この星の格闘技を追いかける

【UFC Fuel07】伝統派MMAファイター=ネルソンと強打のマヌワ

Nelson

【写真】沖縄剛柔流+グレイシー柔術=グンナー・ネルソン。超現実主義のUFCで、ファンタジーを感じさせてくれる格闘家だ(C)GONGKAKUTOGI

16日(土・現地時間)、ウェンブリーアリーナでUFC on Fuel 07「Barao vs. McDonald」が開催される。今やブラジル、アジア、豪州に広がるUFCのマーケットにあって、北米に次いでレギュラーで大会が開催されるようになった欧州&英国。4月には2度目のスウェーデン大会も控えており、欧州のファイターたちの成長を支えている。そんな注目の欧州勢が、今大会にも名前を連ねている。

特に気になるのがMMA無敗のジミー・マヌワ、グンナー・ネルソンの2人だ。剛柔流空手を学び、ヘンゾ・グレイシーの黒帯という経歴を持つネルソン。MMA戦績9勝1分でUFCデビューを果たすと、ダマルケス・ジョンソンとの試合では、伝統派空手流の構えとスイッチを織り交ぜた前後のステップで間合いを測り、テイクダウンからパス、マウント→バック、最後はリアネイキッドチョークと流れるような寝技で一本勝ちを収めた。

バックボーンを活かした動きで白星発進となったネルソンに用意された相手は、SRCミドル級王者として活躍したジョルジ・サンチアゴだ。日本登場前にはUFNでも試合をこなし、ストライクフォースのミドル級トーナントを制しているサンチアゴは、SRCを離れた後、UFCに再参戦もブライアン・スタン、ダミアン・マイアに連敗してリリースの憂き目にあう。その後、TFCでレオナルド・ペサーニャとジャスティン・ガスリーを下して、ウェルター級ファイターとしてストライクフォースと交渉のなか、同プロの活動停止が決定的となり、UFC返り咲きを決めた。

MMAのキャリア&戦績ではネルソンを大きく上回るサンチアゴだが、UFCで行き来を繰り返しているように、決してトップ選手だとはいい難い。またSRC時代と比較して明らかに腰を落として重心を低くしたスタイルは、強打を当てる確率が高くなる一方で、ステップワークや蹴りをスムーズに出すことが難しくなった。

ステップ・スイッチを多用し、間合いで打撃もテイクダウンもコントロールするネルソンにとっては、サンチアゴのビッグヒットさえもらわなければKOもしくは一本勝ちも計算できる試合だ。ジョンソン戦に続き、ネルソンがどのように試合を組み立ててフィニッシュを狙うのか。経験値の高い相手だけに、楽しみな一戦となる。

ナイジェリア出身で英国在住のハードパンチャーのマヌワは、UCMMAやBAMMAといった当地のプロモーションで活躍。昨年9月にUFCデビューを果たすと、AKAのカイル・キングスベリーにTKO勝利を収めている。

Mnuwa【写真】まさにナチュラル・ボーン・ストライカーといった感じのジミー・マヌワ、完成度の高さが求められるシリル・ディアバテ戦に挑む(C)GONGKAKUTOGI

マヌワは左ボディを基点とした攻撃を得意とする典型的なストライカーだ。カイル・キングスベリー戦でも左ボディを効かせてから、顔面への右フック、左ミドルやヒザ蹴りでのボディ攻めを見せた。ボディブローを得意としつつも、ボクシング一辺倒ではない、キック&ムエタイの要素が強いスタイルといえる。反面、テイクダウンの防御やトップポジションを奪われてからの展開には不安を残す。カイル・キングスベリーにテイクダウンを許し、ハーフガードからもぐり系のスイープを仕掛けて立ち上がることに成功しているが、トップポジションを許した時間は短くなかった。

キックボクシング的な打撃を武器とし、テイクダウンを許すと脆い、という部分で、対戦相手のシリル・ディアバテも以前は共通点が多い選手だった。ディアバテはUFC戦績4勝2敗、昨年11月のチャド・グリッグス戦では絞め技で一本を奪っているが、基本はスタンドの打撃で圧倒し勝利に結びつけ、テイクダウンを許して一本負けという――得意・不得意な分野がはっきりと分かれている。

良く似たタイプの2人だが、約11㎝の身長差がある(マヌワ=187㎝、ディアバテ=198㎝)。スタンドの打撃、しかもパンチの回転の速さで勝負せず、距離を取りながら戦う両者において、この身長差は試合展開に影響を及ぼすことになり、特にマヌワにとっては大きなハンデだ。

そうなれば自ずとマヌワにはスタンドの打撃以外のスキル、いかにテイクダウンを織り交ぜた試合運びが必要とされる。自分の武器が通用しない相手をどう攻略するかはMMAファイターとしての完成度と直結し、マヌワがUFCのトップ戦線まで勝ち残れるかどうかにつながる。ディアバテ戦の勝敗・試合展開でマヌワの今後の可能性が見られるはずだ。

■UFC Fuel 07「Barao vs. McDonald」対戦カード

<UFC暫定世界バンタム級選手権試合/5分5R>
[王者]ヘナン・ベラォン(ブラジル)
[挑戦者]マイケル・マクドナルド(米国)

<フェザー級/5分3R>
カブ・スワンソン(米国)
ダスティン・ポイエー(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
ジミー・マヌワ(英国)
シリル・ディアバテ(フランス)

<ウェルター級/5分3R>
グンナー・ネルソン(アイスランド)
ジョルジ・サンチアゴ(ブラジル)

<ライトヘビー級/5分3R>
ジェイムズ・テフナ(オーストラリア)
ライアン・ジモー(カナダ)

<ウェルター級/5分3R>
チェ・ミルズ(英国)
マット・リドル(米国)

<ライト級/5分3R>
テリー・エティム(英国)
へニー・フォルチ(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ポール・サス(英国)
ダニー・カスティーリョ(米国)

<フェザー級/5分3R>
アンディ・オグル(英国)
ジョシュ・グリスピ(米国)

<ミドル級/5分3R>
トム・ワトソン(英国)
スタニスラヴ・ネドコフ(米国)

<バンタム級/5分3R>
ヴァウアン・リー(英国)
手塚基伸(日本)

<フライ級/5分3R>
フィル・ハリス(英国)
ユリシーズ・ゴメス(米国)

PR
PR

関連記事

Movie