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【UFC137】巧妙な軸足移動=BJ、出所不明のニックの拳

2011.10.27

BJ29日(土・現地時間)、ラスベガスのマンダレイベイ・イベンツセンターで開催されるUFC137「Penn vs Diaz」、メインはウェルター級3回戦のBJ・ペン×ニック・ディアズ戦だ。

【写真】左ジャブ、そして右ストレートも伸びるBJ・ペン。肩の動きも非常に柔らかだ(C) GONG KAKUTOGI

18日(火・同)にGSP×カーロス・コンディットの間で行われる予定だったUFC世界ウェルター級選手権試合が、王者GSPの負傷によりキャンセル、両者の試合がメインになるという発表があった。

そもそも、当大会のメインは、7月1日(金・同)に発表されていた、GSPにストライクフォース世界ウェルター級王者ニック・ディアズがチャレンジするというメガ・ファイトだった。

しかし、9月7日(水・同)、前日に行われる予定だった記者会見をニックがドタキャンしたことが理由で、挑戦権を剥奪され、BJ・ペンと対戦予定だったカーロス・コンディットが新たなチャレンジャーに抜擢されている。そんな衝撃的な発表の翌日には、ニックはコンディットと戦うはずだったBJと対戦することが発表され、『GSP×コンディット』、『BJ×ニック』というウェルター級二大カードが成立していた。


GSPの世界戦がなくなり、スコット・ヨルゲンセンとジェフ・カーランのバンタム級戦がPPVカードに加わった同大会。結果的にニック・ディアズというタマが残ったことが、幸いというべき事態となった。

とはいっても、BJ×ニックは繰り上げでなくても、メインに遜色ない顔合わせ――、語弊を恐れずにいえば世界戦の冠が掛かっていなければ、純粋に注目度はGSP×コンディットよりも高いスーパーカードだ。

ランディ・クートゥアーと並び、UFCで2階級を制したBJと、ストライクフォース世界ウェルター級王者として、非UFCファイターのなかで抜群の実力と、知名度を誇ってきたニック。タイプは違うが、それぞれが己の思うように生きてきたタイプだ。

柔術黒帯でいて、打撃で圧倒的な強さを見せる両者。しかし、その打撃の特性は全く違う。BJは非常に少ない動きから、無駄のないパンチを放つ。基本はオーソドックスのBJは、自らが打撃を加えたあと、後ろ足を左側に移動させることで、相手の真正面に立たないようにし、カウンターをもらわない。

展開によっては、前足を軸足にして構えを変えることもあるBJ、この最小限ステップワークは、フランク・エドガーのようなスピードに乗り、動きが落ちない相手を迎えたときに、捌き切れなくなることを露呈したが、ニックはエドガーのように速くない。そして、効果のある蹴り技もないと見ていい。

Diaz【写真】この構えで、相手サイドに回るわけでもなく、パンチを重ねてダメージを奪うニック・ディアズ(C)GONG KAKUTOGI

以前はスピードがない故に、正確といわれたニックのパンチ。今もサウスポーに構えた、その体は開き、肩の回転はない、いわゆる手打ちのパンチだ。拳が出てくるスタート地点は、顔より後ろ。よって、対戦相手はタイミングが取りづらいことこの上ない。さらにいえば無類のタフネスさを誇っており、打たれても怯まずに前に出てくるので、余計に相手は距離が測れなくなる。

ただし、過去2戦ではエヴァンゲリスタ・サイボーグ、ポール・デイリーに打ち込まれ、特にデイリー戦ではダメージを受けたあとに、両膝をついた低いテイクダウンを仕掛け、さらには亀の態勢で危険な展開を凌いだシーンが見られた。

仮にBJ戦で、あのような展開になれば、確実にバックマウントを許し、エルボーやリアネイキドチョークで攻められ続けるに違いない。基本は相手との間合いを外しカウンター狙い、あるいは待つ相手に一瞬にして踏み込んでパンチを入れるBJ、スピードで優る彼が打撃戦を制するような展開になれば、ニックは厳しい戦いとなるだろう。

ニックが突くべきBJのウィークポイントは、思うように攻めることができないと、集中力を切らせ、スタミナも切れる点か。変則的な構えに変わりはないが、パンチのスピードは相当速くなってきており、この変則なパンチだからこそ、BJの見切りを狂わせる可能性もある。果たして……。

■UFC137対戦カード

<ウェルター級/5分3R>
BJ・ペン(米国)
ニック・ディアズ(米国)

<ヘビー級/5分3R>
シーク・カンゴ(フランス)
マット・ミトリオーネ(米国)

<ヘビー級/5分3R>
ミルコ・クロコップ(クロアチア)
ロイ・ネルソン(米国)

<バンタム級/5分3R>
スコット・ヨルゲンセン(米国)
ジェフ・カーラン(米国)

<フェザー/5分3R>
ジョージ・ループ(米国)
日沖発(日本)

<ライト級/5分3R>
デニス・シバー(ドイツ)
ドナルド・セラーニ(米国)

<フェザー級/5分3R>
バート・パラジェンスキー(米国)
タイソン・グリフィン(米国)

<ミドル級/5分3R>
ブラッド・タバレス(米国)
ダスティン・ジェイコビー(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
ブランドン・ベラ(米国)
エリオット・マーシャル(米国)

<ライト級/5分3R>
ダニー・ダウンズ(米国)
ラムジー・ニジェム(米国)

<ミドル級/5分3R>
クリス・カモージー(米国)
フランソワ・カーモン(フランス)

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