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【UFC173】ファーガソン戦に挑む菊野克紀 「ゴロゴロゴロゴロと」

2014.04.03

Katsunori Kikuno

【写真】今回のインタビューは、ひかりTV・UFC中継の解説をした直後に行われた(C)MMPLANET

5月24日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスMGMグランドガーテン・アリーナで開催されるUFC173「Barao vs Dillashaw」に水垣偉弥とともに日本から出場する菊野克紀。

TUF13優勝、UFC戦績4勝1敗のトニー・ファーガソンが相手となるオクタゴン2戦目に向け、菊野に話を訊いた。

──トニー・ファーガソンという名前を聞き、ピンときましたか。

「知らなかったので、名前を聞いてから映像を見ました」

──TUFシーズン13の優勝者、いうなればUFCの本隊に位置する選手です。そんな選手とラスベガスで戦うということについては、どのように捉えていますか。

「チャンスだなって思いました。人気のある選手と、ラスベガスで戦うことができる。もの凄くアウェイだと思いますが、楽しみです」

──ライト級のなかでも、リーチのある選手だと思います。試合映像を見て、どのような印象を持ちましたか。

「う~ん、打撃もできてレスリングもできる。気持ちも入って、前に出ることができる選手なので、本当に今のMMAの選手だなっていう感じがしました」

──どのような部分から崩していきたいですか。

「僕はトニー・ファーガソン選手に勝つための練習はしていないんです。誰にでも勝てる練習をしています。だから、これまでの延長ですね。空手の稽古で誰にでも勝てる剣を作って、高阪さんの指導で負けないための盾を作る。そういう練習を今、しています」

──UFC初戦の相手クイン・マルハーンは規格外の体型の持ち主でした。そして、試合後にそういう相手と戦うときは似た体形の選手とのスパーが必要になるというようなことを言われていました。ファーガソンのような体型の日本人選手もそれほどいないと思いますが、何か特別なことは考えていますか。

「やりたいと思っています。身長が183センチで、リーチが190センチもあるそうです。やはり少しは慣らした方が良いなと思うので、キックのジムでも、どこかで近い体型の選手と稽古したいと思います」

──対人練習で間合いを掴むということですね。

「ハイ、そうですね。マルハーン戦では試合場で、その遠さを初めて感じてアジャストするのに少し時間が掛かってしまいました。だから、『こんなに遠いんだ』ということを先に体験しておけば、アジャストしやすいと思います。ソレを肌で感じておきたいです」

──マルハーン戦が生かせるということは?

「あの遠さ、凄く遠く感じたので、彼に僕の拳が当たるまでに二歩、歩かないといけなかったです。つまり一歩目を踏み出した時点で、一発食らってしまうリスクがあったので、なかなか掴めませんでした。ファーガソン選手はマルハーン選手よりも打撃が強いでしょうし、距離がマルハーン戦より近いといっても、簡単に入れるモノじゃない。なので間合いの感覚、距離感を感じておく必要があると思います」

──マルハーン戦と比べ、ファーガソンの方が自ら仕掛けてくるケースが多くなると考えられます。

「ハイ、僕もそう思います。リスクも高くなりますが、チャンスも多くなります。僕がこれから上がっていくには、そういうパンチ、テイクダウンにガンガン来る選手に勝たないといけない。僕はそういう相手に勝つための練習を今、やっています。そういう意味では良い試金石というか、自分を試せる場になると思います」

──前回の試合から約2カ月、これから次の試合まで2カ月。沖縄拳法空手の練習をこの4カ月続けることで、どの部分が成長できると思いますか。

「本当にこの1週間ぐらいで、もの凄く強くなっている自信があります。空手の理論とMMAが、自分のなかでつながった部分があって――。実際にスパーリングのなかでも凄く良い感じですし、今まで苦手としていた選手でも、制圧できるようになったんです。だから、うん、具体的に言うと――」

──具体的に言ってしまっても良いのですか……。

「これは全然構いませんよ。言っても真似もできないし、どうにもできないと思います。僕は重心が上下しなくなり、低い状態のままでスーと動けるようになりました。これによって、相手がパンチに来ようが、テイクダウンに来ようが、潰すことができる――強い状態で移動できるようになったんです。これは攻防に置いて、もの凄く強い部分を持つことを通じているので、凄く自信になっています」

──それは動いている相手に対し、止まっている標的を狙うように打撃が出せるようになるということでしょうか。

「沖縄拳法空手の動きは、ボーリングのボールのような動きなんです。普通の人の動きは、地面を蹴ってポンポンポンと弾みをつけます。沖縄拳法の動きは弾まない。ゴロゴロゴロゴロという動きなので、どの時点で当たっても強い。それを作ることができます。それに、よく見られる弾む動きは近づいてきているのも見やすく、分かりやすいです。

それがスーと動くと接近に気付けない。気付いたとしても、反応できない。だから重たいし、反応できない動きが僕はできるようになってきました。なので僕は今、良い感覚があります」

──下がる時にも使えるのですか。

「う~ん、下がることは考えていなかったのですが、出来ると思います。ただし、基本は前に行きます」

──前への方が動きやすい?

「動きやすいですし、守りやすいです」

──では、菊野選手は練習で可能な動きを試合に即、持ち込むことが可能と考えているのでしょうか。

「基本は前に出ることです。それには自信が大切になってきます。前に出てテイクダウンを取られるんじゃ、困るわけです。でも、この重たい状態、強い状態で前に出られるので、テイクダウンも取られない。そんな自信があれば、思い切って入っていけるんです。接触点でテイクダウンを取られやすいので、それがゴロゴロゴロゴロと行くと、負けないです」

<この項続く>

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