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【WHO08】ニッキー・ライアン、重厚さ増した組みでBJ・パーチに「なぜか」スプリット勝利

4月30日(金・現地時間)、テキサス州オースチンのJWマリオットで、限定有観客大会として開催されたWNO 08。

レビュー第4回は若手の台頭が目立つグラップリング界にあって忘れてはならないニッキー・ライアンが、10thPlanetのPJ・バーチを相手に見せた重厚な一戦の模様をお届けしたい。
Text by Isamu Horiuchi


<175ポンド/15分1R>
ニッキー・ライアン(米国)
Def. 2-1
PJ・バーチ(米国)

当初「自分はいつも下から足関節を極めて勝つから、今回はできる限りそうせずにレスリングで勝負したい」と語っていたニッキー。すぐに座ると、バーチの右足に両足を絡めて崩しながら左足を取って立ち上がり、シングルレッグ狙いに。バーチはすかさずキムラロックのグリップから後方へ投げてカウンター。その動きについていってバックを取りかけるニッキー。だがバーチもすかさずスクランブルで振りほどいて距離を取ってみせた。

再び座ったニッキー。今度はバーチの右足を取ってのシットアップを狙うが、バーチはすかさず距離をとって回避。バーチは改めて右ヒザを前に出してのパスを狙おうとするが、ニッキーがそこにすかさず足を絡めてゆくと、距離を取ることを余儀なくされる。

その後もニッキーが下から足を絡めて仕掛けてゆき、バーチがそのたびに回避する展開が続く。バーチの方はニッキーのヒザと腕のフレームに阻まれてほとんどパスを仕掛けられない。ニッキーはバーチが立つと常に足でコネクションを作って崩し続け、逆にバーチが低く攻めようとすると鉄壁のシールドとフレームで距離を取る。そして常にニッキーはバーチに正対してそのセンターを取り続けている。

途中、ニッキーが下からバーチの左腕を肩にかけて伸ばしかける場面を作るが、バーチは距離を取って回避。またニッキーは下からバーチの右ヒザを抱えて立ち上がってシングルレッグで上を取りかけるが、D1レスリングベースを持つバーチはそのたびにスクランブルに成功した。

残り時間が少なくなっていくが、バーチはニッキーのシールドとフレームを超えられない。逆にニッキーの方も下から足を取りに行くものの、バーチに早めに距離を取られていい場面を作れない状況が続くなか、試合は終了した。

ジャッジは2-1でニッキーを支持。フィニッシュに迫る場面こそ両者ともなかったものの、ニッキーが常に相手のセンターを取って試合を支配し、何度かバーチを崩して上を取りかけ、さらに一度バーチの左腕を伸ばす体勢まで作ったことを考えると、割れたのが意外な判定だった。

試合後勝者は「こちらのテイクダウンに対する彼(バーチ)の反応が予想以上に良かったんだ。キムラロックを狙ってくるのは分かっていたんだけど。僕は練習では相手を抑え込めるんだけど、彼のことは抑えこめなかった。正直この試合の出来には満足できないよ。僕の最悪のパフォーマンスの一つだったと思う。サブミットできなかったし、脅かす場面すらも作れなかった。今後はもっと抑え込みを強くしないと」と語った。

確かに今回派手な勝ち方はできなかったものの、それは得意技に頼らず、試合を通して課題を克服しようとした結果。強豪を相手に目先の勝利だけでなく将来まで見据えた戦いをし、完勝してなお反省する19歳の未来は、明るい。

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