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【WJJ Expo】Day1 キーナン、カイオ・テハも妙技炸裂

Caio Terra vs Nam Phan

【写真】ガードからのバラトプラッタとは恐れ入る。健闘したナム・ファンの潜りからの仕掛けが古く見えた

ミヤオ、に続きキーナン、テハが魅せた、進化する柔術のフロンティア。9~10日(土~金・現地時間)、カリフォルニア州ロングビーチにあるロングビーチ・コンベンションセンターにて、ヘンゾ・グレイシーが代表を務めるワールド柔術エキスポ(世界柔術博覧会)が開催された。Day 1の9日の模様、スーパーファイト3試合を振り返りたい。
Photo by Susumu Nagao

Keenan Cornelius vs Lucas Leite<ノーギ・IBJJFルール/10分1R>
キーナン・コーネリアス
Def. by 腕十字
ルーカス・レイチ

茶帯時代に世界を2度制し、2011年には黒帯で柔優勝。ノーギ柔術では世界を2度制しているハーフガードの名手レイチと、先日のADCCで3位入賞し、新世代柔術家の力をみせつけた新黒帯キーナンの対決。かつて黒帯に昇格したばかりのクロン・グレイシーに連勝し、若い力の壁となってみせたレイチは、今回も気合い十分。得意のハーフガードからシングルレッグに移行し、場外までキーナンを追いかけてゆきアドバンテージを奪取した。ポイントを先取されたキーナンは、得意の下から回転しての仕掛けを狙うが、レイチはうまく距離を取り、リードを守った時間が経過してゆく。

しかし残り、時間1分となったところで、片足担ぎの体勢に入ったレイチの左腕をキーナンがキムラグリップで捕獲。そのまま自らの左足をレイチの頭を超えてこじ入れ、背中を支点に回転して腕十字へ。解説のヘンゾが「ビューティフル!」と叫ぶ見事な仕掛けから、たちまちレイチの左腕を伸ばしてタップを奪ってみせた。

技としては以前から存在した下からのファーサイド・アームバーを、新世代柔術家ならではの回転力で極めてみせたキーナン。新旧の技術の融合による柔術のさらなる発展の可能性を見せてくれた一戦だった。

Rafael Lovato vs Murilo Santana<ノーギ・サブミッションオンリー/20分1R>
ラファエル・ロバトJr
Draw
ムリーロ・サンタナ

先日のノーギ・ワールズの最重量級で優勝したロバトと、無差別級を制したムリーロという2人のトップ柔術家同士の戦い。実力の拮抗した両者だが、ロバトが仕掛け、ムリーロが防御に回るシーンが目立つ展開に。ロバトは下からキムラを仕掛け、見事にサンタナをスイープしてみせるシーンもあったが、サンタナも極めさせず。サンタナも下からの足関節狙いを見せたものの、お互い決め手に欠きドローに終わった。

Terra vs Nam Phan<ノーギ・IBJJFルール/10分1R>
カイオ・テハ
Def. by バラトプラッタ
ナム・ファン

柔術界軽量級世界最強の座に君臨し続けるテハに、TUF、UFCでの活躍で知名度の高いファンが挑んだこの試合。テハはハーフガードを取ると、回転して50/50に持ち込み早々にスイープを極めてみせる。下から返そうとするファンの上で、軽やかに動いてパスを決めたテハはそのままギロチンへ。あわや秒殺かと思われたが、ファンもここは意地を見せてエスケープ。

その後もテハはキムラ狙いからバックを奪い、さらに足を絡めて股裂きに移行し、ツイスターも狙える体勢を作るなど多彩な技術を披露。凌いだファンも果敢に膝十字を仕掛けるが、防いだテハはファンと背中とマットの間に潜り込む(本人の言うところの)「モダン柔術」ムーブでバックを奪取する。

背後からキムラグリップを作ったテハは腕十字に移行。極めにゆくテハは、自分の右腕を捉えたファンの肘の内側に絡めて、バイセプスロック(プロレスで言うキーロック)のプレッシャーをかける。懸命にディフェンスするファンが上になると、テハはファンの右肘に下から入れた右腕を、改めて上から入れ直す。ここで解説のブラウリオ・エスティマが「バラトプラッタ狙いかな?」とコメント。

このバラトプラッタというのは、軽量級柔術界においてテハとともに世界のトップで戦う「バラタ」ことハファエル・フレイタスが考案した技術(ちなみにフレイタスは、現在放送中のTUF18のイリミネーション戦で、優勝候補コーディ・ボーリンジャー相手に大激闘を展開した末に、凄絶な敗北を喫している)。バイセプスロックのような形で相手の腕を固めてから、体をずらして相手の肩関節を極めるという高等技術だ。やがてテハはエスティマの指摘通りに体をずらしファンの肩を極めにゆく。ファンが動いて抵抗すると、テハは入れた右腕を左腕に入れ替えて仕掛け直し、ファンからタップを奪ってみせた。

結局、さまざまなスイープやサブミッションを繰り出したテハが存分にファンタジスタ振りを発揮した上で、ライバルが考案した難技を用いて圧勝。ただし、最強王者相手に粘り、ここまで技を繰り出させたファンもまた、観衆や主催者の期待に応えたと言っていいだろう。テハも試合後インタビューにて「僕のルールで戦ってくれてありがとう」とファンを称えてみせた。

ワールド柔術エキスポでは、さまざまな有名選手、師範によるセミナーやサイン会、各種展示も行われ、第1回に続き格闘技写真家の長尾迪氏と、ブラジルのMMAジャーナリストのマルセロ・アロンソによる写真展も開かれ好評を博した。

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