】「試合は、楽して勝つことはできない。練習で出せないことは試合でも出ない」──素晴らしい言葉だ(C)MMAPLANET

20日(日)、東京都大田区の大田区産業プラザPIOで開催されるGRACHAN48で、長岡弘樹が桜井隆多とのGRANDウェルター級王座統一戦に挑む。
By Shojiro Kameike

2019年12月にウィル・チョープを下し、桜井の持つウェルター級王座への挑戦権を獲得した長岡。しかし桜井が負傷で防衛戦を行うことができず、長岡が暫定王者に認定され、今回改めて正規王者との統一戦が行われることになった。

現在41歳、プロキャリアも20年を数えるが、「今が一番強い」と言い切る長岡に、その理由を聞いた。


――1年半越しの桜井隆多戦を直前に控えた、長岡弘樹選手です。長岡選手はプロデビューが2001年で、次の試合が64戦目。そのキャリアを振り返ると、ここ10年でケージで戦うようになってから、勝率が高くなっているように思います。

「そうですね……確かにケージで戦うようになってから、というのはありますが、それだけではないと思うんですよ」

――というと?

「例えば自分が得意としているテイクダウンは、ケージよりもリングのほうが、やりやすい場合もあるんです。ケージに押し込むと、スペースがないから相手の背中側でクラッチできない時もありますよね。でもリングだと、そこに隙間ができてクラッチしやすい場合もあるので。今はそれ以上に、ようやく自分の勝ち方が分かってきたんです。それこそ30代、40代になってから」

――えっ!!  20代の頃とは何が変わってきたのでしょうか。

「20代の頃は、戦い方に迷いがあったと思うんです。やっぱり大舞台を目指すうえでは、試合内容も評価されると考えていたので」

――どうすれば魅せる試合と呼ばれるものが、できるかどうか……。

「はい。もともと自分はそういうタイプではないのに、いろいろ考えることで、試合の中で迷いが出ていました。あと、ルールの違いもあったと思います」

――なるほど。

「DEEPに出させていただいていた時は、試合全体を通じての採点でしたよね。でも最近の試合は、ラウンドごとの採点です。それが自分のスタイルには合っていたと思いますし、そこから自分の勝ち方が見えてきたように感じます」

――ここ最近の試合では特に、ケージ際でのスクランブルを制して勝つという内容が多いですよね。ただ40代になって、下の世代を相手にその試合展開を貫くことができるのは驚きです。

「今もずっと『苦しい時にどうするか』という練習をやっています。試合は、楽して勝つことはできない。そして、練習で出せないことは試合でも出ないし、練習でやってきたことが試合に出る。

『20代の頃は試合で迷いがあった』と言いましたけど、今はそれだけのことを練習でやってきたという思いがあって、ケージに入る前に迷いはなくなるんです」

――そのために、どのような練習を?

「MMAスパーで追い込まれた時や、疲れた時にどう返していくか。あるいは、相手の打撃のプレッシャーに負けることなく、どうやって自分の勝ち方に持っていくか──ですね。それができるのは、ヤン坊のおかげでもあります」

――雑賀ヤン坊達也選手。パンクラスの現ライト級暫定王者ですね。

「はい。ヤン坊は打撃が強いですから、彼のパンチに対して自分がどう攻めていくのか。ヤン坊が成長してから、自分にとってキツい練習相手になってくれているので、本当に助かっています」

――パンクラスでは3試合連続の1ラウンドKO勝ち。パンチをかわして組み付くための練習では、これ以上ないパートナーでしょう。

「それと、やっぱり僕も負けず嫌いなので(笑)。練習でヤン坊に負けたくないですからね」

――ハハハ、ジムとしての成長も大きいわけですね。一方、2018年12月の竹川光一郎戦(判定勝利)以降、ライト級からウェルター級に上げて戦っています。階級を上げたことは、試合内容に影響があったのでしょうか。

「竹川戦の前にMMAPLANETのインタビューでもお話したのですが、やはり年齢を重ねて減量にも影響が出ていました。体重が落ちにくくなり、減量が厳しくなって……。でも、まだ自分にはできることがある。できることをやってから考えたい。その一つが、ウェルター級に上げることでした。ウェルター級に上げても納得のいく試合ができなかったら、その時また考えよう、と」

――それを感じたのが、竹川戦の前の試合……西川大和戦だったのですか。

「はい。でも、それは年齢差とは関係なく、当時は自分のほうが格上だったと思います。でも、その相手に満足のいく動きができなかった。だからウェルター級に上げてみようと考えたんです」

――……もしウェルター級でも満足のいく試合ができなければ、引退する可能性もあったのでしょうか。

「それが全てではないですが、引退を考えてしまう可能性はあったかもしれません。でも僕は、自分の可能性に賭けたかったんです。できることは全部やってから考えようと。そして、ウェルター級に上げると減量も楽になって」

――年齢を考えたら、ケージ際の競り合いでスタミナが落ちても不思議ではないです。

「それが自分の勝ち方も分かってきて、さらにウェルター級に上げることで、集中力も途切れることなく、下の世代の選手とも競り合って勝つことができています。これまでのキャリアの中で、今の自分が一番強いと思っています」

<この項、続く

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