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【ONE & OPMMA】ONEがインドネシアのONE PRIDE MMAと戦略的提携へ。2億3千万の武道熱を掘り起こす

【写真】イスラム教国家のインドネシア。シラットに出場する女子選手は、ビジャブで頭部を覆っていることもある(C)ONE PRIDE MMA

先日Russian Cagefighting Championship(RCC)とFair Fight Promotion(FFP)をフィーダーリーグとして、両イベントが主催するRoad to ONE大会をONE Supper Appでライブストリーミングすることを発表していたONE Championshipが、インドネシアのMMAプロモーション=One Pride MMA(※OPMMA)と戦略的提携を結ぶことが決まった。

旗揚げ第2回大会が開かれ、ONEとともにMMA市場が成長したインドネシアのフィーダーショーにONEが投資し、さらなる人材の育成及びワールドクラス・イベントの開催を目指すこととなった。


ONEにはプリシラ・ガオール、アドリアン・マティス、スノト、ステファー・ラハルディアン、ルーディ・アグスティアンらインドネシア人ファイターが活躍しているが、ここに挙げた選手のなかでは、アグスティアンがOPMMAでキャリアを積んでONEにステップアップを果たしている。

OPMMAは2016年4月に、TV ONEのプレジデント・ディレクターでインドネシアMMA委員会・代表であるアドリアンシャウ・バクリー氏が旗揚げした大会で、この4年で39度のイベントを開催、コロナ禍以降も7カ月の休止期間を経て9月から活動を再開している。

男子7階級、女子1階級と8階級でチャンピオンを認定しており、女子がストロー級王座が設けられているのに対し、男子では珍しくアトム級王座があるのもインドネシアらしいといえるだろう。またケージ使用でMMAだけでなく、国技といえるペンチャクシラットの試合を組んでいるのも大きな特徴だ。

そのペンチャクシラットの試合は、アジア大会の正式種目にも採用されている防具着用&ポイント制のスポーツ・シラットとは違い、オープンフィガーグローブ着用のフルコンタクトで争われるシラット・ベガス(フリースタイル・シラット※事実上、テイクダウン有り&寝技禁止のシュートボックス・ルール)が採用されている。

アジア大会やSEAゲームで正式採用されているスポーツシラット(C)Peksi Cahyo

2億3千万、中国、インド、米国に次ぐ人口を誇るインドネシアの土着武道であるシラットは、それこそ数えきれないほどの流派が存在しており、ジャワ島中央部ではペンチェク・ドゥルというロープの代わりに竹が使用されたリングで、素手&素足で投げが認められた試合も行われている。

セブニ・シラットは伝統派シラットの一流派。開祖セブニはオランダ領だったインドネシアに侵攻した旧日本軍と手を組み、兵士の育成に努めたといわれている(C)MMAPLANET

先に挙げたスポーツ・シラットを統括するIPSI=インドネシア・ペンチャクシラット連盟はスポーツ省の管轄で、伝統的な武術としての側面を残すMASPI=インドネシア・ペンチャクシラット委員会は文化庁の担当となっている。

この両者は反目しあうことなく、伝統武道と国家的スポーツの両輪としてインドネシア格闘技界をリードしており、アジア全般にスポーツとしての普及に努めている。

ここにOPMMAで組まれているフルコンタクトのフリースタイル・シラットがMMAへの橋渡し役となり、さらに国内でトップになるとONEというグローバルステージにステップアップができる。今は──正直、まだまだという表現ができるインドネシアのMMA界だが、このヒエラルキーが存在することで、数年後には大きく形を変える可能性もある。

なんといってもONEの功績は東南アジアにMMAを根づかせたこと。今回のストラテジック・アライアンスが、マレーシアのシラット、フィリピンのアーニス、ミャンマーのラウェイ、カンボジアのクンクメール、そしてインドのクシュティと確立できれば、どの大陸でも成し遂げることができてない──土着武道とMMA、そしてワールドステージがリンクすることになる。

OPMMAのイベントがSuper Appで視聴できるのか、また提携期間など詳細は明らかとなっていないが、非常に興味深いインドネシアへのインベストとなりそうだ。

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